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【第35期最高位決定戦第2節】速報UP!!

 

「飯田さんを除く三人の闘牌ぶりを見に来たんだけど…大丈夫だな」

「Aリーグ選手でもなかなかきちんと打てる人間がいないから…とくにこういう大舞台ではなおさら」

「もう心おきなく後を任せてもいいかな、俺はもうこのレベルの闘いを半荘4回打てる自信ないもの」

これは、二日目の7回戦と8回戦の休憩時間の会話である

会話の主は金子正輝。6回戦から飯田サイドの対角線上に陣取って、真剣な眼差しで四者の動きを追っていた金子が見ていたものは…意外にも飯田の胸を借りる三人の摸打であった

言うまでもないことだが、【摸打】は麻雀の基本である。ところが、この摸打がきちんと出来ている打ち手は意外に少ない

ゲストなどに行って、よくファンの方たちに質問される代表的なものに「どうやったら強くなれますか?」と「麻雀上達の道は?」があり、私は決まって「山から牌をツモって、要らない牌を捨てる、この単純な行為がスムーズにできるようになること」と答えている
この答えを聞いても、多くの方々はキョトンとした眼をするか、怪訝な顔をし、意味を諮りかねる表情になる

金子とは前日のプライベートリーグでこんなやり取りがあった。けっこう語気を強めた口調だったので私もビックリしたが、金子は私にこう諌めた

「土田さあ、ちょっとツモのテンポが早過ぎないか?」「ツモ動作は、上家が捨て牌したのを確認してから起動すべきだろ」「たぶん昔の名残りからだろうけど(私が雀鬼会に通っていたこと)、早過ぎるから気をつけたほうがいいよ」

さすが金子である

対局している皆が感じていたことを代表して言ってくれたのである。私は穴があったら入りたいくらい恥ずかしい気持ちになった

ファンの方々や、自分を慕ってくれる若手プロたちには、摸打が強さや麻雀上達の早道であることを訳知り顔で語っているのに…自身がきちんと出来てないとは…まったくもって情けない話である

でも、金子の指摘は麻雀の本質を射抜いており、その意味において、今回の決定戦に勝ち上がった、佐藤・水巻・村上の三人は、金子が安心できる摸打を見せてくれているのである

つまり…彼らがプロとして、真の競技者として、一流の領域にあることを金子は褒めたたえてくれたのである。これは勝ち負け云々に勝る最高の賛辞なのである

決定戦前日の私への叱咤と言い、三人への賛辞と言い、何切るではない本質論で卓上を眺めている金子の眼力に、私は感服した

あの一打、この一打の反省はもちろん必要なのだが、もっともっと目を向けなければならない要素が麻雀にはあるわけで、プロはそういう側面を愛好者の方々に語り、見せていかなければならない存在なのである

第一打(ドラ

この佐藤の一打によって二日目6回戦の幕は開いた

元来豪胆な性格であるはずの佐藤をもってしても、<大事に打とう>とする理が優先してしまうのか……なにかこの二日目の雲行きの悪さを暗示するかのような選択打牌に私には思えた

そして、いきなり西方から嵐がやってきたのである

 

 

《5回戦東3局1本場》ドラ

西家の佐藤が7巡目に生牌のをポンして仕掛けてくる。その捨て牌はこう

ツモ切りは3巡目のだけ、ドラを嫌うカンチャン外しもさることながら、捨て牌の意思は明らかにソーズ指向と出ている

対する親番水巻も12巡目に次のような手牌となる

チートイツのイーシャンテン手牌だったのだが(だけは北家の第一打にあったが、は生牌)、ここにポンカスのを引いてきた水巻、何を思ったかをツモ切りせずを切った

すると佐藤がポン!

手牌はこう

    ポンポン

をポンした次巡、佐藤はを引き打としシャンポンに替え、最終ツモの18巡目にをツモり上げ、3000・6000を成就させる

西を喰わせた水巻の最終形は

ああ、今日も佐藤の日になるのか、会場内の空気はそんな雰囲気に包まれていた

《5回戦東4局》ドラ

親の飯田が3巡目に生牌のを手出しすると、西家村上から「ポン」の声。手牌はこう

(手中の字牌はすべて生牌)

この手格好からをポンしてを切っていく村上

そのときの親番飯田の手牌はこう

そして村上がポンした後のツモと打牌を並べると

ツモ⇒打

ツモ⇒打

ツモ⇒打

ツモ⇒打(リーチ)

一発ツモ(裏ドラ

待ちにとらなかったのは、リーチをかける時点で、が2枚出ていたからである

一発ツモに裏ドラ2枚という僥倖に凡人は喜び震えるところだが、飯田は飯田らしく、淡々と例のかすれ気味の低音で「8000オール」と言ったのだった

永世最高位に挑む三人が一番畏れていた事態が早くも二日目の初戦で起きてしまった

村上は開局に水巻から8000を仕留め、今日はいけるぞ!という好感触を得ていただけに、ピンズ一色手を見つつのイチ鳴き策をどう考え、次局に向かったのだろうか

そしてその次局、親飯田の1本場10巡目、ツモ(ドラ)でテンパイが入り、無表情でリーチをかける永世最高位

ドラ表示牌スジ受けリャンメンもなんのその、16巡目にをツモり上げ、2600オールをGET

そのとき私のメモにはこう書いてある。<100%ツモる>と

水巻が不用意に切ったから始まったドラマは、前局村上がそのに踊らされ、8000オールを永世最高位に献上し、今局はそのを呼び込んでのリーチ、勝負のアヤ牌が織り成すドラマはここに完結する

そして西方からやってきた嵐は、このあと5本場まで吹きやまず、永世最高位の持ち点は八万点を超えていくのであった

偶然なのかもしれない。でもその偶然を必然に変えていく強さが永世最高位にはある。恐ろしいまでの気迫、恐ろしいまでの沈着、恐ろしいまでのツモ力

[首位を走る佐藤崇の二日目]

《6回戦東3局》ドラ

  ツモ

こうなったのが4巡目。佐藤は躊躇せずにドラを切った

「ポン!」声の主は村上だった

佐藤は二日目の初戦、永世最高位の嵐が吹き荒れるなか、落ち着いた打ち回しで、たった800沈みの二番手をキープしている。堅実無比の水巻が箱テン近い三番手で終わった展開からも、佐藤の内容には光るものがあった

そして今局、村上のドラポンの声にも全く動じた気配を見せず、6巡目にをアンコにして堂々のリーチ宣言(打

このレベルの戦いになると、序盤で切られたドラは、鳴いたほうより鳴かせたほうに警戒警報が発令されるもの。今局はまさにその典型で、ドラポン村上の上家に座した水巻が、安全牌のをトイツ落としせずに、わざわざを中抜きして合わせ、村上にテンパイを入れさせる

水巻としては、村上にチーさせて佐藤と真っ向う勝負に向かわせ、高みの見物を決め込む腹づもりだったのだろう。もちろん共通安全牌であるを、できうるかぎり後々まで引っ張っておきたい胸の内だった可能性も否定できないの合わせ打ちだった

ところが、このチーによって、イーペーコーの高目となるが2巡後に佐藤の手に踊る。裏ドラが雀頭のというオマケが付いての3000・6000は、水巻にとっても5回戦断トツの飯田にとっても、手痛い一撃となった

この和了で、5回戦の落ち着いた闘牌ぶりと相まって、初日までとはいかないまでも、二日目も悠々自適な一日になるだろうと私に限らず、誰もが思ったはずである

ところが…佐藤も人の子、7回戦のオーラスで失着を犯す。見方によっては失着では無いと思われるムキもあるだろうが、私も佐藤も同じ見立てをしている

《7回戦オーラス》ドラ

オーラスを迎えて佐藤の持ち点は28300点、トップ目は親の水巻で、36000点だったから5200ツモで黒棒1本差せる状況。二番手は西家村上で30000点、ラス目は飯田の25700点で、最悪二番手浮上でヨシとする状況ではあった

5巡目の佐藤の手牌はこう

ツモ牌はドラの

佐藤は前述した6回戦東3局のドラよりも速い打牌スピードで、ドラをツモ切った

前巡、を引いてきたとき、佐藤はほんの少し小首をかしげながらも、親水巻の第四打と、北家飯田の第一打に目をやって、カンとカンの優位性に格段の差があることを確かめながらツモ切りしている

然るに、カン受けの優位さを確信していたのだから…ドラを引いてきた瞬間、を河に放って欲しかった

これは次巡を引いてきた結果論から言っているのではない。佐藤も重々わかっているだろうが、5回戦・6回戦の踏ん張りがあったからこそ、ここでしなる弓を放ってイイ道理が通用するのである

次巡、を引いて切りリーチと出るのだが、13巡目には引いてくるものの、ついぞは佐藤のツモ筋に無く、河に顔を見せてくれることも無かった

二番手村上も終局間際にテンパイを果たしたため、親水巻ノーテンの結末となり、佐藤は三番手のまま7回戦を終える

もしも…は麻雀を語るうえでタブーなことはわかってはいるが、風雲急を告げる永世最高位の追い上げを突き放す好機を逃がした代償がいくばくのものかは、佐藤自身が一番理解しているのではないかと思う

それでも佐藤には、自分の失着を謙虚に受けとめ、次なる闘いにつなげていく真っ直ぐな力がある。言い換えれば<進化>への必要条件を備えている打ち手と言えよう
「三日目は三日目ではなく、ゼロからのスタートだと思って打ちます」帰り際の佐藤の透き通った言葉が実に印象的だった

[臥薪嘗胆、村上淳の二日目]

《6回戦南3局1本場》ドラ

親飯田+400、西家水巻+900、北家村上+300という大接戦のラス前12巡目のことだった

私は何かをメモするため下を向いていた。と、そのとき違和感のある打牌音が鳴った。聞き慣れないその打牌音は、強打ではない乱打に近い音に聴こえ、思わず顔を上げその音源を確かめると、永世最高位のツモ切り音であった

が2枚切れのメンホンイーシャンテン手牌になったのが10巡目、次巡をツモ切りし、問題のツモ切り音が次巡起きるのだが、失礼を承知のうえで書かせていただくと、明らかに苛立った感覚での一打だった

何が原因なのかはわからないが、永世最高位にだってそういうことがあって不思議ではなく、むしろ私は微笑ましく思えたのだった

そして同巡、北家村上に次のテンパイが入った

タンヤオ・ドラ3発。混戦を切り抜けるには願ってもない爆弾手。幸いなことに、南家佐藤が8巡目に、西家水巻が6巡目にを切っている。息を殺してヤミテンに構える村上

実を言うと、飯田の乱打音に気をとられ、村上のテンパイ打牌であるの強さに私は気がつかなかった。自分が打っているつもりで各人の摸打を見ていたのだが、このは見落としていた

実戦でたまに起きるのだが、ヤミテンのテンパイを見抜けずに放銃するケースのほとんどは、敵がテンパイした同巡である。なぜかといえば、ヤミテンテンパイ者がテンパイ後の摸打をする前だからである

今局の打のように、場に対し強い牌が出てきたら摸打前でもケアできるのだが、安全牌を手出しされた場合のように、次の摸打を待たなければ判別つきにくいケースがある。少しキャリアを積めば、摸打の気配でヤミテンを見抜けるようになるので、その摸打が見えないヤミテンテンパイ同巡が一番の死角となるのだ

もちろん今局の飯田は、前巡から苛立っていたように、村上の打の牌音を感知することもなく、直後にやってきたをツモ切り放銃している

永世最高位の手中に残っていた3者への安全牌が哀しげに笑っていた

この8000点和了によって、村上は決定戦初トップを決めるのだが、特筆すべきは次局オーラス、村上の序盤の切り出しにある

  ドラ

ラス親は好調佐藤とはいえ、ドラトイツ・場風トイツという好配牌ゆえ、どんな打ち回しをしていくのか見ていたところ

第一ツモ⇒打

第二ツモ⇒打

第三ツモ⇒ツモ切り

第四ツモ⇒打

第五ツモ⇒ツモ切り

第六ツモ⇒打

と打っていき、手牌はこうなった

手中の字牌はが1枚切れ以外オール生牌である

ドラのトイツに溺れることなく、受けのチートイツ構えで、6巡目にして盤石の態勢を築き上げている

オーラスのトップ目だからという理由だけだと寂しいものもあるが、村上の<臥薪嘗胆>が実を結ぶとすれば、今局のような序盤形成を数多く実現できたときなのではないかと私は思う

[虎視眈々水巻渉の二日目]

《5回戦東1局》ドラ

水巻はどんな面持ちで決定戦二日目を迎えていたのだろうか。開始前の表情からは、初日よりむしろ充実した雰囲気も感じられ、気配は上々に見えた

そして開局早々の8巡目、ツモでテンパイする

ドラを引き入れての123の三色をみたイーシャンテン構えだったのだが、あっさりを引き、を横に曲げ、いつもの水巻らしい速攻型のリーチ宣言をした

水巻の麻雀観からすれば当然のリーチだったろうし、12巡目に村上からドラ雀頭の狼煙の手があがり、次巡放銃の憂き目に遭うのだが、それすらも織り込み済みのリーチ宣言だったように思う

ただ、東4局の永世最高位の猛攻は水巻の計算外の出来事であり、軽い馬場の高速レースが得意の水巻としては、英国の不良馬場でレースをさせられたような5回戦になったのは誤算だった

それでも箱下まで永世最高位に押圧された状況のなか

《5回戦南1局7本場》供託リーチ棒三千点・ドラ

悪戦苦闘の中にあっても、2巡目にしてこのイーシャンテン形に持ってこれる力がいまの水巻にはある(これを偶然だよと考えるひとは、たぶん負け組である)

3巡目、ツモ

読者諸兄は、さて何を切るのか?

私は箱下の身を案じながら、ちょっぴり不安げにを切るような気がする

水巻の選択は、のツモ切り

<ヒェ~ッ>、トイツ・アンコ好きには、北極と南極が入れ代わっても切れないである

そうか、やはりドラアンコゆえ、なんとしてもアガるんだという気構えなんだな、と言い聞かせたものの、私の目からは凄いツモ切りに見えた

次巡を引き入れ、首尾よくリーチをかけ、6巡目に三番手の村上を直撃し、箱下から村上を交わして三番手に浮上する水巻を見ていて、時代は間違いなく変わっていってるんだなと、改めて痛感させられた

この6回戦をこのアガリによって三番手で凌いだ水巻は、7回戦も黒棒1本差の三番手で凌ぎ、8回戦はたった三千点の浮きでトップをもぎ取る。こういう渋太さは、大一番の勝因になりやすく、水巻自身も良い感触が残ってるのではないだろうか

そして、この日一番のガッツポーズが最終戦のオーラスで出た

この最終8回戦はまたまた永世最高位の断トツ状態だったのだが、オーラスを迎え、トータル首位をひた走る佐藤と壮絶な二番手争いを繰り広げていた水巻は、6巡目に次のテンパイが入る

  ドラ

を打ってこのテンパイを入れたのだが、すでにラス目で最終親番を迎えた村上と、二番手を死守すべく佐藤が、5巡目から仕掛け合戦を始め、水巻のテンパイ打牌を村上が3フーロ目のポンをしてテンパイを入れる

  ポン  チー  ポン

この村上のテンパイ打牌を佐藤もチーしてテンパイ

  チー  ポン

仕掛けが少ない今回の決定戦とはとても思えない光景だったが、私はニヤリとしていた。なぜなら、こういうせめぎ合いが観たかったからである。そしてこういうサバイバルな闘いに強いのは誰なのかを知りたいのである

村上の雀頭、佐藤の晒しメンツにあるラス牌のを、村上・佐藤がテンパイを入れた同巡、水巻はいとも簡単にツモって見せたのである

300・500

メンゼンテンパイの最低ツモアガリ点であるが、強者には最も似合うアガリ方なのである

この言葉の意味を水巻はもちろんのこと、卓を囲む全員が知っている。だから三日目からの水巻は要注意なのである

 

 

☆データで見る《第35期最高位決定戦》…二日目終了時

【成績】

佐藤⇒[+138.8]トップ3・二位2・三位3・ラス0

飯田⇒[+22.4]トップ2・二位2・三位0・ラス4

水巻⇒[+17.5]トップ2・二位2・三位4・ラス0

村上⇒[▲181.7]トップ1・二位2・三位1・ラス4

飯田の打点力の高さが異常に目立つ二日目だったが、トップ数とラス数の差がマイナス2であるにもかかわらず、同じトップ数ながらラスの無い水巻よりトータルポイントが上であるところに、永世最高位となった飯田の特徴が表れている

首位をひた走る佐藤は、持ち点がマイナス1万点以上になったことが一度もない安定感ある内容だが、このままのペースで運べるとは限らず、とくに初ラスを引いた後の戦いぶりがポイントになりそうだ

【親の第一打牌】(全96局)

<1・9牌>52⇒初日23・二日目29

<オタ風>20⇒初日10・二日目10

<三元牌>12⇒初日9・二日目3

<2・8牌>5⇒初日3・二日目2

<場風>4⇒初日2・二日目2

<自風>1⇒初日1・二日目0

<3~7牌>2⇒初日0・二日目2

二日間通して、親の第一打の過半数(54%)が<1・9牌>で、支持率2位は約二割(21%)の<オタ風>であった。この2種で全体の75%を占めているが、恐らくこの傾向は三日目以降も変わらないように思う

そして支持率3位は、12.5%の<三元牌>。<2・8時牌><場風><自風>の3種を併せてようやく10%の支持率なので、初日の速報にも書いたが、《最高位戦スタイル》が如実に表れている数字に思える

[和了と放銃について]

親が和了した局の第一打牌は、<1・9牌>10、<オタ風>9と接近していて、放銃した局は、<1・9牌>13、<オタ風>2と大差がついている。これはなかなか面白い特徴であり、もしかすると第一打牌に<1・9牌>が自然に打ち出される局は、放銃を警戒すべき親番と考えてみるべきなのかもしれない

【和了と放銃】全96局

佐藤⇒和了19・放銃5

飯田⇒和了22・放銃9

水巻⇒和了21・放銃9

村上⇒和了12・放銃9

[リーチ和了と放銃]

佐藤(20)⇒和了9・放銃2

飯田(32)⇒和了13・放銃5

水巻(15)⇒和了8・放銃2

村上(20)⇒和了9・放銃2

[仕掛け和了と放銃]

佐藤(17)⇒和了5・放銃1

飯田(11)⇒和了5・放銃3

水巻(26)⇒和了8・放銃5

村上(12)⇒和了1・放銃1

面白い数字が並んでいる

不調の村上を除いて(12.5%)、佐藤(20%)飯田(23%)水巻(22%)と、20~23%と似たような和了率を示しているが、これはどんな対局においても馴らしてしまえばこれくらいになる

つまり、アガリたいとかアガらなければならないとか言ったところで、10局(ほぼ半荘に相当する)に二回、せいぜい三回しかアガれないゲームであることを念頭において打っていく必要があるのだ

放銃は、飯田・水巻・村上が9%で並んでいる。佐藤だけが5%(放銃回数にして4回違い)となっているが、この差がポイント差に表れているような気がしてならない。二日間通して手は一番入っているのだが、闘いにならない局とのメリハリがあるため、放銃数も少なくなっている。これは勝ちパターンの典型とも言える

ということは、佐藤を崩すためには佐藤からの和了を目指す打ち方が求められることになるわけだが、これがなかなか難しい。かと言って手をこまねいていては、スイスイ逃げられてしまう可能性があるので、ひと工夫欲しいところだ

【技法】全96局

佐藤⇒メンゼン79・リーチ20・リーチ成功9・仕掛け17・仕掛け成功5

飯田⇒メンゼン85・リーチ32・リーチ成功13・仕掛け11・仕掛け成功5

水巻⇒メンゼン70・リーチ15・リーチ成功8・仕掛け26・仕掛け成功8

村上⇒メンゼン84・リーチ20・リーチ成功9・仕掛け12・仕掛け成功1

永世最高位飯田のリーチ数の突出にまず目がいく。飯田はなんと全局の38%をリーチ攻撃している。これは約5局に2度は飯田の「リーチ」という声を聞かされていることになるわけだが、卓を囲む三人にしたらたまったものではないことは容易に察せられる

それにしても…である

88.5%⇒87.5%⇒82%⇒73%

この数字はいったい何??

左から順に、飯田⇒村上⇒佐藤⇒水巻のメンゼン率である

全96局中、384機会に対し318機会メンゼンで進行させている四者、全体のメンゼン率83%、この数字は回を追うごとに下がっていく数字なのか、はたまた維持される数字なのか…《最高位戦スタイル》を語るときに欠かせない数字と私はみている

【得失点】

佐藤⇒和了点アベレージ5140・放銃点アベレージ4340

飯田⇒和了点アベレージ7000・放銃点アベレージ5080

水巻⇒和了点アベレージ5710・放銃点アベレージ4800

村上⇒和了点アベレージ6440・放銃点アベレージ5880

いまさらではあるが飯田の打点力が他を圧倒している。意外に感じるのは佐藤の打点力の低さ(飯田とは2000点近くも違う)で、いくら放銃数と放銃点アベレージが低いとはいえ、稼いでいるポイントとのギャップが激しい

ということは、押し寄せてくる運気の強さでポイントを伸ばしてるわけではなく、ゲームメイクがかなり達者な打ち手なのではないだろうか、そう思わせる数字の表れかたなのである

もちろんまだ二日間半荘8回96局のデータでしかない。残り半荘12回、二日目までのペースでいけば、144局もあるわけで、もしかすると数字の変動も激しいものになり、今まで出てきたデータが全くアテにならない可能性もある

でも数字は嘘をつかないので、その数字が物語る《第35期最高位決定戦》も楽しんでいただければ、デジタル派の私は本望である

 

 

観戦記者   土田 浩翔

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