さすがの土田プロですが、この日は日程変更の影響により、当初からご都合がつかないと申し出が
ありました。
という訳で、今回は現場でデータ収集を担当していた、日本プロ麻雀協会所属
「吉田 光太プロ」が「速報版」を、土田プロはデータを元に「速報版・プロロ―グ」を執筆して頂きます。
早速土田プロから届いた「速報版・プロローグ」をお楽しみ下さい☆
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「変化はノミ手しか無いから何回やっても曲げる(リーチをかける)」
三日目まで首位を快走していた佐藤の終了後の談話である
この談話の局面に到るまで(三日目初戦南2局1本場まで)の佐藤崇の軌跡を辿ると…
<東1局>…ドラ・新ドラ
9巡目にをアンカンした佐藤は14巡目に次のテンパイが入る
ツモ
残りツモ4巡、佐藤はを横に曲げる
そして2巡後にを引いてきて、村上のカンに捕まる
タンヤオ・ドラ1の2600点だったが、この結果を佐藤はどのように捉えていたのだろうか
私の個人的好みとしては、せっかく二万を一人占めできたのだから、その親戚筋に当たるも切り離さずに打てば面白いのになと思ったりするのだが、ま、それはあっちに置いとくとして…
和了にも放銃にも《重さ》があり、それは現実に動く点数とは違う性質で、《勝負》に影響を与えるものであると考えていい
この道理は、プロなら誰でも理解していることであり、そういう観点から、佐藤はどんなふうにこの放銃を捉えていたのか、とても興味深いものがある
<東2局>…ドラ・裏ドラ
親を迎えた佐藤は、8巡目に北家飯田からリーチがかかるが、応戦して11巡目に追いかけリーチをかける
入り目はドラの
対する飯田の先制リーチは
飯田がターゲットに入れたは、1巡目に佐藤が切っているだけで、水巻が4巡目にを切っているため、村上の手の内に1枚あったとしても、山には最低2枚は眠っていると踏んで、先制リーチに踏み切ったはずである
ところが、麻雀とは難しいもので、4巡目にを切った水巻の手中には、配牌からがアンコで入っていた。こういうレアケースがあるから麻雀は難しいのであって、先制リーチに踏み切った飯田には不運であった
そして13巡目、佐藤はをツモり上げる(4000オール)
当然のことながら、前局の放銃の《重さ》については忘れるか、軽く考えるか、佐藤の頭の中はこの二者択一だったように思う
<東2局1本場>…ドラ
12巡目の南家村上のピンフリーチに、北家飯田が15巡目、イーシャンテン手牌からドラで飛び込み3900点
<東3局>…ドラ
10巡目に南家水巻が、ドラ雀頭のイーペーコー・ペン待ちをヤミテンに構え、12巡目、ワンズ一色手の親村上からGET(5200)
<東4局>…ドラ
親水巻がトリッキーな喰いテンパイを入れ連荘を果たす(1人テンパイ)
<東4局1本場>…ドラ
西家佐藤が5巡目に次の形から中をポンしていく
文字通りのポンテン
そして同巡、親村上からリーチがかかり、一発で引いてきたを突っ張り(親の捨て牌にがある)、
次巡引いてきたを引き放ると、村上から「ロン」の声
とのシャンポンで、リーチのみの2000点献上
<東4局2本場>…ドラ
親水巻が3巡目のをポンして打(生牌)。そして次巡の、次々巡のをツモ切りし、
7巡目にを手出しする
字牌より数牌の伸びを大切に扱う水巻が、第一打・第二打に数牌を打ち、を
ポンして三元牌の生牌を打ち出し、心牌のをツモ切りした後に、初めてピンズを河に切ってくる
この手順から、ほとんど水巻にはテンパイが入っているのでは?と彼と打ち慣れている面々であれば、そう
考えてもおかしくはない
村上がを手出ししたときの佐藤は次の手牌だった
(だけが生牌、とは1枚切れ、は2枚切れ)
そして同巡引いてきたをツモ切りし、水巻に5800を献上する
水巻はを引いて打とし、この形になっていた
前局の放銃牌の《重さ》と今局の放銃牌の《重さ》を佐藤はどう捉えていたのだろうか?
<東4局3本場>…ドラ
生牌のを叩き切って、南家飯田が決死のリーチを敢行したのが7巡目
親水巻の反撃は十二分に覚悟したうえでのノミ手リーチである
私はこういうリーチが大好きである。もちろん覚悟を決めた飯田の打ち方も大好きである
勝負の神様は、ただアガリたいだけのノミ手リーチには見向きもしないが、こういう腹の括れたリーチにはくぎづけになる
9巡目、あっさりとを引いてきたが、それは飯田が永世最高位になるまで、迷い・悩み?苦しみながら築き上げてきた飯田麻雀の結晶とも言えるなのであった
(700・1300)の和了であるが、飯田はこの和了の《重さ》を知っている数少ない打ち手である
<南1局>…ドラ
西家村上が7巡目に次の手でリーチをかけ、一発役は消されたものの、次巡あっさりツモる
ツモ
リーチをかけた時点で、が3枚、が3枚生きている絶テンだったが、あっさりツモれた感触に、さぞや村上気を良くしたことだろう
<南2局>…ドラ
北家飯田が4巡目に出た2枚目のをポン、次巡ピンをチーして次の手牌になる
持ち点が12800のラス目で、3番手の親佐藤が27400持っているため、むざむざ1000点で局を移動させたくない飯田は、7巡目に1枚切れのを引いてくると、あっさりのトイツ落としをかける
[北家が動きを入れると親からリーチがかかりやすくなる]とは昔から言われ続けてきたが、飯田とて百も承知の仕掛けである
8巡目に親佐藤が次の手でリーチをかけてきたが、折り込み済みだったはず
がアンコになってを切ってのリーチだったが、佐藤としては飯田のピンズ一色手がわかっているだけに、ヤミテンという選択肢もあった
ただ、そんな悠長なことは言ってられない《勝負所》と踏んだのだろう、東4局3本場に飯田がかけたリーチに似た、決死の思いを込めてのカン待ちリーチだった
15巡目、鬼気迫るリーチが実る
裏ドラ表示牌のをツモっての4000オールは、佐藤に会心の笑みをもたらした
そして、その笑みと共に佐藤は冒頭の1局に入っていく
<南2局1本場>…ドラ
4000オールで相当気を良くした佐藤は、4巡目~8巡目まで、、、と有効牌ばかりを引き即リーチをかける(打)
(南は生牌)
10巡目にを引き、11巡目にこの局を制す北家飯田から勝負牌が出ている
ヤミテンに構えていれば
リーチの同巡この手構えになっていた村上から、もしかすると南が打たれていたかもしれない
もちろん、タラレバの話はタブーであるから、とやかく言う筋合いのものではないが、冒頭の佐藤の談話はとても気になる
「変化はノミ手しか無いから何回やっても曲げる(リーチをかける)」
何回やっても曲げるのは、何回やっても好結果が出やすい、もしくは何回やっても勝ちやすい、そういうタイプのリーチなのではないだろうか
役牌Xと数牌Yのシャンポンの和了パターンはたくさんあるのだが、果たして役牌と心牌のシャンポンリーチ和了率と、ヤミテン和了率の違いをどれくらいわかったうえで、「何回やっても曲げる」と佐藤は言ったのだろうか
更には、そのシャンポン待ちになるまでの経緯、とりわけ和了の《重さ》や放銃の《重さ》を測りながら闘っているタイプの打ち手である佐藤が、気持ちが吹っ切れる4000オールを和了した次局、果たしてどれくらいの量りでリーチを打ったのだろうか
この日観戦が叶わなかった私は、三日目終了翌日、私の代わりに観戦記録を付けてくれた、プロ協会の吉田光太さん、初日からずっとサポートしてくれている101競技連盟の村田光陽さんと、三日目を振り返ってみたのだが、佐藤が崩れた導火線は、この9回戦南2局1本場にあるのではないか?というところで一致をみた
今局以降の速報版は、吉田さんが作成してくれた観戦レポートに譲るが、観る者にとっては非常に面白い決定戦になったことだけは間違いなかろう
観戦記者 土田 浩翔