最終日 8月23日(日)
第4期最高位戦Classic決勝2日目観戦記:園田賢(最高位戦麻雀協会)
僭越ながら、わたくし園田が決勝の観戦記を書かせていただくことになりました。
麻雀界随一の文豪、須田さんが一日目の観戦記者とあっては、書くのもつらいものがあるけど。。。
まあ、気にしないで気楽に書かせていただくことにします。
注意点
1. 全局、載せています。
どの局を載せようかとか構成を考えるのがめんどくさかったので、いっそ全部載せたれ〜と相成りました。
実際にその場で観戦してような気持で読んでいただければ幸いです。
2. 一部口語が混じっています。
3, 勝手に本人の気持ちになってるところもあります。
classic決勝最終日。
全10回戦のうち、後半5回戦が本日行われる。
選手の紹介は前半の観戦記で紹介されているので、省かせていただこう。
5 回戦終了時トータル
坂本大志 +88.1
有賀一宏 △5.9
根本佳織 △36.8
上野龍一 △45.4
坂本の圧倒的優位。
この差を覆すのは容易なことではない。
対局前の意気込みを3人に聞いてみた。
有賀
「おもしろくはするよ。
このまま坂本さんが走ったらおもしろくないでしょ?
最後の半荘になって誰も目がないなんてことだけにはならないようにはしたいね。」
上野
「男道だよ。男道を邁進します。
まあ、初日の逆をやればいいだけだからね。」
根本
「爪を黄色にしてきたの〜
金メダルにならないかなと思って!
銀と悩んだけどね。」
リラックスしている(ように見える)二人に対して、有賀だけ表情が固い。
緊張なのか、それとも闘志を燃やしているのか?
6回戦
起家から 根本・坂本・有賀・上野の座順
左より、有賀・坂本・根本・上野
東1局0本場 親:根本 ドラ
根本の6巡目
上家から出たのは。
は残り1枚、は空となれば仕掛ける手もあるかと思ったが、スルー。
上野の7巡目
ここで上家から出たのは。
根本:
坂本:
有賀:
上野:
ドラを切りたくない。
ともに程よくよさげ。
しかし、上野は当然のようにスルー。
恥ずかしながら、二人のclassicルールを後ろで見るのはこれが初めて。
うーん。二人とも筆者の鳴きバランスとは結構違うみたい。
で、上野、スルーの直後持ってきたのは
ツモ
これをツモ切り。
234の三色にしたいとはいえ、これはどうだろうか。
さすがに手狭にしすぎな気がするが。
ちなみにこの後、の順番で引く。
坂本の12巡目
ツモ
ここで上家のに合わせ打つ。
一見なんとかなりそうな手牌だが、classicにおいて聴牌は意味がない。
和了できなきゃ意味がない。
12巡目でこの手牌だと、万が一にも放銃だけは避けるように打つべきだ。
しかし、このが局面を動かす。
有賀
チー
2巡後上野、根本、有賀の順番で聴牌。
上野:
根本:
有賀: カン チー
全員1枚残りだがこれを制したのは有賀。
値千金の1300-2600。
観戦記は牌譜を見ながら書くのだが、
牌譜を見てるとつい「タラレバ」をやってしまう。
今回、見つけた一つの未来を紹介しておく。
前述上野の7巡目打。
ないしを切っておけば4巡後はこうなる。
2枚とびとあってはさすがにドラのを打つだろう。
有賀はそのをポンして次巡-待ちで聴牌。
だが和了るのは根本。
奇しくもその和了牌は有賀が1300-2600を引いたその牌である。
暗槓 ツモ
根本恐ろしや。
さて、現実にもどろう。
東2局0本場 親:坂本 ドラ
坂本の5800ヤミテンをかいくぐり、有賀が500-1000ツモ
ツモ
東3局0本場 親:有賀 ドラ
上野6巡目で以下の一向聴。
だが、これが聴牌するのは17巡目。流局。
東4局1本場 親:上野 ドラ
4巡目の有賀のを鳴いて上野は以下の手牌。
ポン
打とする。
classicルールで役牌を鳴いた親がさらにダブなど簡単には鳴けない。
長い道のりになるなぁ〜と見ていたら…
6巡目、北家の有賀の手牌は以下となっていた。
ツモ
以外、全てが無筋のこの手牌。
ここでを手放す打ち手もいるだろうが、有賀は少考のすえ切り。
だが次巡を持ってきてはもう無理である。打。
ポンした上野は山に三枚生きのカン待ちを選択し、11600聴牌。
有賀、次巡のツモが。
ツモ
上野の河は以下。
地獄である。
トップ目なのに、5800確定のほぼ聴牌の仕掛けに打てる牌がない。
えーい。打つなら安い方だ!打
次巡ツモ。
またまた地獄っ!!
「いつまで一向聴で無筋を切らすんだ!」と言いたげに打。
これで打つならほぼ11600以上だ。
完全に上野と有賀の直接対決に見える。
だが手牌を開いたのは坂本。
危険牌を1枚も押すことなく(まあ1枚も押さないだろうが)和了りきった。
ツモ
ちなみに坂本の手牌のは上野が聴牌を入れた後のツモ牌でリン牌ある。
坂本にとっては相当嬉しい和了となった。
南1局0本場 親:根本 ドラ
ここまでで点数状況は、
根本 26400
坂本 29500
有賀 36700
上野 27400
有賀にとっては是が非でも坂本にラスを押し付けたい。
自分が間に合わないと思ったら、8巡目からオリ始める。
「根本か上野が坂本をまくる程度にちょこっと和了るのは全然OK!」
ってなもんだろうが、またしても和了ったのは坂本。
面前ドラなしリャンメンをヤミテンもままツモ和了って、300-500。
南2局0本場 親:坂本 ドラ
有賀の11巡目
ツモ
が場に1枚。
下家の上野はヤミテンが入っていてもおかしくない河をしている。
現状トップ目だし、無理してドラを打ち出すこともないか。
いや、ここは坂本に親っかぶらす局面だろ!
って訳で聴牌を取る。
次巡ドラが被ったのはご愛嬌だが、
さらにその次巡しっかり高目をツモりあげる。
ツモ
この親っかぶりで下の差は
坂本→1500→上野→1200→根本
となった。
南3局0本場 親:有賀 ドラ
本日初の2軒リーチを制したのは有賀。
ロン
放銃した根本もリーチのみでの追っかけだが、
ツモれば2着順あげてオーラスに臨めるとなれば、
仕方ない勝負だったと言えるだろう。
南3局1本場 親:有賀 ドラ
4巡目、上野の手が止まる。
ツモ
長考の末、に手をかけるが、
これは打の方がよかったのでは?
を残すとすれば、当然567の三色を視野にいれているということになるが、
さすがに難しいだろう。
ピンズの横伸びを消す程の価値がにはあるだろうか?
さて、局面が動くのは7巡目。
有賀の捨てたを北家の坂本がポン。
ポン
坂本が打とした直後、有賀の手牌は以下。
ツモ
通常のclassicルールなら、もちろんリーチはない。
だがこの局面に限ってはリーチの方がいいのでは?
1. 坂本は絶対に着順を下げたくない。
2. よってリーチを打てばまず押してこない。
3. ここで鳴いてくる以上、坂本は和了れる公算の高い手牌だろう。
4. 坂本に和了られると坂本の2着が濃厚になる。
4. 流局しても、根本が坂本を捲る条件が1300-2600まで緩和される。
「和了るための」ではなく「和了らせないための」リーチを打つべきだったのではないだろうか?
そうすれば次巡、坂本の聴牌打牌でドラのは打ち出されなったに違いない。
現実は、根本が追い付きリーチするも
リーチ
坂本に1000は1300にリーチ棒をつけて献上することになる。
ポン ロン
またしても坂本においしい和了りとなった。
オーラスは誰も手にならない中、有賀が500-1000を和了りきる。
6回戦終了時トータル
坂本 90.5
有賀 27.4
上野 -55.3
根本 -62.6
もうほとんど坂本と有賀の一騎打ちと言っていいだろう。
7回戦
起家から 根本・坂本・上野・有賀の座順
東1局0本場 親:根本 ドラ
有賀の4巡目
ツモ
ここから打。
ん?あせったか?
ドラがということはもちろんドラ表示牌にが見えている。
6巡目にを引くとヤミテンに構える。
タンヤオに進んでいると、7巡目にを引いたところで
タンヤオ高め一盃口の聴牌が組めていた。
なかなか表情を顔に出さない有賀も、11巡目に引いたは、アツそうにツモ切っていた。
結果、流局。
後で有賀に聞いたところ、7巡目タンヤオの牌姿
になっていたらリーチを打っていたそうだ。
この2000-3900和了り逃しがひびかなければいいが…
東2局1本場 親:坂本 ドラ
根本に入ったこの聴牌は6巡目。
ヤミテンに構え即上野からで打ち取る。
場にはマンズが安くまだ6巡目とあっては、リーチするのが普通だと思うが。
根本もほぼ目無しになった現在の状況でどう打つべきか決めかねているのかも知れない。
東3局0本場 親:上野 ドラ
はげしい空中戦が展開される。
根本 ポン
上野 ポン ポン
ここに割って入ったのが有賀。
ツモ
根本:
坂本:
上野:
有賀:
このなら勝負をかける価値がある。
切ってリーチ!
山には3枚とも残っていた。
ツモって2000-3900。
東4局0本場 親:有賀 ドラ
有賀にとっては6回戦と同じ展開である。
自分が大きい手をツモり和了って下は団子。
なんとしてでも坂本をラスにしたい。
有賀、4巡目に七対子の一向聴
そのままツモ切り続けた10巡目、坂本にチーテンが入る。
チー
さすがに坂本の勝ちかと思ったが、有賀の次のツモは。
ドラの単騎聴牌にとってこのを坂本が即づかみ。
これぞデバサイとばかりにロンの発声。
さて、わからなくなってきたぞ。
東4局1本場 親:有賀 ドラ
有賀の11巡目聴牌は
とが振り替わった後、リーチ棒付きで振り込んだのは、上野。
-は上野のリーチにどうせ出てこない牌だが、有賀は追いかけず。
5800は6100とリーチ棒の和了。
有賀、11600にしておかなくてよかったのか。
しかし、上野と根本は本当に和了れないなぁ。
東4局2本場 親:有賀 ドラ
5巡目に坂本からのダブをポンして2巡後有賀の手牌は以下。
ポン
そして2巡後坂本のリーチ宣言牌は。
ツモ
有賀はポンして、ペンの11600聴牌。
なお、この時点の点数状況は
根本 30300
坂本 18400
上野 16700
有賀 54600
この11600を坂本から、直撃することができれば、
1回戦からずっと首位独走の坂本をついに逆転することになる。
坂本の-待ちもが坂本の目からは4枚見えて、
中々良さそうに見えるが、ヤミテンなら拾えそうなだけにリーチはどうだろうか。
有賀の河
坂本も宣言牌をポンされてポン出しがならば、
「ヤバイ!ドラドラかも!シマッタ!」と思ったに違いない。
(前巡坂本のツモ切ったには声が掛かっていない。)
(3枚残り)対-(5枚残り)
の勝負は有賀⇒坂本 2000は2600の横移動。
有賀、がっくし。
南1局0本場 親:根本 ドラ
ラス目の上野がツモ和了。
ポン ツモ
これで3着目坂本との差は900点に。
南2局0本場 親:坂本 ドラ
坂本の手牌、7巡目。
ツモ
全員、普通の河で、関連牌はとが場に1枚ずつとんでいるのみ。
少考して打ち出した牌は。
これが大正解で、次巡ツモは。
リー棒を出せばラス目に落ちるが、
あらかじめ決めておいたのだろう。
微塵の躊躇もなくリーチと宣言。
ここで地獄単騎のさえ止めてオリていた上野が、不意にをツモ切る。
盲牌ミス!!
坂本、この上なくラッキーな5800を手にする。
有賀にとっては腸煮えくり返るような放銃かもしれないが、
-はまだ3枚も山に眠っていた。
坂本が2600オールを引いていた可能性は十二分にある。
(2600オールなら2着目の根本をかわす。)
このアヤは誰に利するのか。
南2局1本場 親:坂本 ドラ
先ほどの放銃でダンラスの上野の5巡目。
ツモ
とは両方とも生牌。
なんとここから字牌を絞って打。
理由としては北家の根本の河があるのだろう。
根本
そして、その時の根本の手牌が以下。
上野が字牌を切っていたら、さすがに根本も鳴いただろう。
この後、上野はを重ね、は13巡目の聴牌打牌とする。
根本はその間なにも鳴けず、13巡目にはすでに七対子に決め打っていた。
その上野の聴牌に飛び込んだのは根本。
ロン
上野のベテランらしい絞りが、細い糸を手繰り寄せた。
ただ、またしても坂本にとってラッキーな横移動となった。
この横移動で各自の素点はこうなった。
根本 23500
坂本 26100
上野 19100
有賀 51300
有賀の顔が引きつっている。
南3局0本場 親:上野 ドラ
上野がポンから仕掛け、道中ドラを暗刻にする。
山に4枚生きているカンで聴牌するも、脇に流れて流局。
王牌にも2枚殺されていた。
上野、ツカン。
ポン 加カン
南4局1本場 親:有賀 ドラ
根本、坂本が大物手を育てる中、
根本
坂本
有賀がタンヤオをツモりあげる。
ツモ
南4局2本場 親:有賀 ドラ
せめて坂本を捲くる手を作りに行かなければならない二人に対して、
坂本はただ和了れば2着を死守できる。
そのアドバンテージを最大限に活かす。
普段、東風戦を打っている坂本。
オーラスの着順勝負で隙はかけらも見せない。
4巡目、上家に打たれた。
出る
当然のようにチーして聴牌を取る。
そして9巡目有賀の手牌から打ち出されたのはであった。
ツモ
7回戦終了時トータル
坂本 91.1
有賀 62.4
根本 -74.2
上野 -79.3
有賀、坂本の背中が見えてきた。
8回戦
起家から 根本・坂本・有賀・上野の座順
東1局0本場 親:根本 ドラ
坂本、有賀の第一打のを鳴く。
まだ、攻める姿勢は崩さない。
ポン
さらにをポンした坂本。
だが、有賀にも早いリーチが入る。
有賀の河
その時坂本の手牌はまだこの形だった。
ポン ポン
それが結局こうなる。
ポン ポン ツモ
坂本、有賀のリーチにヒヨることなく最後まで押しきった。
有賀、放銃という最悪こそ免れたものの、痛い痛い満貫ツモられ。
東2局0本場 親:坂本 ドラ
根本、この配牌から親の第一打を仕掛ける。
根本もまだ死んではいない。
役満和了ったところでまだまだ遠いんだけれども、最後の一瞬までは諦めない姿勢だ。
これにぶつけたのは有賀。上野のを叩いて、以下。
ポン
10巡目有賀がツモ切ったを今度は坂本がポン
ポン
聴牌打牌のを今度は根本がポンして以下。
を重ねない限りさすがに厳しいか。
ポン ポン
…だが、河は作られている。
根本の河
ピンズを引かされた坂本・有賀が共に下ろされる。
その後、と引きのトイツ落とし。
ポン ポン
が結局ここまで。流局。
東3局1本場 親:有賀 ドラ
上野13巡目聴牌。
慎重にヤミテンに構える。
これがなんと山に4枚。
15巡目脇に1枚流れるも、王牌に3枚死んでるとは…
上野、今日はとことん麻雀の神様に見放されている。
流局。
東4局2本場 親:上野 ドラ
上野の11巡目。
ツモ
ついに待望のがきたところ。
が1枚とが2枚場に見えていて、マンズはそれ以外一切見えていない。
さらにが1枚とが2枚場にとんでいる。
上野の選んだ選択は打。
11巡目というのが難しい。
まだ、シャンテンを落としてもぎりぎり許される巡目か。
ところが次巡のツモは!
結果として、トイツ落としが、聴牌逃しとなった。
これは仕方がないとして、13巡目に持ってくるはどうだろう。
ツモ
上野
根本
坂本
有賀
もう13巡目である。
マンズや字牌が鳴けないことも考慮すると、よさげなで七対子に決める手はあったのではないだろうか。
結局をツモ切り、次巡引きで、単騎で聴牌する。
結局和了れずに流局したのだが、16巡目、自分の河に並んだを上野はどう思っただろうか。
南1局3本場 親:根本 ドラ
坂本6巡目
ツモ
ここから七対子に決めてドラ表示牌打。
上野、坂本の4トイツ時にすでにこの形。
これが、動かないまま、13巡目にツモ切ったで坂本に聴牌即御用。
坂本にのドラ絡みターツ落としが入っているとはいえ、この手牌に地獄のでは、止めようがないだろう。
ロン
南2局0本場 親:坂本 ドラ
ここまでの持ち点は、
根本 26000
坂本 41500
有賀 27000
上野 25500
坂本3巡目に上家から1枚目のにポン。
ポン
攻撃の手を休める気は全くない。
…というより、みんな対応してオリてくれても別にいいよといったところか。
ここに根本、3シャンテンから、と被せる。坂本の「オリてよ」仕掛けを見抜いているのか?
だが、このが重なったばっかりの坂本に喰われる。
ポン ポン
こうなると坂本の独壇場。
全員が前に向かえない間に、ゆっくり混一を育てる。
9巡目聴牌は以下。
ポン ポン
12巡目、ツモで待ちかえて打の単騎。
ポン ポン
すると次巡のツモが。
仕方ない。再度待ちかえて待ち。
ポン ポン
そして15巡目を引き戻す。
ポン ポン ツモ
先ほど切ったに合わせ打たれたは、1枚のみ。全員必死にオリているのにである。
場にはが2枚ずつ、が1枚切られている。
「このは2枚山にいる!」
誰も通っていないピンズを打ち出すなんてことはしないから、もはや振聴の概念など関係なくなる。残りツモ番3回なら、振聴-の方が-よりいいのでは?とは観戦していた新井啓文(B2リーグ)の談。
そんなことは百も承知だが、手変わり多門張の可能性も考慮したら、ぎりぎりツモ切りだと思ったとは坂本の談。
実際は次巡を引き、に待ちかえしたものの、ツモれず流局。
南3局1本場 親:有賀 ドラ
坂本→14500→有賀→1000→根本→500→上野
下の3人は大接戦。
で坂本の下家の有賀が親。
山ごししてもよし
親っかぶらせてもよし。
他にアシストしてもよし。
最悪、他に打ってもよし。
坂本はそんなことを思っていただろう。
すると坂本にとって相当嬉しい和了りが出る。
上野、12巡目。
チー ツモ
これで有賀は根本と同点ラスまで落ちてしまった。(同点の場合、順位点は分け)
南4局0本場 親:上野 ドラ
根本 24900
坂本 40400
有賀 24900
上野 29800
親の上野、4巡目にして2副露。
チー ポン
一方、北家の有賀はを鳴かせた時すでに以下の手牌。
次々巡に聴牌を果たす。
ツモ
リーチ棒は出したくない。
有効な手変わりはと4種もある。
だがこのままでは直撃でもツモでも上野をまくれない。
リーチしたい。
リーチしたい。
リーチしたい。
そんな囁きを払いのけ、有賀の下した結論はヤミテン。
同巡、上野がイーシャンテンから、ドラのを手出しした。
2副露の仕掛けがドラを手出し。
外から見るとさすがに聴牌に見える。
ゆっくり構えている余裕はない。
即、根本が切ったに牌を倒した。
…まだ、2回戦ある。
今は最悪を回避できただけ良しとしよう。
8回戦終了時トータル
坂本 113.5
有賀 55.3
上野 -75.5
根本 -93.3
9回戦
起家から 坂本・上野・根本・有賀の座順
東1局0本場 親:坂本 ドラ
11巡目、有賀の聴牌
その後、イーペーコー振り替わりなどあるが、
全員受け切り、流局。
東2局1本場 親:上野 ドラ
上野、2巡目にして、この形。
8巡目ツモでリーチと行くが、全員に受け切られて流局。
東3局2本場 親:根本 ドラ
根本バック仕掛けで連荘に望みを繋ぐが、流局。
ポン チー
東4局3本場 親:有賀 ドラ
有賀、10巡目は以下。
次巡ツモをなんとツモ切り。
345や456の三色は見ないのか?
場にが一枚切れていて、下家の坂本はソウズを一枚も切っていない。
ポンで手を進めさせたくないし、坂本にネックを食われるのも嫌。
供託の1000点と3本場の900点をものにするための最善を尽くすということだろう。
すぐにツモって700は1000オール。
さあ、膠着状態から頭ひとつ抜け出した。
後は坂本をラスにすることだ。
東4局4本場 親:有賀 ドラ
有賀、8巡目聴牌は以下。
根本と坂本がを一枚ずつ切っている。
なるべく下家の坂本から和了りたい。
他家からのなら見逃す手もある。
…と思ったら対面の上野が3枚目のをツモ切り。
これは見逃せない。
しぶしぶ和了り宣言。
東4局5本場 親:有賀 ドラ
有賀の6巡目、上野のをポンして聴牌。
ポン
この-は自分の手牌を合わせて5枚見え。
とは言え、ドラ引き、ソウズの多門張変化など楽しみは多い。
と思ったらまたしても上野がを打つ。
これをスルーすれば-は2枚しかない。
今回もしぶしぶロン。
東4局6本場 親:有賀 ドラ
坂本、5巡目聴牌。
今日の坂本はここぞというところでさらっとこういう聴牌が入る。
しかも6巡目にロンした相手は同点着目の根本。
1000点と侮ることなかれ。
1000は2800を直撃で生まれた5600差というのはかなり重たい。
有賀、またしても並びが最悪。
南1局0本場 親:坂本 ドラ
坂本 31800
上野 19500
根本 25700
有賀 42500
坂本、3巡目にポンシャンテン。
ポン
6巡目に持ってきたをノータイムツモ切り。
すごい。
攻めきる気満々である。
上野に喰われでもしたらこの半荘ラスになる可能性もある。
常人なら聴牌まで引っ張りたいと考えるのではないだろうか。
坂本は着順降下のリスクより、有賀を捲くることを優先させた。
9回戦開始時で58.2の差がある。
坂本が有賀より上の着順だと、10回戦での逆転は不可能に近い。
この親番が勝負どころだ。
9回戦で勝負を決めてやると。
次巡、ツモで打。さらに2巡後ツモ和了りとなる。
結果は全く変わらないが、このとの切り順の意識の違いは大きい。
南1局1本場 親:坂本 ドラ
坂本の5巡目。
ツモ
河はこうなっている。
坂本
上野
根本
有賀
ここから打としてしまった。
さすがに形で打と行った方がいいだろう。
上野がを一枚切っているのに気が行き過ぎたか。
おもしろいように裏目が来て、
次巡、次次巡とツモってくる。
打としていたらこうだったのが、
実際は以下。
結局、と引き、9巡目にフリテン立直は6枚見えている--待ち。
安めのを引き和了り、2600は2700オール。
坂本が5巡目に打とし、さらにヤミテンを選択していると、
有賀の聴牌打牌のを捕らえていた可能性が高い。
そんなこと知る由も無い有賀は苦渋の顔。
南1局2本場 親:坂本 ドラ
根本 チー
上野
根本・上野が聴牌を入れるが、和了ったのは坂本。
ロン
これで坂本と有賀の差は5600に。
これを逆転しなければ、有賀の優勝の目はほとんどない。
南1局3本場 親:坂本 ドラ
8巡目、坂本の切ったをポンして、有賀が聴牌一番乗り。
ポン
根本、坂本も追いつくが、有賀和了りきる。
ポン ツモ
300-500は600-800。
長い連荘が終わった。
南2局0本場 親:上野 ドラ
2枚目のを仕方なく仕掛ける有賀。
ポン
すぐにを鳴いて聴牌。
チー ポン
次巡、ツモ、打
チー ポン
次々巡、ツモ。
チー ポン
なんと!あのクソ仕掛けが満貫になってしまった。
これをツモり上げ、2000-4000。
とりあえず鳴いてみるもんだ。
南3局0本場 親:上野 ドラ
根本、5巡目。
ツモ
場に見えているピンズはが一枚と自ら切ったが一枚のみ。
根本の選択は打リーチ。
親の5巡目リーチに立ち向かう人は無く、流局。
南4局1本場 親:有賀 ドラ
有賀と坂本の差は7200。
供託があるので1000-2000以上で坂本は有賀を逆転することが出来る。
さて、坂本の5巡目はこう。
ツモ
リーチ+ツモで有賀をまくれば、ほぼ優勝となる。
まだ4巡目とはいえ、根本がソウズに染めていそうな河だから、
ヤミテンに構えて、よさそうな単騎探しの旅となる。
坂本の選択は10巡目に持ってきた生牌のに待ちかえてリーチ。
が3枚見えとはいえ、有賀も根本も変則的な河だから、いるかどうかわからない。
しかし、巡目的にもそろそろ曲げなければならない頃合いだろう。
これが実際には3枚とも山に眠っていた。
さて、次の有賀の手番。
ツモ
・坂本に捲くられれば、終わり。
・リーチ棒を出せば2600直撃でもかわされる。
・1000-2000条件だけに坂本リーチが2600ってのは結構ありがち。
・坂本を3着以下に落とすには、30000点弱必要。
・がソウズ染めっぽい根本含め3枚切れている。
リーチを打たないためのネガティブな条件はそろっている。
しかし、有賀の選択はリーチ。
すでに優勝の目は相当うすい。
もはや目先の損得ではない。
どこかで不利な勝負に勝たなければならない。
勝負所は遅かれ早かれ巡ってくるのだ。
有賀の当たり牌が上野に流れ、残りの山にいる枚数は、有賀1枚、坂本3枚。
有賀、ピンチ!!
…と思ったら、根本がこの手牌から打。
ツモ
有賀の河
坂本の河
一見、有賀の河は変則っぽいが、は両方手出し。
間のはツモ切りだから、七対子はほぼ否定されている。
とするとは相当危ないところだが…
ってか坂本にも危ないぞ〜。
まあ、確かに七対子の重なりだけ見たらが一番いらない。
この根本の超ゼンツのおかげで有賀、相当うれしい7700。
南4局2本場 親:有賀 ドラ
有賀、坂本ともに聴牌を入れるが、流局。
9回戦終了時トータル
坂本 128.6
有賀 96.6
上野 -97.8
根本 -127.4
最終10回戦
6回戦開始時に94.0あった坂本と有賀の差は今や32.0。
トップラスで満貫の差があれば逆転である。
逆転がだいぶ現実的になってきた。
坂本「全部連対してるのに60以上詰められるってどうなってんだよ!!」
うむ。確かに。
有賀の今日の最初のコメントを思い出してほしい。
「おもしろくはするよ。このまま坂本さんが走ったらおもしろくないでしょ?
最後の半荘になって誰も目がないなんてことだけにはならないようにはしたいね。」
有賀、有言実行。そのまま差し切れるか。
起家から 有賀・上野・根本・坂本の座順
最終戦はトータル首位の選手がラス親になるように決められている。
席が決まれば親決めはせず、自動的に有賀が起家となる。
東1局0本場 親:有賀 ドラ
坂本2巡目、ここからをノータイムでポンして有賀のダブを切り飛ばす。
坂本はずっと攻めてきた。
最後まで攻めて勝つ気だ。
それにしてもタイトル戦の決勝最終半荘、大勢の観戦者がいる中で、
こんなに堂々とこのをポンできる選手がどれだけいるだろうか。
こんなタンヤオのブクブクの手牌で鳴き散らかした結果、
大きい手でも振り込んで、並びを作られて、優勝を逃しでもしたら、
「やっぱり、あのあせった仕掛けが敗因だったね。」
などと言われてしまうものだ。
有賀に自由には打たせない。攻めきってやる。そんな強い意志を感じさせる。
結果、有賀から1000点の和了り。
まず親を一つ潰した。
ポン
東2局0本場 親:上野 ドラ
上野のツモ和了り。
ツモ
700オール。
有賀にとってはありがたい。
局がつぶれず、坂本の着順が落ちた。
東2局1本場 親:上野 ドラ
先制聴牌は11巡目上野。
場にはが一枚切れているだけだが、ヤミテン。
有賀、13巡目に追いつきこの聴牌。
一撃で決められる!
次のツモ番、ツモる指にも力が入る。
が、ツモ抽選を受けれたのは一度だけで、根本が上野にで放銃。
有賀、お〜〜〜きな溜息。
気を取り直していこう。
東2局2本場 親:上野 ドラ
最初に聴牌を入れたのは有賀。
8巡目、根本の切ったにポンテンを入れる。
ポン
11巡目、ツモってきたのはドラの。
さすがにこの手じゃね。
と聴牌を外したが、このはずし方が秀逸。
ドラの2枚引きを夢見てと払いたくなるところだが、
ほぼ、和了りはないと考えて、安全にのトイツ落とし。
実はこの時すでに坂本にヤミテンが入っていた。
危ないところだった。
そして、根本が15巡目に聴牌即リーチ。
根本、一発目のツモは。
ヤミテンに構えていたら坂本に放銃だったかも!
根本即リー大正解。
結局流局。
東3局3本場供託1.0 親:根本 ドラ
根本、11巡目リーチ。
ここでの点数状況は、
有賀 28300
上野 36300
根本 24100
坂本 30300
並びを作りたい有賀、ツモれ〜〜と祈りつつも残念、流局。
東4局4本場供託2.0 親:坂本 ドラ
有賀、6巡目聴牌。
これを坂本から和了りたいが、
供託2本に4本場、さらにこの待ちとあっては見逃すわけには行かない。
有賀←上野 1300は2500(+R×2)
ギャラリーも目が離せない
南1局0本場 親:有賀 ドラ
さあ、いよいよやってきた有賀の最後の親番。
ここまでの点数状況は、
有賀 32800
上野 33800
根本 23100
坂本 30300
有賀1着坂本3着なら、16000点差が必要。
有賀1着坂本4着なら、8000点差が必要。
とにかくここでツモり殺すぞ〜と有賀は思っていたはず。
…で取った配牌がこれ。
有賀配牌
…ひどすぎる。和了り連荘でしたっけ?
まあ、遅い巡目の勝負になればなんとかなるかもしれんし、
なるべく鳴かれないように丁寧に進めていくしかないわ。
と有賀が選んだ第一打は。
これを坂本がポン!!
「あのポンは今世紀最大の「イラっ(怒)」だったわ」
とは後の有賀の談。
坂本はここからのポン。
うん。そうだね。攻めきって勝つんだもんね。
この後、9巡目に坂本が聴牌するまで字牌は一枚も河に打たれない。
上野も根本も坂本を勝たせた「戦犯」にはなりたくない。
有賀でさえ、手牌を狭めて字牌を切らない。
「おれの勝負どころはここじゃない!」
坂本、9巡目の自力聴牌は
ポン
悠々の一人旅だが結局ツモれず、流局。
有賀、首の皮一枚繋がった。
南2局1本場 親:上野 ドラ
坂本、7巡目ポンテン。
ポン
その時有賀もドラドラのイーシャンテン。追いつけるか!?
が、願い空しく上野がを打ち込んでしまう。
南3局0本場 親:根本 ドラ
ここまでの点数状況は、
有賀 32800
上野 32500
根本 23100
坂本 31600
このままの並びだと、有賀は坂本と16000差つける必要がある。
有賀のオーラス条件を2000-3900以上ツモとするためにこの局の条件を逆算すると、
・600-1200以上のツモ
・坂本から1600以上ロン
・根本から2900以上ロン
・上野からは和了れない
となる。
さて、有賀の配牌。
一番現実的なのは、メンピンツモだろう。
ところが有賀、序盤の手組で字牌を絞ってしまう。
3巡目までの河がとなっている。
ここはさすがに自己都合で字牌をブンブン切り飛ばした方がいいのではないだろうか。
結局4巡目からは字牌を切り飛ばすので、結果的には9巡目には同じ形になる。
ここから打。
そう。リーチツモに意味はほとんどないのだ。
平和かタンヤオをつける必要が大いにある。
そして、裏目というべきか、11巡目のツモは
ツモ
もちろん自分の河にはが並んである。
が、フリテンとか関係ないのだ。
坂本直撃がほぼない以上、ツモ専みたいなものだし。
切って、広いイーシャンテンだなぁと思ってみていると、なんと打!!
有賀、タンヤオと平和を両方つけようとしているのか!!
ここで1300-2600引いても、オーラス1300-2600ではぎりぎり届かない。
条件はほとんど変わらないということだ。
なら、ここで700-1300を引くために全力を尽くすべきだろう。
後で、聞いたら、ラス前の条件まで細かくは考えていなかったらしい。
まあ、こんな大舞台でそこまで考えるのは難しいよね。
結果はどのみち流局。
南4局1本場 親:坂本 ドラ
有賀の条件はハネツモか満直。
そして、9割9分、最後の局である。
有賀の配牌。
ホンイツ七対子しか手はなさそう。
一心不乱に筒子と字牌を集める。
そして、13巡目。
ツモ
ここでホンイツを諦めて、場に2枚切れているを捨てる。
坂本は後に「あのを見て生きた心地がしなかった」と語っている。
たしかに坂本の立場から見れば恐ろしい。
有賀の河
有賀はこれから5回のツモ番の間に6組目のトイツを作り、さらにドラのを2回引かなければならない。
奇跡に近いようなことだが、ここからホンイツ七対子をツモりあげるよりも簡単だろう。
奇跡は起こらず。
有賀が最後の牌を河に置いた瞬間、坂本大志の優勝が決まった。
強くなるために努力をする。
それを常に生活の中心に置いてきた。
積年の思いがあっただろう。
優勝スピーチで坂本は涙を流した。
必死に単語をつなぎ合わせて語る言葉はたどたどしかったけれども、
その姿に会場からは大きな拍手が起こった。
まさし、おめでとう!!
文責:園田賢(最高位戦日本プロ麻雀協会)