コラム・観戦記

【第38期Aリーグ第1節レポート】 葉月たまみ

3月17日(日) 第38期Aリーグが開幕しました

気になる出場選手とその卓組は事前のニュースでも告知されていたとおり
https://saikouisen.com/news.php?i=567

今回はその第1節の模様をお届けするわけですが…

次回第2節は3月27日(水)とわずか10日後です

なので今回は速報として
開幕戦に臨んだ選手の生の声を中心にレポートしようと思います

できるだけ多くの選手からお話が聞けたらと思い開始1時間以上前に飯田橋駅に到着

予想通り会場にはすでに近藤誠一最高位の姿が…
決定戦観戦記の書き出しで毎回出すパターンですやん!!

しかしこれから対局に臨むという空気の中切り込んで行くより
立会人の近藤選手にまずお話を聴くほうが断然気が楽ですから
この状況はむしろ予定通りプラス期待通りでした

そんなわけでまずは近藤選手にお話を伺うのですが
「正直、今回キーマンは誰だと思いますか?」の質問に
「スゴイ難しいこと聴くねぇ…ははっ」とあっさりはぐらかされました(笑)
それくらい今回は予想が簡単ではない波乱のレースなのでしょう

波乱の要因はまず今期より新規参入となる3人の選手
当然毎年選手は入れ替わりますが今回は復帰選手はなく全員が新規であること
このことが大きな化学反応を生むことは間違いありません

今期より初のAリーグ昇級を果たした中嶋和正選手、新井啓文選手からは開始前に
待望のリーグ戦参戦となる土田浩翔選手からは対局後にそれぞれお話を伺うことができました

 

 

  新井 啓文 選手

 

新井選手はいつも通り元気に会場入り
今日が特別な日という雰囲気は全く出すことなく終始笑顔でした


たくさんお話ししてくれたので書ききれません
…ってレポートにならないようなことを言ってしまいそうなくらい


とにかく普段以上におしゃべりが多かったのは間違いありません(笑)

 

しかし実は緊張を隠すための無意識な行為だったらしく
「前日あたりからツイッターのつぶやきが異常に多いし当日もやたら口数が多い」
と佐藤聖誠選手から対局後に指摘されてちょっと照れる新井選手でした

 

 

そんな新井選手の麻雀のイメージを言葉で表現してみるとしたら
笑顔の裏に隠された超精密機械といったところでしょうか…

ここでこの牌を鳴くべきか否か
「どちらかと言えば僕は○○の方が多いです…」

新井選手の話はここで終わらない
「なぜなら…」と延々と解説は続いていく
先の話の延長でこのように述べると単なる話し好きと思う方もいるかもしれませんがそこは違います

たとえば打牌選択の場面における2つの選択肢
どちらを切ってもあまり変わらない
優劣をつけるとしたら51%vs49%くらいじゃないかという場面

新井選手はこの2%をきちんと説明し現場でその答えを出すことに徹しているように見受けられます
2%の差とは麻雀というゲームの中ではたいした差ではないかもしれません
しかし統計学的にはハッキリとした差なのです
その違いを明確にしながら打つ姿勢には麻雀に対する大きな愛情がこもっているように思います

緒戦プラスにまとめるも自己評価は難しい顔で「85点」とのこと
普通85点と言えば十分合格と言える点数であり
難しい顔をしてつける点ではないと思われます
しかし結果的に同卓の佐藤聖誠選手に着を取られ順位点を下げてしまうシーンもあり
周りにさえ気づかれなかったかもしれない中でも自分なりに納得のいかない場面があったのかもしれません

この細かい減点が修正され満点が出たら今後のAリーグがもっともっと盛り上がっていくことでしょう
新井選手の精巧かつ真摯な麻雀が皆さんを魅了していくのは間違いありません

 

   中嶋 和正 選手

 

次にお話を伺ったのは中嶋和正選手


彼は33期前期入会と全体的に見れば超若手


昨今は選手層の厚さもあるのかストレート昇級達成はなかなか難しいところですが
入会6年目でのAリーグ入りということで自然と注目も集まると思います

最高位戦の歴史を鑑みたら”33期”と聴くとものすごい現代っ子のイメージです


きっと緊張してるとか絶対言わないんだろうな…
むしろ楽しいとか嬉しいとかいう言葉が飛び出すのではないだろうか

 

 

 

  そんな気持ちで開始前にインタビューするとやはり笑顔で
「注目されるのは嬉しい。Aリーグっていうだけでも注目が集まるのにらに第1節から土田さん金子さんと同卓っていうのはテンションあがります。」

 

となにかやってくれそうな感じが…いややってくれる感じしかしませんでした

蓋をあけてみれば1221でトータル116.6pの首位につけるという絶好調のスタートを切った中嶋選手
同卓の土田浩翔選手も対局後自身のツイッター上で

 

「最高位戦Aリーグに昇級してきた中嶋くんは只者ではありませんでした。
テンパイの形に意外性があり、ガードの強さも打たれ強さもあり…」

 

と個別に名前を挙げて絶賛されているほどでした

仕掛けを駆使したアガりに打点も伴い近代的な打ち筋の強さを証明するとともに
タンピン系のリーチをしっかりとツモりあげるなどバランスも非常に優れており
中嶋選手の長所が存分に発揮された日だったように思われます

これだけほめちぎっておくと彼が超人みたいに聴こえますよね
なのでこのあたりでバラします

「緊張はないです」と開始前言っていた中嶋選手ですが

流局時に採譜用に自山から裏ドラを開示して中央に置くとき
手が震えていたのをちゃんと観ましたよー!!

皆さん!彼は超人ではありません!!
ただ麻雀の強い普通の人間です!

 

土田 浩翔 選手   

 

そして第36期の入会よりずっとリーグ戦参戦の期待が集まっていた土田浩翔選手から対局後にお話を伺うことができました

あまりにも貴重すぎるので以下少し形式を変えてインタビュー形式でお伝えしましょう

--今日はついに最高位リーグ戦に初参戦ということでしたが、麻雀の内容だと、どうしてもここに注目せざるを得ないのですが(笑)

土田「(笑)」

--1回戦開局3巡目リーチで初和了、しかもまるでドラマみたいな、皆さんの期待通りといった、土田さんらしいアガりでしたね。

1回戦 東1局 ドラ 東家


第1打から西家の金子選手は土田選手の手元を睨みつけるようにじっと見つめている
2巡目の土田選手の模打のスピードが若干ゆるくなったと思うと
金子選手の目ヂカラはさらにアップし緊迫感は増していく…
すると3巡目、土田選手から「リーチ」の声

--金子さんの様子で早いのは感じたんですけど、3巡目でリーチって言われて金子さんうんうんって頷いてたんですよ、もうドラマ観てるみたいでした。

土田「金子さんとは長いからね、手が早いとか遅いとかそういう速度の感じ方はお互いにわかるんだと思いますよ。金子さんと打てて本当に楽しかった。」

--しかも開くとまさかというかやっぱりというか七対子で。

土田「でも裏ドラがのったのは結果で、リーチはチートイのみでしたよね。こうしたチートイのみとかピンフのみとかで始まる日って実は…あまり良くないんです。」

--えっ…。で、でも聞いたことあります、そういう話(笑)
(全国のデジタル派の皆さんゴメンナサイ!)

土田「タンピン系の手もしっかりとアガれる時がいい状態。でも今日はそれが全く決まらなくて。」

1回戦南場の親番でも
土田選手は8巡目のリーチを打ち両面をツモるが最終形は


 ツモ


と確かにタテの形を含んでいた

--でもタテのツモを操る感覚が素晴らしいですよね。例えば1回戦南1局1本場、を上家から、その後を下家からポンする場面がありました。

土田「ああ、トイトイですね。」

--あれは上家と下家から鳴いてツモを修正していたんですよね。

土田「そうです。」

--私は対面の金子さんの方から観ていて、金子さんもトイツ手になっていって、土田さんが場を支配しているような脅威みたいなものを感じましたね。

--でも、土田さんの造っていく流れを切るように攻める中嶋くんの存在、すごく斬新だったと思うんですが。

土田「彼は凄いね。すごくエネルギーを感じたね。メリハリもはっきりしていて、仕掛けを多用しながら放銃にまわる場面もほとんどなく、対応力もある。これからリーグ戦前半は中心になって活躍していく選手でしょうね。」

--ここを決めようと思った時の瞬発力とか、度胸というか。1回戦は仕掛けに打点も伴って、土田さんとのトップ争いを制するなど、土田さんのおっしゃったようにパワーありましたよね。あと、オーラスで素早くふたつ仕掛けてきた…。

2回戦 南4局
点棒状況
東家 山口 26400
南家 土田 21600
西家 中嶋 26600
北家 石橋 45400

ドラ

西家の中嶋選手が親の第1打であるをポン
直後自身のツモ番を待たずして土田選手よりをチーする

ちなみに配牌は以下の形


最終形がと石橋選手からも打たれにくい牌になってしまったが
自力でを引き2着をキープした

土田「そう、2回戦でオーラス2着目からラス目まで5000点の場面で、を連続で鳴いて、あの機動力がAリーグデビューの日からできるのは素晴らしいね。」

--2回戦といえば、今日は5人打でしたので回毎に対局者が入れ替わり、卓内の雰囲気が変化しましたよね。

土田「そうだね…1回戦が終わって金子さんが抜けて石橋くんが入ったらまたガラッと雰囲気が変わって、その回は石橋くんがグイグイと局を引っ張っていく感じでムードメーカーになっていきましたね。」

 

 

 

--石橋さんの印象はどうでしたか。

土田「石橋くんは發王位、最高位を獲ってその後もどんどん成長していて、今も進化し続けているよね。

攻め筋も良くて、とてもリズムのいい麻雀をするんです。まるで音楽を聴いているような心地良い感じ…。

対戦していて心地よくなっていたらダメなんだけど(笑)。

2回戦もあのをリーチしてしっかりツモるところが力強かったね。」

 

 

 

 

 

 石橋 伸洋 選手            

2回戦 南3局 ドラ 石橋(親)29500点
7巡目リーチ
 ツモ 6000オール

--まやさん(山口選手)は今日1日通して我慢の連続という感じだったんですが…

1回戦 東2局 ドラ

北家土田選手が11巡目にペンでリーチ
直後に親の山口選手にテンパイが入り無スジを押してでリーチと追いかける展開に発展
ここで山口選手がアガり切ることがあれば今日の結果は劇的に変わったことだろう

山口選手の一発目のツモは仕掛けを入れている中嶋選手のマンガンに捕まってしまう
開始わずか4局目にして明暗は分かれ、結果は皆さんご存知のとおりである。

--まやさん(山口選手)については、麻雀でもプライベートでも、いい意味で感情を爆発させてエネルギーに変え人っていう印象を持っていたんです。

麻雀も勝負ですから、殺気…みたいなものをまとうというか、そういう力は必要なって肯定的に観ていたんです。

でもAリーグにあがってから、そういうのがなくなったように見えるんです。調子のいい時も、今日みたいに状態の悪い時も変わらずに穏やかなんですよね。

土田「きっと対局者全員をリスペクトして臨んでいるんだと思いますよ。」

--女性初のAリーガーとして孤立無援のイメージもあるかもしれませんし、肩肘張ることなく、全員をリスペクトっていうのは実は簡単そうでとても難しいことですよね…。

 

 

           山口 まや 選手

 

--今日は土田さんご自身も不調を感じた日であったとのことでしたが。

土田「そうだね。最初にも言っていたけれど、タンピン系のリーチが全て不発で全体的にみて今日は決め手がゼロ。
しかもとても大きなミスをしてしまった。3回戦で。」

--トップが激しく入れ替わりましたね。2着目で迎えた南場の親番でのリーチを打って。一発目で石橋さんが鳴いて自然にチンイツのテンパイをとったところに即宣言牌のを掴んで…。

 

(全体牌譜はこちら)

土田「その次局が本当に大ミスだった…。ドラがで、イーペーコのカンを手変わりを待たずにリーチしてしまった。」

--前局のマンガン放銃がひびいて…ですか?

土田「いや…それよりも入り目の感触がすごく良かったのでリーチしてしまったその時の一発ツモがでね、もう本当にガックリしちゃった。」

--マンガンをアガって石橋さんがトップになった後も、中嶋くんがツモって捲くって、金子さんがツモり返して再逆転して、という展開でしたが、確かに失速してトップ争いに参加できなかったという印象がありましたが、ガックリっていう言葉で表現されると本当にその残念な気持ちが伝わってきちゃいますね…。

--今日の開幕戦で4選手と対峙して、またこれから新しい相手とどんどん当たっていく訳ですが、マークしている人物であるとか、自身の対策などありますか?

土田「今日戦ってみて思うのは、やはりタンピン系の決め手となる手をしっかりアガることですね。そのためにヤミテンも…しかも高打点のヤミテンを目指して、織り交ぜていくことが大事だと思います。選手についてはまだほとんど対戦経験のない選手もいますから、まだまだわかりませんね。対策は、自分の型をしっかりみつめながら、相手の型を把握していく、という戦い方ですね。」

--いわゆる敵を知り己を知れば…というやつですね。

土田「そう、何節か必要だと思いますが…。」

--今日は人だかりができるくらいギャラリーも多くて、本当に大変だったと思います。そんななか取材まで応じていただいて本当にありがとうございました。次節以降の活躍も期待しています!

第1節終了時のスコアはこちら

 

 

次回Aリーグ第2節は3月27日(水)
神楽坂「ばかんす」にて11:00より対局開始です

卓組は以下のようになっております(敬称略)

A卓:中嶋和正・石橋伸洋・坂本大志・石井一馬
B卓:佐藤聖誠・新井啓文・土田浩翔・山口まや
C卓:水巻 渉・平賀聡彦・張 敏賢・村上 淳・金子 正輝

観戦は自由となっております。皆様のご来場お待ちしております!
 

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