コラム・観戦記

【第6期最高位戦Classic決勝戦2日目観戦記】

 

初日を終了した時点で、4人のスコアは以下の通り。

山田昌和54.9 三ヶ島幸助10.6 須藤泰久▲21.2 宇野公介▲44.3

山田が優位なのは間違いないのであるが、安心できるリードとは言い切れない。
2年前(第4期)の決勝では、初日終了時点で2位と94.0P差だった坂本大志(最高位戦・B1)が、2日目最終戦を迎えた時点で32.0Pまで迫られた。
しかも坂本はオール連対にもかかわらず、である。

このまま山田が逃げ切るのか、それとも逆転劇が起こるのか。

6回戦
起家から、宇野・三ヶ島・須藤・山田
東2局1本場 ドラ
南家須藤が5巡目に迷わずリーチ。

 


それを受けて6巡目、東家三ヶ島が長考。

 


ちなみに須藤の捨て牌はこう。(↓はツモ切り)

 

↓          ↓


「わからん」とばかりに、ストレートに
を切ってもいいが、

安易な一打を良しとしない三ヶ島。ひとまず現物の
8巡目のツモ
で、現物になったばかりのを切る。

 


9巡目にツモ
。今度は須藤の6巡目の打を見て、スジのを切る。
そして10巡目のツモは
。打で必然のリーチ。
待ちは絶好の

 


流れを信じて疑わない三ヶ島のこと、「これは勝った」と思ったに違いない。
流れを信じない打ち手だとしても「勝算が高い」とは思うだろう。

しかし、勝算が低い方が時々勝つのも麻雀。
12巡目に三ヶ島が
を力なくツモ切り。
須藤が5200は5500とリーチ棒1本を奪い取った。
初日マイナススタートの須藤としては会心の結果。
あとは山田をいかに崩すか。

東4局 ドラ
トーナメントリーダーの山田が親である。
この局が最初の山場であろう。当然、それは追う3人も承知している。
そして、それに応えたのが南家宇野。13巡目にリーチ。

 


巡目は少し深いが、得点効率が良く、ソーズが安いので、ツモアガリが十分期待できそう。
山に3枚残っていた
を、あっさりと一発でツモ。
一発と裏ドラがないルールなので、2000・4000。
親っかぶりに成功した。これは面白くなりそうだ。
山田には申し訳ないが、観戦する立場だと、独走よりも接戦を望んでしまうもの。

流局が2局続いた後、南3局2本場に須藤が親番で2600は2800オール。

 

 ツモ ドラ

再び須藤がトップ目に浮上。下位陣の奮起によって、ますます楽しみな展開になりそうである。

南4局4本場 ドラ

持ち点は以下の通り。
山田25200 宇野35200 三ヶ島15700 須藤43900

山田がラスになるのが理想ではあるが、ひとまずこれでも十分だろう。
とにかく怖いのは、山田の再浮上。
トップ目の須藤はともかく、宇野と三ヶ島が無理して着順を上げようと考えると、

山田の思うツボになりかねない。

南家宇野の9巡目。

 


ここから打
。裏目のツモでも567の三色が狙える。
ツモによっては678もありそう。
そして11巡目のツモは

もはや手変わりなど待っていられない。打
でリーチ。

 


待ちは1枚使いのカン

仕方ないとはいえ、こういう点数合わせのリーチというのは、だいたいアガれない。
このまま流局だろうな、と思っていたが、12巡目に宇野の手元で踊っていたのは、なんと

2000・3900は2400・4300で、宇野が強引に決勝戦初トップをもぎ取った。

6回戦
宇野26.3 須藤15.5 山田▲13.1 三ヶ島▲28.7

6回戦までのトータル
山田41.8 須藤▲5.7 宇野▲18.0 三ヶ島▲18.1

7回戦

起家から、三ヶ島・宇野・山田・須藤
東1局 ドラ

 

東家三ヶ島が8巡目にリーチ。

 


三ヶ島の捨て牌はこう。(↓はツモ切り)

 

           ↓   ↓  ↓   ↓


巡目、待ち、得点効率、情報の少なさ、どれも申し分のないリーチである。
ちなみにこの時点で、
は山に5枚残っている。

これに対抗したのが、4巡目にを仕掛けている南家宇野。
無スジの
を立て続けに勝負。

 

 
ちなみに安全牌は1つもない。本当なら対抗したくないだろう。
しかし、こういう時こそしっかり攻めないといけない。
中途半端に
のトイツ落としをしたところで、逃げ切れるとは限らないのだから。

12巡目、三ヶ島がをツモ切り、宇野に3900とリーチ棒を献上する結果となった。
それにしても、三ヶ島は勝負どころでことごとく悪い結果となってしまっている。
宇野の最終形を見た三ヶ島の心境やいかに。

南1局1本場 供託1000点 ドラ

 

持ち点は以下の通り。
三ヶ島32800 宇野32400 山田27100 須藤26700

三ヶ島と宇野にとっては、願ってもない並びである。
一方、追われる立場の山田。6回戦は3着で、今回もここまで3着目。
この展開をどう感じているか。
まだ平気と思っているのか。
それとも、少しは苛立ちを感じているのか。

その西家山田の配牌はこう。

 


2巡目、山田が南家の宇野の
をポン。

 

 

ここから打

この仕掛けを見た私は、「おやっ?」と思った。
まず、東家三ヶ島が同巡で
を切っていること。
同巡2鳴きの後の打牌が
であること。
正直、この仕掛けの意図が見えない。

現時点での山田のテーマは、
「早くアガる」もしくは、「相手をアガらせない」ことだろう。
この局の山田の手牌は、早アガリができそうもない。
となると、「相手にプレッシャーを与える」ことで、相手の進行を止めたいところ。

山田の同巡2鳴きを見て、相手はどう思うだろうか?
を切って、ソーズ一色をぼやかす意味はあるのか?
選択肢としては、1枚目の
をポンして打
もしくは2枚目も鳴かずに、三ヶ島と宇野の安全牌を残しておく。

この2つ以外は、正直なところ得をするとは思えない。
ここにきて、山田が初めて見せた、大きな変調である。
やはり、追われる者はもの凄い重圧がかかるのである。

かくいう私も、昨年の決勝で目が腐るポンをしてしまったので、自戒を込めて。
第5期最高位戦Classic2日目(8回戦・南1局1本場)

そして、宇野が6巡目テンパイ。
少し気合いが入った声でリーチ宣言をした。

 

宇野らしい、しっかりした攻めである。
は山にまだ6枚いるので、ツモアガリが十分期待できそう。
しかし、この局面ならヤミテンもありだと思う。
最大の理由は、山田からの直撃がかなり期待できるからである。
もちろん山田以外からのロンアガリでも、自分はトップ目に立てる。
とはいうものの、やはり素点の上昇は魅力的ではある。
場況を見ても、ツモれそうと思うのも無理はない。

結果は流局。点棒の動きは宇野が出した1000点棒だけである。
しかし、心の動きは大きく感じられた。
山田の変調がどう影響するのか。
それとも山田が立て直すのか。

次局に宇野が親番でピンフのみをアガり、リーチ棒の回収に成功。
宇野がトップ目に立つものの、山田もしぶとい。
宇野からタンヤオ七対子をアガり、宇野に200点差まで迫った。

南3局 ドラ
持ち点は以下の通り。
山田31200 須藤26700 三ヶ島30700 宇野31400
北家宇野が5巡目に
をポン。

 

  
 

西家三ヶ島も6巡目に仕掛け返す。

 

 
そして三ヶ島が8巡目にをチーして打

 

   


カン
で3900のテンパイ。
マンズがやや高そうな捨て牌ではあるが、最終打牌の
が情報を少しぼかしている。
そこに南家須藤がここから
ツモ切り。

 

これで三ヶ島が一歩抜け出した。

南4局は、須藤が700オールで粘るものの、次局に宇野が値千金の2着死守のアガリ。
トータルでも、現実味のあるポイント差となった。

7回戦
三ヶ島15.5 宇野6.1 山田▲3.9 須藤▲17.7

7回戦までのトータル
山田37.9 三ヶ島▲2.6 宇野▲11.9 須藤▲23.4

8回戦
起家から、山田・宇野・須藤・三ヶ島
東1局1本場 ドラ
 

前局は、東家山田が西家須藤からピンフのみ1500をアガる。
7回戦では危うさを見せた山田であったが、依然ポイントではまだまだ優位に立っている。
それだけに、追いかける側としては、これ以上山田に連荘されたくない。

その想いに応えたのが、南家宇野。
9巡目に、西家須藤からの
をロン。

 

 ロン

タンヤオ・ピンフ・三色・ドラ1で8000は8300。
準決勝最終日に見せた怒涛のスパートが、再び見られるのか?

南1局3本場 供託1000点 ドラ
 

持ち点は以下の通り。
山田31500 宇野38300 須藤20200 三ヶ島29000

絶体絶命の西家須藤が、ここで意地のリーチ。
そして、力強くツモ。

 

 ツモ
1000・2000の3本場にリーチ棒を手に入れた。

その後は2局続けて流局して、オーラスを迎えることとなった。

南4局2本場 ドラ

 

持ち点は以下の通り。
三ヶ島27700 山田29200 宇野37000 須藤26100

山田は2着を死守したいところ。
三ヶ島と須藤は、自らの着順アップだけでなく、山田の着順を落としたい。
宇野はあわよくば山田を3着以下にしたい。
それぞれの思惑が交差するオーラス。決勝戦最大の山場と言っていいだろう。

先に仕掛けたのは、南家山田。
8巡目に東家三ヶ島が切った
に食いつく。

 

 


まだネックが残っているうえに、守れる手牌ではない。
しかし、「もはやそんなことは言っていられない」という思いがもの凄く伝わってくる。

それに対抗したのが、北家須藤。
10巡目にラス牌のカン
をチー。

 

 


アガれば着順が上がるとはいえ、ここからチーできる打ち手が、果たしてどのくらいいるのだろうか。
「チーしなければ、100%に近い確率でアガれない」のはわかるのだが。
しかし、この状況はもはや理屈でどうこうではない。
自ら切り開いて、僅かな可能性を手繰り寄せなくてはいけないのである。

11巡目、東家三ヶ島の手牌はこうなっていた。

 


苦しいイーシャンテンであるが、ここでギブアップしてしまうと、山田を楽にさせてしまう。
須藤同様、ファイティングポーズを見せておかないといけないのである。
ここに無スジの
を引くのだが、歯を食いしばってツモ切り。
が重なった時だけは、自分の手牌で勝負という腹づもりなのであろう。
そういうこともあり、12巡目の
もツモ切り。
そして、この
切りが大きく展開を変えた。

同巡、宇野がメンツを中抜きして、を合わせ打つ。
それを須藤がチーして、打

ペンとはいえ、何とか役ありテンパイに漕ぎつけた。

 

  

その直後、山田がここからをポン。

 

  


そして山田の手から放たれた牌は、

須藤、高らかと「ロン」。1000は1600。
ということは?
まさに奇跡に近い、出場所最高の山田単独ラス。
須藤と三ヶ島が同点2着、ラスの山田とは僅か100点差である。

ところで問題なのは、山田のポン。
「ポン」と言った瞬間、「しまった」という表情を見せた。
この局面で一番打ってはいけない相手の安全牌をポンした挙句、放銃という最悪の結果である。

「あのポンはダメでしょ」と非難するのは簡単である。
しかし、山田の衝動ポンを誘発させた立役者は、須藤と三ヶ島だろう。
須藤と三ヶ島が自分の身を削りながら、山田にプレッシャーを与えた結果である。

8回戦
宇野19.0 三ヶ島▲2.3 須藤▲2.3 山田▲14.4

8回戦までのトータル
山田23.5 宇野7.1 三ヶ島▲4.9 須藤▲25.7

9回戦
起家から、須藤・山田・宇野・三ヶ島
東3局2本場 ドラ

北家山田が4巡目にチーテン。

 

 


ところが、
が出てこない。
南家三ヶ島は、4巡目に切った
が5巡目に被ったものの、

山田のチーを見て安易に切らず、しっかり対応している。
そして、東家宇野がなかなかつかまない。

そうこうしているうちに、12巡目に山田が引いたのは、宇野に無スジの
ここで宇野の現物の
を切って、のシャンポンに待ち変え。

 

 
さらに14巡目のツモは

今度は打
で、ペンに待ち変え。

宇野のテンパイは13巡目。
そして15巡目にツモ。

 

  ツモ

山田が冷静に対応したものの、もはや宇野を止められない。
暫定ではあるが、順位点込みの現時点でのトータルポイントは以下の通り。
宇野28.4 山田17.8
山田がついに首位の座を明け渡した。
しかも、代わりに躍り出たのは、初日時点で100P離れていた宇野である。

東4局4本場 ドラ
 

持ち点は以下の通り。
三ヶ島23300 須藤29100 山田28300 宇野39300
6巡目に西家山田が
をポン。

 

 


マンズに寄せたいところだが、形自体はかなり苦しい。

7巡目、北家宇野がテンパイ。

 


現状トップ目。
ヤミテンなら山田から
がこぼれるかもしれない。
何よりも、ノーガードにするのが怖い。
上記の理由から、私ならヤミテンにしそうだが、宇野の決断はリーチ。

リーチにもメリットはある。
ヤミテンにしたところで、ドラの筋はなかなか出てこなさそう。
仕掛けている山田に対するけん制。
出て3900、ツモって1300・2600、というそこそこの打点。

その後、山田が1枚、2枚をつかんで、撤退。
ヤミテンならばどうだったのか、と思っていたのだが、13巡目に宇野が引いたのは

1300・2600の4本場で、さらに突き放した。

南4局3本場 ドラ


 

持ち点は以下の通り。
三ヶ島20300 須藤27400 山田26600 宇野45700

山田としては何としても2着にはなっておきたい。
もしも山田が1000点の3本場をアガれば、トータルポイントはこうなる。
宇野34.8 山田26.0

そうなれば、最終戦は宇野を800点上回ればいいので、ほぼ並びといっていい。
(※同点の場合は、準決勝の成績が上位の山田が優勝となる)

逆に言えば、このままの並びで終えたいのが宇野。
流局した場合のトータルポイントはこう。
宇野34.8 山田16.1

最終戦は1着順なら10600点差以内につければいい。
Classicルールにおいて、この点差はかなり有利である。

三ヶ島は親なので、ひたすらアガりたい。
須藤は、2着ならば仕方なし、といったところだろうか。

11巡目、東家三ヶ島からリーチ。

 

同巡、北家宇野がテンパイ。

 

13巡目、チャンタ三色イーシャンテンの南家須藤が打

 


は宇野のロン牌。
アガった場合、トータルはこうなる。
宇野37.7 山田22.9
最終戦が1着順なら6700点差以内の差。
しかし2着順下回ると山田の優勝が決まる。

私ならば、アガってしまいそう。
三ヶ島に放銃した場合、三ヶ島が2着まで浮上してくれればまだいい。
しかし、そうなったとしても、次局に山田がアガると、最終戦は完全に着順勝負になってしまう。
あと、この局に関しても、須藤が三ヶ島に放銃してしまうと、次局に山田の着順を落とすのが

難しくなる。

そして、宇野の選択は「見逃し」。
三ヶ島の放銃したとしても、次の局に考えればいいだけの事。
次巡以降の山越しだって期待できる。
リスクだって承知の上である。

同巡、山田がを合わせ打つ。
そして、その直後に宇野の手元に置かれたのは、奇しくも

400・700の3本場にリーチ棒が付いた。
宇野、執念の見逃しが実を結んだ。
山田は、最終戦に再逆転を狙う立場となった。

9回戦
宇野30.8 須藤0.7 山田▲7.8 三ヶ島▲23.7
9回戦までトータル
宇野38.2 山田15.4 須藤▲25.0 三ヶ島▲28.6

10回戦
起家から、須藤・山田・宇野・三ヶ島
東1局 ドラ

東家須藤が3900オール。

 

 ツモ

続く1本場では、500は600オール。
宇野にとっては、須藤が走ってくれる分には歓迎である。
しかし、走りすぎると大外から須藤に足元を掬われる可能性もゼロではない。
次局に須藤が6000は6200オールを引くと…。
宇野23.5 須藤19.1
須藤ならもしかして、と思わせたが、次の局は流局。
16巡目に須藤が出したリーチ棒が、供託となった。

東2局3本場 供託1000点 ドラ
東家山田が配牌からドラトイツ。
そして5巡目、西家三ヶ島の打白を山田がポン。

 

 


8巡目に三ヶ島がリーチ。

 


真っ直ぐ攻める山田、テンパイを果たしたのは16巡目。

 

 
そして、どちらのアガリ牌は出ることなく、流局。

東3局4本場 供託2000点 ドラ
西家須藤が12巡目にツモアガリ。

 

 ツモ

1000・2000の4本場に供託2000点の収入。

この時点で持ち点は以下の通り。
宇野23100 三ヶ島23100 須藤49700 山田24100
そして、トータルはこう。
宇野23.3 山田13.5 須藤6.7

もしも次局、須藤が宇野から5200をアガると…。
宇野14.1 山田13.5 須藤11.9

順位点の関係もあるとはいえ、見事に三つ巴になる。
2日目が始まった時点では、ほとんど予想しなかった展開である。
果たして、どうなるのか。

東4局 ドラ
そうはさせまいと、北家宇野がタンヤオのみ1300を三ヶ島からアガる。

 

   ロン


南1局 ドラ


西家宇野が2巡目にドラアンコ。

 


そして、順調に手が進み、6巡目にテンパイ。

 

 


「決まったな」と思わせるにふさわしい手牌である。

ところが、同巡に北家三ヶ島がリーチ。

 


「宇野、オリろ! もしくは振り込め!」という叫びが聞こえてきそうである。
7巡目、宇野が引いたのは4枚目の

アンカンせず、ツモ切りせず、空切り。
そして、手変わりしないまま中盤を迎えた。

11巡目、今度は東家須藤がをチー。
12巡目には
をチー。

 

  


その間、宇野は
を引いて、のノベタンに待ち変え。
そして、すぐさま
ツモ。

 

  ツモ

すぐアガれると思ったら、三ヶ島からリーチが入り。
親の須藤からも2フーロされ。
単騎で被り、待ち変えした途端に三ヶ島にツモ切られる。
さんざん運命にいたずらされながら、ようやく最高の結果が訪れた。
なんだか、宇野が歩んできた競技人生のように思えてならない。

その後は「再逆転」という奇跡は起こることなく、最後も宇野自らのアガリで締めくくった。
南4局1本場 供託1000点 ドラ

 

 ロン


10回戦
須藤25.7 宇野15.0 山田▲15.5 三ヶ島▲25.2

第4位 三ヶ島幸助 ▲53.8
内容的には、優勝してもおかしくなかった。
初日は少ないチャンスを生かし、2日目はジリ貧の展開を打破すべく、果敢に攻めた。
ベテランらしいテクニックも、随所で見せてくれた。
しかし、「これは勝算が高い」と思われた勝負手がことごとく競り負けた。
最後は力尽き、残念な結果に終わったが、次回以降もきっと若手の壁として立ちはだかるだろう。

第3位 山田昌和 ▲0.1
初日のゲーム回しはほぼ完璧だった。
競技選手という立場でなくなったことが、余分な力みをなくしたのだろう。
しかし、8回戦のオーラスが非常に悔やまれる。
「魔が差した」とは、まさにこの事だと思う。
8回戦終了後、「やってもうた」と言わんばかりに熱がる山田の表情を見て、
「あぁ、本当にこの人は競技麻雀が大好きなんだな」と改めて感じた。
競技選手活動を退いた後も、競技麻雀の世界を応援してくれている山田に、改めて感謝したい。

第2位 須藤泰久 0.7
「手牌進行速度を犠牲にして、高打点で一撃必殺」
「ハイリスク・ハイリターン」
上記の戦略は終始一貫していた。
どこの位置にいても、「もしかして逆転されるかも」と思わせる打ち手は、正直恐ろしい。
須藤のスタイルは賛否両論だが、あらゆる対局で実績を残しているのも事実。
スタイルが近いのは、平賀聡彦(最高位戦Aリーグ)あたりだろうか。
もう一発ホームランが出ていれば、もしかしたら今期の優勝は須藤だったかもしれない。

第6期最高位戦Classic優勝 宇野公介 53.2
終了直後、宇野は私に話しかけてきた。
「17年かかりましたよ~」
宇野は苦笑いしていたが、ここまでの道は長く険しかった。

Aリーグに早々と昇級し、最高位決定戦には4回進出。
最終日に大逆転を許したこともあった。
あわや最高位、というところで一歩届かず、ということもあった。
他のタイトル戦の決勝戦で涙を呑んだこともあった。
そして現在はB2リーグで苦闘中である。
最高位に挑むには、最低2年はかかる。

久々の決勝戦。
初日は展開に恵まれなかった面もあったとはいえ、少し空回りしていたようにも感じた。
しかし、2日目に見せた「しっかりした攻め」は、まさに宇野本来の麻雀である。
Classicだけでなく、リーグ戦での復活にも期待したい。
そして最高位に挑戦する宇野の姿を見てみたい。
15年来の「戦友」として、願わずにいられない。

といったところで、拙文を締めくくろうと思ったのだが…。
宇野が「これだけはどうしても書いてください」とお願いされたので、最後の最後に書かせていただく。

宇野は日頃、麻雀教室の講師として普及活動にいそしんでいる。
その教室に熱心に通っているご婦人が、自分の対局に観戦に来てくれるのである。
しかも、13年に渡ってほぼ毎回。
当然最終日も観戦に来ていたのだが、体調が優れずに途中で退席したのである。
「本人が最後までいてくれたら、感謝の言葉をその場で伝えたかったんですよね」
「だから、下出さんには申し訳ないけど、『応援してくれてありがとうございます。これからも頑張ります』って、改めて観戦記で書いてもらえますか」

自分が強くなることも大事なのは当然である。
しかし、せっかく競技選手として活動するのであれば、応援してくれる人を一人でも増やす努力も必要である。
そして、応援してくれる人に対する感謝も忘れずに。

長いエピローグになってしまったが、最後に改めて一言。
宇野ちゃん、おめでとう。

文責  下出 和洋(麻将連合)

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