コラム・観戦記

【第19期發王戦準決勝レポート】

 

發王戦準決勝レポート

いよいよ準決勝、決勝まで残すステージもあと一つ。
残った8名は、いずれも競技麻雀プロ。
麻雀プロにとって、タイトル戦の決勝は誰もが憧れる晴れ舞台。
夢の舞台のチケットを掴むのはいったい誰なのか?

準決勝の卓組はこちら

1卓 中村毅(連) 石橋伸洋(最) 浅野剛(最) 今西祐司(最)
2卓 嶋村俊幸(最) 大柳誠(最) 四柳弘樹(連) 大脇貴久(協)

日本プロ麻雀連盟(連)  日本プロ麻雀協会(協)

最高位戦が5人に、連盟が2人、協会が雀竜位の大脇1人。
3団体の選手が相まみえる形となった。

1卓

 

『ジャイアントキリング』


サッカー用語で、格下のチームが格上のチームを打ち破ること。
そのジャイアントキリングを、最高位戦上位リーグ選手や、
他団体の有名プロなどの強豪相手に続けてきた男がいた。
今度の3月でプロになってやっと丸一年、今西祐司である。
プロとして先輩の対局を観戦してきた身だからこそ、感じるプレッシャーもあったであろう。その重圧をはね除け、ここまで勝ち上がってきた。
8人の中で、唯一プロ予選から勝ち上がってきたシード以外の選手。
当然初めてとなる決勝へと進むことができるのか。

その1卓、ジャイアントキリングならぬジャイアントバズーカがいきなり炸裂する!

1卓1回戦
東1局 ドラ
 裏ドラ

一発ツモ

メンタンピン一発ツモドラ裏裏、4000・8000!
中村の会心の一撃、安目3900の手が倍満に!!!

序盤に大きなリードを手にした中村を中心に卓は展開されるが、
今西も親番で2600オール(メンピンツモドラ)などをアガり追走する。

南4局 ドラ
石橋 17800
浅野 14300
今西 36400
中村 51500

今西が3巡目にリーチ。

 

リーチタンヤオ三色、打点はあるが待ちはカンチャン。
一見大味なリーチに見える。
しかし、トップ目で親の中村はもちろん、3着の石橋も攻め返しにくい。
リーチ後に3着かラスに満貫までの放銃なら2着キープ。
果敢にハネ満ツモ(裏or一発)でトップを狙ったリーチに、
今西の發王戦に対する攻め続ける姿勢を感じた。
結果は、1人テンパイで流局。
まずは1回戦が終わった。

1卓1回戦終了時スコア
中村 +50.5
今西 +18.4
石橋 -23.2
浅野 -46.7
供1.0

1卓2回戦
初っ端の大物手で1回戦のトップを飾った中村、ポイント的にも優位に立ったかに見えた。
しかし続く2回戦、東1局に親の石橋に7700連続放銃。
いきなりビハインドを背負ってしまう。
思えば準々決勝で最後に山内が崩れたのも1卓。
この卓には魔物が棲んでいるのか?

東3局 ドラ
親の今西が5巡目にリーチ。



その時、なんと中村は国士無双イーシャンテン!



ビハインドに立たされた中村の起死回生の一撃。
魔物の牙は今度は今西へ襲い掛かるのか?

しかしここは石橋がタンピン2000点で捌く。
順調に見えた石橋だが、この後今西に2回満貫を放銃してトップをまくられてしまう。

南2局 ドラ カンドラ
断ラスで後が無い親の中村、がむしゃらに仕掛けてテンパイ。

  

すると石橋がリーチ。
ここに
持ってきた中村、少考して暗カン。
リンシャンから
を持ってきて、を切って待ちに待ち変え。
実は中村は石橋のリーチ前に
を切って、わざとチャンタのテンパイを取っている。
他者のリーチ後に暗カンしてドラを増やし、さらに待ち変えは見ていて多少のブレを感じた・・・。
結果は石橋がツモ。

 ツモ

裏が1枚のって3000・6000。
今西を逆転して再びトップ目に立つ。

ここまで傍観していた感がある浅野だったが、南3局にW南ホンイツトイトイの3000・6000をツモ。
トップ争いは一気に三つ巴の展開となる。

   ツモ

南4局 ドラ
石橋 42600
中村   0
今西 35500
浅野 41900

中村が最後に一矢報いんとリーチすると、親の浅野が追っかけリーチ。
中村



浅野

 

どちらがアガるのかによって今後の展開が大きく変わる。注目の対決!
結果は浅野が
を掴んで満貫放銃、3着まで落ちてしまう。

1卓2回戦終了時トータル
今西 +33.9
石橋 +19.4
中村  -0.5
浅野 -53.8

今西から中村まではほぼ1着順ずつの差。
中村が2回戦オーラスでアガった満貫が最後に効いてくるのか?
浅野は大トップを取った上で並びも必要、かなり苦しい。

1卓3回戦
東1局、大トップが必要な浅野、4000オールをツモって最後まで食らいつく。
続く1本場、今西がタンピンでリーチすると親の浅野が追っかけリーチ。
一瞬肝を冷やすがここは2人テンパイで流局。

場が大きく動いたのは東2局。
中村が今西から、メンホン白發イーペイコーのハネ満をアガる。

 ロン

この時、中村は別色のドラカンチャンターツを払っており、
捨て牌を信頼するなら手が入っていてもおかしくない局面。
ダマだったとは言え、今西に若干警戒が足りなかったか・・・。

この結果、ハネ満をアガった中村はもちろんだが、
石橋も今西が大きくへこんだことにより楽になった。
今西はこの後もリーチ攻勢で攻め続けるが、全くアガれず2人が局を進めていく。

南4局
浅野 35200
今西 12800
石橋 27400
中村 44600

トータルトップの中村の親なので1局勝負。
中村・石橋はこのままいけば通過。
今西は石橋から満貫直撃か、ハネ満ツモ。
浅野は3倍満クラスが必要。

今西、7巡目にチートイドラドライーシャンテン。
リーチツモチートイドラドラのハネ満が現実的なところ。
しかし、これがなかなかテンパらない・・・。
ようやく残り1巡でテンパイしてリーチするが、ツモれず。
河に2組並んだ対子が寂しげに見えた・・・。
ジャイアントキリングならず。

1卓1位通過 中村毅  2位通過 石橋伸洋

2卓

 

『ビッグ』


ビッグ、雀荘で働いていた頃に大柳に付いていたあだ名だそうである。
その名の通り身長は184㎝ありスポーツ選手のようなガタイの持ち主である。
しかし、そのあだ名にはもう一つの意味があった。
良く言えば繊細な、言い換えれば気弱な大柳の性格を揶揄したものだったらしい。
その大柳が昨年生まれ変わった。
最高位戦リーグ戦での堂々とした打ち筋、そこには気弱さのかけらも無かった。
大柳は本物のビッグになったのである。
惜しくも昨年はわずかな差で最高位決定戦進出を逃したが、今度のチャンスは譲れない。
ビッグな男が、ビッグタイトル發王位を狙う!

2卓1回戦
大脇が小刻みにアガって卓をリードする展開。
一方1万点台の一人沈みになってしまった嶋村、ラス前の親でドラ暗刻の手が入るが、ここも大脇に1000点でかわされてしまう。

南4局1本場 ドラ
大脇 41000
大柳 31700
嶋村 12900
四柳 34400

前局は親の四柳が1000オールをツモって迎えた1本場。
西家の大柳がリーチ。



2着になるには500・1000か2600条件なので、
ツモならOK、四柳以外なら一発か裏が必要。
リーチ棒を出して3700点差なので、1人か3人テンパイはOK、2人テンパイはダメ。

この時、大脇の手にはドラのW南が暗刻だったが、ここは慎重にオリを選択。
を1枚持っていた四柳もテンパイしきれず、大柳1人テンパイで終了。
まんまと2着に浮上する。

2卓1回戦終了時スコア
大脇 +40.0
大柳 +13.7
四柳  -6.6
嶋村 -48.1
供1.0 

2卓2回戦
1回戦断ラスだった嶋村。
東4局に大脇・大柳の2軒リーチを、仕掛けてドラをツモりさばく。
(西ドラドラ1300・2600)
大脇



大柳



嶋村

 ツモ(ドラ)

これでトップ目に立った嶋村、南2局の親番で3巡目リーチ。



ドラが
でダマでも親満確定だったが、力強くリーチ!
すぐに
をツモってメンピンツモイーペイコードラドラ裏6000オール!
むしろ裏が1枚だったことに若干物足りなそう表情を見せる。

このまま嶋村は6万点近くまで点棒を伸ばし、1回戦のラスを挽回する。

南4局 ドラ
大脇 26100
嶋村 56400
四柳  9200
大柳 28300

親の大柳が軽快にドラ色染め手で仕掛けて3フーロ。

   

大柳と2200点差の大脇だったが、ここまで仕掛けられては背に腹は代えられぬ。
仕掛けて1000点をアガって終局させる。

  ロン

1回戦トップのアドバンテージがある大脇、3回戦着順勝負なら勝機有りと読んだか。

2卓2回戦終了時トータル
大脇 +27.1
大柳 +22.0
嶋村  +7.3
四柳 -57.4

大脇から嶋村までは差が20P以内なので着順勝負。
まさに三つ巴の戦い。
四柳は大トップ&並びが必要な厳しい状況。

2卓3回戦
東1局に嶋村が四柳に5200放銃して一歩後退。

東2局2本場 ドラ
大柳が12巡目にリーチをすると、大脇が対応しながらドラを重ねテンパイ。
大柳



大脇

 ツモ

ここで大脇は長考。
大柳の当たり牌の
を止めて切りリーチ!
そして
をツモったのは・・・、大柳。
安目ながらメンタンピンツモ1300・2600で2軒リーチを制する。

そして嶋村ビハインドのまま局は進んでいく。

南3局 ドラ
大脇 35200
大柳 30600
嶋村 20000

大柳と嶋村が仕掛けてテンパイ。

大柳

 


嶋村

 

嶋村の捨て牌には

ラス親があるので
待ちにするのがマジョリティーだと思うが、
満貫確定のカン
待ちに受けた。嶋村らしい豪快な打ち筋。
一方、大柳の待ちの
は大脇ともちもち。
そこに
を持ってくる大柳、万事休すか。
長考した大柳が切ったのはドラの

さらに
をチーしてテンパイを組み直す!!

大柳のピンチはまだまだ続く。
親の四柳がリーチをかけてきた!
この局を制したのは・・・、大柳!
粘りに粘った大柳に女神が微笑んだ。

   ロン

南4局1本場 ドラ
大柳 31100
大脇 36700
四柳 30700
嶋村 21500

前局は嶋村・大脇の2人テンパイ。
大柳・大脇はアガればOK。嶋村はなんとか連荘して2人をまくりたい。

大柳が苦しい形から仕掛けて、大脇の協力を期待する。

 チー 打

すると大脇が期待通りにを切ってポン。連係プレーに成功する。

  

あとは嶋村のリーチが来る前にアガりきること。
さらに大脇は
もポンさせて、大柳がテンパイした瞬間に差込み!
大脇の読みと大柳の意思がマッチした1局だった。

2卓1位通過 大脇貴久  2位通過 大柳誠

決勝進出者
中村毅(連) 石橋伸洋(最) 大脇貴久(協) 大柳誠(最) 

日本プロ麻雀連盟・日本プロ麻雀協会、そして最高位戦。
3団体のAリーガーががっぷり4つでぶつかり合い、
大接戦となった決勝の模様は、決勝観戦記をお楽しみに!
(文中敬称略)

レポーター 平賀聡彦

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