コラム・観戦記

クラシック予選第2節 村上自戦記

みなさん、こんにちは!!最近ちょくちょく登場いたしております、最高位戦Aリーグの村上淳でございます。
少し前までは竹書房さんの「近代麻雀」という雑誌で連載しておりました。
その時は「おっす!オイラは麻雀界のアンパンマン、村上淳だ!!」なんつって少しイタイキャラを演じておりましたが、本人はいたって真面目な好青年、いや好中年でありまして、最高位戦のホームページではなるべく素の自分を出して行こうと思っております。
みなさまどうぞよろしくお願いしますm(__)m

さて、今回は5月19日に行われた「第5回最高位戦クラシック2日目」のレポートを書くこととなりました。
レポートと言ってもわたくし選手として出場している立場なんで、自分のことを書くしかないんですが。
そもそも依頼されたのがその日の飲み会の席のこと。かなり酔いもまわって来た中盤頃、ホームページ観戦記担当の平賀選手がとなりで飲んでいた水巻選手に駆け寄って来ました。
平賀「今日のレポートをホームページに書いてくれませんか?」
水巻「こんなひどい放銃した日のレポートなんて絶対ヤダ!!ふざけるな!!」さらには「競技麻雀で放銃とか初めてしたよ~」
「Aリーグでも10ポイント負けてるしな~(注・水巻選手は5節終了時490ポイントのダントツ、つまり俺の実力なら1日100勝たないとやってらんないということみたいです)」
この会話をテープレコーダーに録音しとけば十分面白い記事になりそうでしたけどね。んで近くにいたわたくしに。
平賀「原稿料出ますよ?」村上「よ、喜んで!」

なんてお金に弱いわたくし…いやいや、お金のためではありませぬ。
最高位戦クラシックの面白さをみなさまに伝えるべく、精一杯書いてみます!!

というわけでわたくしとクラシックについて少し。
クラシックは5年前に創設された新しいタイトル戦なんですが、1年ごとにリニューアルされて現在に至ります。変わっていないのは「旧最高位戦ルールであること」それと「予選が実績によるポイントで組み分けされること」。
昨年まではS級、A級、B級、C級という分け方だったのですが、今年からは1組、2組、3組、4組という分け方となり、他団体の方も組み分けされて同時に予選をすることになりました。
自分はAリーグの在籍年数ポイント、決定戦進出ポイント、理事補佐や理事の歴任ポイントから昨年までかろうじてS級におりましたが、今年は残念ながら2組からのスタートとなる予定でした。
上野選手が昨年決勝に2回残り、須藤選手がM1カップで優勝し、2人にポイントで抜かれてしまったからです。
ところが3月、第8回日本オープンで優勝!辞退者が出たこともあり、1組からの出場となったのでした。いや~、良かった良かった…

実はわたくし、最高位戦クラシックでの成績はすこぶる良いのです。決勝進出こそ一回もありませんが、過去4年間予選負けは一度もありませんし、本戦や準決勝でも大きくマイナスしたことはないのです。
村上淳の麻雀をよく知る人間はみな言います。「クラシックルールは苦手でしょ?得意のリーチ攻撃ができないから(ニヤニヤ)」
ところがどっこい、村上淳はそんなにおバカさんではないのです。このルールになれば当然リーチは減りますし、早い巡目からベタオリもするんです。
あら、早い巡目からベタオリするってのは一発裏ドラありの最高位戦リーグ戦と同じですな。

もともと自分は普段から終盤の放銃が少ない打ち方をしています。その分とれる形テンを逃している局も多いと自覚しています。クラシックルールはテンパイ料がないので、そのへんも好成績につながっているのかもしれませんね。
ドラをなかなか手放さないのも普段のルール通りです。

例えば、本日の1回戦南1局親番、13巡目にこんな手牌になりました。

 ドラ
トイメンの根本佳織選手、上家の金子正輝選手に少し離されていて、下家の飯田正人選手より黒棒上の3着目。是が非でもアガりたい最後の親番、普通は中*勝負で良いと思います。
残りツモは5回ですが、この3メンチャンならツモる確率はけっこうあります。ちなみには自分がカンツから一枚外していて、一枚切れ二枚切れ、マンズは全体的に比較的安い場でした。
ところが、自分は切りのタンキ待ちを選択しました。理由は簡単です。がかなり危険と判断したからです。

捨て牌を再現できないので説得力は低いのですが、この局は明らかに三人とも前に出ていました。根本選手がもっとも手出しが多く、自ら場に新しいスジを切り出していて、親の自分も明らかに臨戦体制。それに対して金子さんも飯田さんもほぼ合わせ打ちをしていませんでした。
先ほど述べた通りクラシックルールはノーテン罰符がありません。ということは自分のアガりがないと思った瞬間しっかりと受けにまわるのが普通です。
終盤に手詰まるのを避けるため、切られたばかりの中張牌を続けて切るのは受けの基本手順。その合わせ打ちを誰もしていないと言うことは、まだ4人ともアガる気がある、ということになります。

しつこいようですがこのルールだと「テンパイする気がある」ではなくて「アガる気がある」なのです。となれば自分以外の三人もテンパイか、もしくはアガりがかなり見込めるイーシャンテン、アガると打点が高いイーシャンテン、このいずれかとなります。
もちろんテンパイであれば出アガりのきかない形でもある程度は押すこともありますから、テンパイ=役がある、高い、とは限りません。とはいえヤミテンで役があって高い、すなわちでロンできる形も十分想定できるのです。と何かのシャンポン、タンキのチートイツ…

がロンと言われた瞬間、この半荘のラスはかなり濃厚となります。ポンですんだとしても、マンガンをツモアガりされれば即ラス落ち、やはりラスの可能性は高くなります。
が無事通過したとしても、自分は最高で1300オール。瞬間2着に浮上することもないのです。リーチをすれば2600オールの可能性はありますが、この巡目でラス目に落ちてまでリーチ棒を出すのが得策とは思えません。
百歩譲って初日に大きくマイナスしていたなら、勝負がけでを切ってリーチもありだったかもしれませんね。
しかし自分は初日も好調で32.5ポイントプラスの3位スタート。1組は13人中6人が本選に通過、全てを総合しても中*を切るのは損に思えたのです。もう少し巡目が早くて他三人のテンパイ率が低かったら、あるいはソーズがで高めで11600だったなら切りだったかもしれません。

実際にはタンキのまま最終ツモまで押しましたが流局。
結局根本選手は最後まで降りなかったので、がロンされるとすれば根本選手だったと思われます。ま、流局すると全員手牌を伏せてしまうので真相はわからないんですけどね。
たまたまはツモらなかったのですが、仮にツモっていたとしても後悔することはありません。その瞬間「を切らないほうが得」と判断したのですから…14年間麻雀を続けて来た以上、自分の判断にはそろそろ自信を持ちたいものです。

ちなみに、土田浩翔選手は以前から「オリているのにオリていないように見せるのが超うまい」選手だと思っています。
先ほど述べた中張牌の合わせ打ちは滅多にしませんし、オリているのに急に無筋を切り出したりするのです。それでいて放銃はほぼしないのですから、生半可な雀力では真似できない技ですよね。
それに対して金子さんはオリる時は序盤から徹底して合わせ打ち、ブラフなども一切使いません。それでも今だにあれだけ勝っているのですから、恐ろしい雀力なのは間違いないです。

バカ正直な自分はどちらかと言えば金子さんスタイルを目指しているわけですが、いつかは「村上スタイル」を確立したいと思っています。ま、村上スタイルは 結局「得なことならなんでもやるべき」に決まってるんですけど。いまより雀力を向上させないと、なんでもやるなんて器用なことはできませんよね…

話がだいぶ脱線しました。要するに最高位戦リーグ戦のルールでは「当然切ってリーチ」の手牌が、「切らずにダマ」になるくらいバランスは異なる、と言いたいのです。
だからと言って「リーチを多用するスタイル」の自分が急に勝てなくなるわけでもなく、むしろ好成績を残しているのですから、麻雀は面白いですよね。

リーチバランスはルールによって本当にかわります。この日の半荘2回戦、下家に佐藤崇、トイメンに土田浩翔選手、上家に再び金子さんという卓で、なんと6万点のトップを取ることができました。
最初のアガりは東2局、親でダマテンのペン、佐藤から7700(サンショクドラ1)でした。
さらに次局、カンでチャンタのみの3900は4200を金子さんからアガったのですが、実はどちらもAリーグだったらリーチをしていたであろう手牌なのです。

「ペン七のサンショクドラ1をリーチ?村上プロって麻雀下手なの?」なーんて思っている方もいるでしょう。
しかしその時は7巡目テンパイ、マンズは場にかなり高い(マンズがほとんど切られていない)状況で、ダマテンでいたところでがこぼれるか全くわからない状況だったのです。
7巡目ではどんな捨て牌をしようとテンパイと決めつけることはできません。しばらくはみんないらない牌を切るわけですが、以外の危険牌も平気で切り飛ばしてくるでしょう。最高位戦ルールではそれが怖いのです。
リーチでぶつかってしまえばこちらのペンは不利、だったら親の先制リーチで相手をテンパイしづらくしてしまえ、という考えですね。
しかし自分のこの考えはかなりバレてしまっていて、Aリーグではかなり村上親リーチをなめてくる人が増えて来ました。それに伴って成績も悪化、そろそろAリーグでのリーチバランスも考え直さねばならないですね。
とはいえ14年間培って来たバランスを変化させるのは相当難しいと思いますが。Aリーグでもペンの7700をダマテンにして、子方から先制リーチがかかったら未練なくオリることができるなら次からダマテンにしようと思います。クラシックルールだとオリようと思えるんですがね…

もちろん、リーチをかました局もあります。

この日最初のリーチは、2回戦南1局、南家での4万点オーバートップ目からのこんなリーチ。

 8巡目リーチ
完全に3000・6000を引きに行きました。親の金子さんが2フーロして打、これで5万点超え。
さらにむかえた親番、次の手牌に。


すでに8巡目、場にはが二枚、が一枚飛んでいて、マンズが安い場。
「残りツモに3m*は一枚くらいいるだろうな。ソーズが埋まればツモのみアガって連荘できそうだ。すぐ引いたら、テンパイはとらないほうがいいな。」
こんな風に考えていたところ、次巡すぐにツモ。当然打とテンパイを外すと、次のツモも絶好の!!


あのイーシャンテンが2巡でこんな素晴らしいテンパイに!
出アガりの5800でじゅうぶん、セオリーはヤミテンですが、ここは即リーチ!!
もちろん、ツモの4000オール狙いですが、ツモの2600オールでも1着順ぶんプラスできます。
流局してしまっても5万点オーバーで南3局、オーラス親の土田さんに連荘されない限りトップですし、とにかく素点を叩き出すことだけ考えたリーチです。
首尾よくをツモって2600オール。
さらに1本場金子さんの仕掛けに生牌(ションパイ)を2牌かぶせてイーペーコーのみの2000は2300を土田さんからロン、残り3局を無事終えて大トップでした。

クラシックルールは運の要素をなるべく排除しているとはいえ、テンパイ料で稼げないぶんアガれる手牌が来ない限り点棒が増えない、裏ドラがないぶん表ドラが来た人がかなり有利になる、と結局かなり偏りはできるのです。
シンプルなぶん最高位戦ルールよりも相手の動向は読みやすく、その点ではしっかり読みを入れている人間のほうが勝ち易いとは思いますが。

もうひとつ、仕掛けのバランスも最高位戦リーグ戦ルールとは異なります。
例えばこの日の4回戦、東4局3本場供託リーチ棒2本。
3巡目に親の佐藤崇が生牌のを切ると南家の新津さんがポン、少考して生牌のを切りました。
2巡後自分がをツモ切るとポンして打、5巡目にして一気に場が煮詰まりました。さて、ドラがのこの仕掛け、普通はどう読みますか?
先にを切っているからといって、テンパイ確実とは言えません。
3本場で供託が2本、アガるだけで2900点入るわけですから、小三元、大三元の目を消してでも一番広く打つのはわりと普通だからです。もちろんを鳴きやすくするためにあえてを切った可能性もあります。
テンパイ確実ではありませんが、だからといって他の三人は自分のアガりだけ目指してなんでも切るのか、というとそうではありません。もしかしたらみたいに出来上がっているかもしれないのです。
まだ5巡目ですが、5巡目リーチがかかったのと同じように、端牌のトイツ落としなどで必死にしのいで行くしかありません。
実戦では2巡後に手出し、さらにをツモ切りした後をツモ。

   ツモ
この最終形から考えると、3巡目にをポンした時は

  
ポンしてイーシャンテンなので鳴くのは普通なのですが、切りはまさにアガりにかけた一打。将来とのシャンポン待ちになった時かなり有利になります。もちろん引きの好形変化も見ています。
2巡後をポンした後、を引いて切りテンパイ。すぐにを引きます。

  
新津さんはこれをツモ切り。
新津さん以外の三人はほぼベタオリしており、その瞬間のカン待ちとシャンポン待ちの優劣はわかりません。
お酒の席で代表は「を手出ししたことで、シャンポンに変化させる気は全くなかった。唯一手出しするとしたら引いた時だけだね」と言ってました。
これは「シャンポンに変化させたとしても、のニケンとび()ととのシャンポンはかなり読み筋に入る」ということを言っているのですね。
ここでを手出ししてしまうとその後の変化はほぼありません(引き戻しはあります)。全員がオリているこの状況では、手牌を固定して四枚のツモにかけるのは損だ、ということだと思います。
カンのままであれば引きで八枚待ちに変化しますし、手出しがのみであれば手牌は絞りこめません。でもツモ切れば、中盤に手詰まった人がを切るかもしれません。
シャンポンに変化させた後は、例えをツモ切りしようとが切られることはない(絶対ではありませんが)ことはおわかりいただけるでしょう。

このように、クラシックルールでは仕掛けに対して三人ともかなり読みを入れて対応します。
本手が入っていれば無視して全て押しますが、中途半端な手牌から押しかえすのは損だからです。仕掛けによってリーチと同じような効果を発揮できる、ということになりますね。

この特性を活かせば、ブラフ仕掛けがかなり有効であることがわかります。
ただし今回のように三人ともベタオリするのはけっこうレアケースであり、たいていはドラドラ以上や手役絡みの十分形の人が一人押し返して来ますから、そこへの対応を間違えないようにしないといけません。
自分はそういう「虚」の仕掛けが本当に苦手でして、これはクラシックルールのみならず最高位戦ルールでももう少し取り入れなければならない課題だと思っております。

そんなわけで、読者のみなさまにこの「クラシックルール(旧最高位戦ルール)」の面白さを伝えるべくつらつらと書いて来たのですが、なんとなく伝わりましたかね!?
結局この日わたくしの成績は、3着、トップ、3着、2着で約プラス33ポイント。詳しい内容全てはお伝えできませんでしたが、この日は放銃が少なく空振りリーチもなく、かなりバランス良く打てたと思います。
半荘4回を通して放銃は3回戦に井出さんに生牌ので打った2600点一回だけ。その時もヤミテンのタンヤオドラドラカン待ちテンパイでした。
リーチは2回戦にかけた2回だけ。
どちらもアガれたので、この日はリーチ成功率100%です(^^)v
ヤミテンもほぼアガりに結びついたので、メンゼンでテンパイした局はほぼアガれたことになりますね。
あ、1回戦さっき書いた単騎とオーラスタンヤオのドラ単騎はさすがにアガれませんでした(;^_^A
仕掛けもチーテンが三回、そのうち一回出アガり(タンヤオサンショクドラ1、3900は4200)でした。
やはり半分以上の局は一生懸命オリていることになりますね。
オリている局でも、捨て牌や鳴きを使ってオリていないように見せれれば、もっと強くなることができると思います。ま、それをやろうとして押し引きのバランスが崩れるほうが怖いですが…精進しなければ!

予選二日目を終えて、わたくしは約プラス65ポイントで13人中2位となっております。
先ほど書いた通り、1組は13人中6位までが本戦に通過なんですが、1位だとなんと本戦を飛び越えて準決勝へ進出となります。現在首位の土田さんとは約30ポイント。
予選3日目は6月9日水曜日、残り半荘4回です。なんとか逆転して準決勝へ…なんて言いつつ、とにかく6位以内に入ることに専念したいと思います。

最後に。

 

私は普段はフリーのお店で「一発裏ドラあり、赤あり、ご祝儀あり」というルールでひたすら打っております。競技麻雀とは随分とかけ離れてるルールですね。
要は「どんなルールでも麻雀は楽しい!」ということですな。つけ加えるなら「麻雀は真剣にやってこそ楽しい」だと思っています。普段は遊びとしてお客様と一緒に麻雀をしておりますが、遊びも一生懸命やればやるほど楽しいのでは?

ま、このへんは人それぞれですから押し付けることはできませんよね。一生懸命やればやるほど、セコかったりえげつなく見えてしまうのはそれが麻雀のゲーム性なんですよね…。
クラシックでは、いい大人がみんな真剣にリーチ棒(1000=1P)を損しないよう、頭使って悩んでいるわけです。

いかに自分の点棒を守りつつ、目の前にいる三人から点棒を奪うか考えるわけです。いかにテンパイを悟られないようにするか、いかにオリてるのをバレないようにするか…。
麻雀というゲームに真剣に向き合えば向き合うほど、純粋に自分の勝ちを求めるようになると思うんです。そんな真剣な姿をみなさまには見ていただきたいなと思います。

派手なアガりやその人にしかアガれない手順も見たいと思いますが、こっそりダマテンにしたり、必死にオリたりしている姿をカッコいいと思っていただけるよう、わたくしはこれからも伝えて行こうと思います。
真実を伝えてこそ、麻雀プロの未来があると信じて…だって実際半分はオリてるんですもの!!では6月9日も頑張って来ます!!

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