コラム・観戦記

第18期發王戦観戦記

發王戦
最高位戦ルールのトーナメント勝ち上がり方式で行われるタイトル戦。
他団体の競技選手だけでなく、最高位戦ルールに親しんでいただく機会として、一般の方にも多くの参加をしていただいてる最高位戦を代表するオープンタイトル戦である。

しかし、その栄冠の行方は最高位戦にとって望まれる結果とはならなかった。
第1期から第16期までで最高位戦選手が發王位に輝いたのは、わずかに2回!
しかも第9期から8年連続で他団体の選手にタイトルを奪取され、最高位戦選手が決勝に1人もいないということもあったほどだった。
自分たちがリーグ戦で行っている最も得意であるべきルールで、主催団体として有利なシードシステムで参戦しながらこの結果。
選手個人がそれぞれ自分に不甲斐なさを感じるとともに、『最高位戦に發王位を!』という悲願にも近い想いが団体の中に高まっていた…。

昨年その永き呪縛を打ち破る新たな王が現れた、第17期發王位・水巻渉、その人である。

第17期發王戦

しかも決勝では、昨年10回目の最高位を獲得した永世最高位・飯田正人を破っての戴冠、内容も充分だった。
昨年のリーグ戦では筆者と同じく今一歩のところで決定戦進出を逃す結果となってしまったが、その分も賭ける想いは強く、大会が始まる前から『發王位連覇します』と豪語していた。

その言葉どおり、準々決勝・準決勝ともに半荘3回戦のトーナメントを初めの2半荘を連勝して早々と勝ち上がりを決めるという圧倒的な力と充実ぶりで決勝に駒を進めてきた。
まさに今回の大本命、そしてこの決勝も水巻中心に展開していくことになる。

1回戦

起家から宮城・上野・水巻・土井の順。

東1局は水巻の1人テンパイと静かな幕開け。

東2局1本場 ドラ
親・上野がW東暗刻の好配牌。
しかし水巻が下の形からポンと仕掛けると、

と引き入れテンパイ。
宮城から白中ドラ5200は5500を出アガり、決勝初アガリをものにする。
  ロン

東3局、水巻の親番。
ここまで水巻が場をリードする展開。
この親でさらに加点することになれば、今日1日をリードしていくことになりそうな局。
ここは土井が白のみを仕掛けて、水巻の親を捌く。

東4局2本場 ドラ
親の土井が2人テンパイ、2900とアガって迎えた2本場。
上野がをポンすると土井もをポン。
土井は下の形からと切ってソーズに寄せる。

2人の染め手がぶつかる。
土井
 
上野
 

その後土井はをツモりを切って待ちに待ち変え。
しかし土井は2巡目に、3巡目にを切っていてフリテン。
上野有利かと思われたが、結果は土井がをツモって親満。
一気に5万点近くまで突き抜ける!
その後も土井は4本場まで連荘する。

南1局 ドラ
今度は俺の番だと言わんばかりに水巻が6巡目にリーチ。

高目三色の大物手。
しかしその時、土井もドラ暗刻のイーシャンテン、一歩も譲れない。

ここは水巻が安目ツモながら裏ドラをのせ2000・4000。
土井に3700点差まで迫る。

南3局 ドラ
上2人、下2人にきっちりと点差が分かれた展開。
上2人はトップを狙いつつ更なる加点を、下2人はラスを回避してあわよくば上位を目指したい。

土井は8巡目に下の形からをチーして仕掛ける体制、水巻の親をなんとしても捌きに行く。

この後、をツモってカン待ちでテンパイ。
親・水巻も終盤仕掛けて形式テンパイをとるが、結果は土井が宮城から2000出アガリ。
水巻の親を流すのに成功する。

南4局 ドラ
土井・親 42000
水巻    38300
上野    20000
宮城    19700

熾烈なトップ争いと過酷なラス争い。
土井の配牌にソーズが濃い。

と引き入れわずか5巡でテンパイ。

一方水巻、同巡に苦しい形ながらテンパイ。
 ツモ

今一度点棒状況を確認した水巻は、トップ逆転に向けて好形変化を目指しテンパイ取らずとした。
そして切ったその牌は・・・、!!!
無残にも土井にメンホン白12000放銃となってしまった。

南4局1本場 ドラ
土井・親 54000
水巻   26300
上野   20000
宮城   19700

水巻は一気にラス争いに引き込まれる。一方土井はトップ安泰、更なるアドバンテージを狙う。
水巻、土井がイーシャンテンと場が煮詰まるなか、手を開いたのは・・・、宮城!
 ツモ

ツモ三色ドラの満貫。宮城は2着に浮上する。

1回戦スコア
土井 +49.9
宮城  +8.0
水巻 -15.8
上野 -42.1

たった2局でトップ争いから3着まで転落してしまった王者・水巻、その胸中やいかに。
休憩の間に独り静かにスコアの書かれたボードを見つめる男の姿がそこにあった。

 
2回戦

最初に水巻が昨年9年ぶりに最高位戦選手として發王位の栄冠に輝いたと書いたが、実は水巻の前に最高位戦選手として第8期發王位に輝いたのは、当時最高位戦に所属していた土井泰昭であった。
あれから10年、今は団体は別になってしまったが自身の初タイトルとなった發王位に対する土井の想いは強い。

土井泰昭
奇しくも新旧王者対決となった今回。初戦は水巻を沈めてトップを獲った土井、このままベテランの貫禄を見せつけるのか。

起家から宮城・水巻・上野・土井の順。

東1局 ドラ
水巻が下の形からオタ風のを鳴いてドラを切ってテンパイ。

すると上野、土井が相次いでリーチ!
上野

土井

水巻、前の半荘から続く負のスパイラルに陥ってしまうかと思えたが、力強くツモ!
ホンイツ一通ドラ2000・4000。
気迫のこもった発声に闘志がみなぎっていた。

南1局2本場 ドラ
前局ペン待ちのリーチを一発でツモって(2600オール)、トップ目の水巻に追いついた宮城。
さらに加点したいところだが、5巡目に早くも上野からリーチがかかる。

これに対抗したのが水巻。自風のW南を対子落とししてタンピン形で追っかけリーチ。

すぐにをツモり、メンタンピンツモドラ2000・4000。
宮城に親かぶりをさせてトップ独走をはかる。

水巻は南3局にもリーチして高目をツモってメンピンツモ三色裏3000・6000、トップを磐石のものとする。
オーラスは残り3人の2着争いに。

南4局 ドラ
水巻   57000
上野   28400
宮城   27700
土井・親 26900

ラス目で親の土井がピンズの染め手。4巡目にチーして早くもイーシャンテン。
またもオーラスで土井の一色手が決まるのか!
 チー

しかし、ここは4巡目からテンパイしていた宮城がチートイツモ。
1回戦に続き2連続でオーラスに着順を上げて2着に滑り込んだ。

2回戦スコア
水巻 +56.2
宮城 +10.9
上野 -22.4
土井 -44.7

トータル
水巻 +40.4
宮城 +18.9
土井  +5.2
上野 -64.5

1回戦のアドバンテージを吐き出してしまった土井、一方まさかの転落から立ち直りトータルトップに立った水巻。新旧王者対決セカンドステージは水巻に軍配が上がった。

3回戦

2分の1の7乗。
宮城拓二が本戦トーナメントを7連続で勝ち上がってきた確率である。一般予選のあとトーナメントで次から次へと現れる麻雀プロをなぎ倒し決勝進出を決めた。發王戦18年の歴史で2回目の快挙である。
宮城拓二
私はもう一つの点からも宮城に注目していた。宮城は水巻が店長をしている雀荘で以前バイトをしていて、今も客として店に通っているのである。
雀荘で一緒に働いていれば同卓する機会は数え切れないほどある。水巻の麻雀を最もよく知っている男が宮城なのだ。

ここまで2連続2着と好位置につけた宮城。決勝の舞台でもフリーらしい軽快な仕掛けを絡めのびのび打てているようだ。

起家から上野・水巻・土井・宮城の順。

東1局 ドラ
東1局から勝負手がぶつかる!
親の上野がW東ポン、さらにチーと仕掛けると宮城がリーチ。
上野
  

宮城

この時、実は土井も好形の勝負手のイーシャンテン。

しばらくしてをツモりを切ってテンパイ。
タンピンドラドラで高目三色、しかも高目のは今上野が通したばかり。
シメシメという心の声が聞こえてきそうだ。
しかし、土井が次巡に掴んだのはラス牌のドラ!エイっとばかりに切ると宮城に御用。
メンピン三色ドラ8000放銃。はたして三色の同時性とはあるやらないやら…。

東3局 ドラ
親の土井がポン、ポンと仕掛けてチンイツテンパイ。
  

ポンして自分で6枚持ちの待ちは若干無理仕掛けの感もあるが、
親ということもありここは他者をオロしての手変わり待ちか。
すると次巡土井がツモったのは!!!
タンヤオチンイツ6000オールで宮城をまくって一気にラス目からトップ目まで突き抜ける!

東4局3本場 ドラ
土井が2本場まで連荘したあと親が流れて宮城の親番。
宮城がチーからホンイツに一気に寄せると土井がリーチ。

リーチ後に土井の切ったドラをポンして宮城もテンパイ。
  

親にドラを鳴かれては土井も冷や汗もの。ソーズや字牌をツモ切る度に力が入る。
すると残り3巡というところで4枚目のをツモった宮城が小考、を切ってに待ち変え。
土井はリーチ後にを切っている。親のドラ色の染め手に、その色のカンチャンやペンチャンでトップ目の土井がリーチするとは考えにくい。
ここはをツモ切って3面張のままのが良かったのではないか?
結局も2人が掴むことなく、土井がハイテイでをツモって満貫。
ち、ち、力強い。5万点オーバーまで叩き出す。

南1局 ドラ
親の上野がリーチすると、同巡水巻が追っかけリーチ。
上野

水巻

激しい2着争いでどちらもアガりたいところ。
結果は水巻がを上野から出アガリ。裏もでメンピンドラドラ裏裏12000!
上野は残り6700点となり半荘3回目にして早くもトータルで苦しい位置に追い込まれる。

南2局 ドラ
親の水巻が9巡目にドラを引き入れてノリノリでリーチ。すると宮城も追っかけリーチ!
水巻

宮城

結果は水巻がをツモってリーチ發ツモドラ4000オール。
土井に300点差と迫り猛追する。

南2局1本場 ドラ
水巻が9巡目にドラを重ねると、土井もすぐにを重ねる。
2人の一歩も譲らないという想いが伝わってくるかのようだ。
12巡目に土井がリーチすると宮城も追っかけリーチ。数巡後水巻も追いつきリーチ。
土井

宮城

水巻

互いに当たり牌を止めあう形で流局、3人テンパイ。ここで上野は箱を割ってしまう。

南3局3本場 供託4000 ドラ
アガリに対して4900点のボーナス。トップ争いの2人はぜひゲットしたい。
宮城もここでアガってオーラスの親を迎えたいところ。
8巡目に水巻が仕掛けてタンヤオドラドラテンパイ。上野のリーチ宣言牌を捕らえて3900は4800。
供託もあわせて満貫級のアガリでついに土井を逆転し差をつける。

南4局 ドラ
水巻   56500
土井   48000
宮城・親 21600
上野   -6100

このまま終われば水巻はトータル100P近くとなり、2位の土井とも60P近くの差を付ける。
土井はオーラスまくり返せるのか、また宮城の連荘はあるのか。

水巻が1巡目からをポンして軽快に捌きに行く。
しかしイーシャンテンから進まず…、その間に土井がテンパイ。

一通の手変わりをみてここはダマ。すると親の宮城が追いつきリーチ。

なんとドラのを一発でツモってリーチ一発ツモチートイドラドラ6000オール!!!
一気に上位2人が狙える位置まで浮上する。

南4局2本場 ドラ
水巻   48700
土井   42000
宮城・親 41400
上野  -12100

1本場は宮城が水巻から仕掛けた中のみをアガって三つ巴の争いはさらに激化!
土井は1300・2600ツモか満貫出アガリとなるが、宮城にも600点差に迫られる。

7巡目に上野がリーチ。このリーチとリーチ棒が戦局にどのように影響するのか。

水巻、土井は早々と撤退。一方親の宮城の12巡目。
 ツモ

ここで宮城が選んだのは生牌の切り。
上野とは点数がかなり離れているので、ツモられようと放銃しようと3着。
ならば目一杯に受ける切りが良かったのではないか?
せっかく追い上げてきた親番でやや消極的過ぎる気がした。
結果は宮城がN*を掴んでリーチW南5200は5800放銃。

3回戦スコア
水巻 +48.7
土井 +22.0
宮城  -4.4
土井 -66.3

トータル
水巻  +89.1
土井  +27.2
宮城  +14.5
上野 -130.8

ここで前半戦3回戦が終わったところで30分ほどの小休憩。
軽く前半戦を振り返ってみよう。

ポイントリーダーの水巻。
1回戦はよもやの3着落ちと苦しい出だしになったが、連続トップで首位独走。
内容も十分で安定感も揺るぎない。
2位の土井。
まだまだ慌てるポイント差ではないが、3回戦は3万点差を水巻にまくられる形。
若干後味が悪かったか。
3位の宮城。
たまに疑問手もあるが、ここまでプロ3人相手に堂々と渡り合いプラススコアの好位置。
自分らしい打ちっぷりで後半戦のキーマンになりそうな予感。
4位の上野。
リーチ負けなど苦しい展開で、3回戦はまさかの箱ラス。
1人でマイナスを背負い込む形になったが、奇跡の大逆転を目指す。

4回戦

最高位戦Aリーガー上野龍一。
上野の麻雀は飄々としている。リーチや仕掛けに対してオリてるのかと思いきや回りに回って押し返してきたり、一緒に打っていてとても読みづらい。
上野は性格も飄々としている。決勝に向けてのコメントも『自分の麻雀を打つ』という水巻に対して、
『他人の麻雀を真似る』とおどけて答えていた。

上野龍一
今年度は最高位戦クラシックに続いての決勝進出。初タイトルに向けて胸の奥には熱い想いもあるだろう。
前半戦は大きく出遅れてしまったが、このままでは終われない。『予定通りの大逆転だったよ』と飄々と語る姿が最後に見られるのか。

起家から宮城・水巻・土井・上野の順。

東1局 ドラ
土井と宮城が相次いで仕掛けると、上野がリーチ。

を一発でツモってメンピン一発ツモ2000・4000。
ここまで全く出番の無かった上野、ついに反撃の狼煙を上げる。

東2局 ドラ
水巻がすんなりと手をまとめて6巡目にリーチ。

その時点の上野の手牌

123の三色になれば放銃かと見ていると、下の形に変化して追っかけリーチ。

待ちは前局と同じ、ドラも同じく
今回は一発とはならなかったがすぐにをツモって1300・2600。
上野、逆転優勝という果てしない高さの壁にむかって挑む。

東3局 ドラ
前局に先制リーチをかわされた水巻、さらに不運は続く。
7巡目テンパイの土井のタンピン三色、ダマの親満に突き刺さる。
 ロン

誰がうってもおかしくなかった牌だけに、水巻の連覇に逆風が吹き始めたような気がした。

南1局 ドラ
上野 42500
土井 36900
宮城 27400
水巻 13200
やや縦長の展開。
水巻が4巡目にをポンしてカンテンパイ。
 

ラス目で南家の水巻、とりあえず早く上がって自分の親を持ってくる感じか。
次巡をツモ切りでカンに待ち変え、ドラ引きの両面変化に期待。
すぐにツモ切りと裏目り、9巡目にをツモ切りでドラのカン待ちに待ち変え。

同巡ソーズ模様の上野がチーしてテンパイ。
 

上野の河にはまだソーズが余っておらず、出アガリもあり得るか。

11巡目に水巻はを持って来て加カン。リンシャンから持ってきたのは
水巻、上野に対して切りきれずにを切ってイーシャンテン戻し…。
同巡、上野ツモ切り。そして水巻がツモったのは!2度目のアガリ逃し。
水巻、14巡目にチーして待ち変えしフリテン解消。
   加カン

ここで親の宮城が勢い良くリーチ、さらに一発ツモ!
 ツモ
ドラ カンドラ 裏 カン裏

裏ドラはのらなかったものの、メンピン一発ツモドラドラで6000オール!一気にトップ目に立つ。
一方水巻は残り7200。1人マイナスとなり3人に大きく離される。
何かがずれ始めた、そんな感が否めない1局だった。

試合後、水巻にこの局のことを聞いてみた。
『最初の時点でカン待ちにしたほうが若干良かったかも…。ラス目だったので攻撃的に加カンしたこと、上野がほぼテンパイと読んだのでで回ったことは後悔していない』
と語っていた。 

ソーズが余ってない上野に対してきっちりとテンパイを読んで回るところは流石だと思う。
だが加カンしたのは上野が鳴いた後である。ドラのカンチャン待ちでカンはどうだったのか?
また他の2人はメンゼンである。水巻はリーチがかかっても放銃せずに回りきる自信があったとい言っていたが、裏ドラを増やす行為はどうだったのか?

水巻の麻雀の一番の魅力は優れたバランス感覚だと思う。
リーグ戦などで一緒に打っていても、その絶妙な押し引きに感心させられことがある。
そんな水巻だからこそ一番印象に残った局となったし、この決勝戦の間違いなくキーポイントとなる1局となった。
水巻渉

南3局
前局にチートイをツモって宮城をまくり再びトップ目に立った上野、しかし点差は700点。
大逆転にむけて連勝が必要な上野、果敢に仕掛ける。
一方親番が無くなった断ラスの水巻、タンヤオイーペイコーを上野から見逃し。
トータルラスの上野を後押しする。
しかし2人の願いは実らず、宮城がピンフツモで再逆転。勝負はオーラスへ。

南4局
宮城   43800
上野・親 43500
土井   29600
水巻    3100

宮城・上野の壮絶なトップ争い。
土井は上位からの直撃で2着以上か、手が安ければ宮城落としか。
水巻は宮城からの直撃狙い。

4人の思惑が渦巻くなか上野が好形のイーシャンテンとなるが、
ツモ切ったで宮城にW南2600放銃。

4回戦スコア
宮城 +46.4
上野 +20.9
土井 -10.4
水巻 -56.9

トータル
宮城  +60.9
水巻  +32.2
土井  +16.8
上野 -109.9

水巻への逆風が吹き荒れるなか、初トップでついにトータルトップに立った宮城。
しかしここからが決勝戦特有の重圧が圧し掛かってくる場面、あと2回のびのびと打つことが出来るか。
一方逆風に翻弄された水巻、王者への試練をはね返せるか。

5回戦

起家から上野・土井・宮城・水巻の順。

東1局 ドラ
 ツモ

東1局2本場 ドラ
 ツモ

親の上野が東パツに一通ツモドラの満貫、2本場にメンピン一発ツモイーペイコードラドラのハネ満と大爆発、6万点オーバーまで突き抜ける。
トータル的にはかなり追い込まれたが、最後まで自分の麻雀を貫き諦めない姿勢を見せる。

東1局3本場 ドラ
3人とも上野にうってラスにはなりたくない。
そんななか果敢に仕掛けたのは宮城、すると5巡目に水巻がリーチ!

リーチを受けて一発目の宮城
  ツモ

一発で高目放銃かとも思ったが、ここはを切ってテンパイ取らず。
さらにをチーして待ちで張り返す。

すぐに土井もテンパイ。

ダマに構えてを引きを切ってリーチ。宣言牌で宮城に2000放銃。
宮城の軽快な仕掛けが冴えた1局であった。

東2局3本場 供託1000 ドラ
親の土井が小刻みなアガリとテンパイで連荘して3本場。
6巡目に早くもチートイテンパイ。

この時点の捨て牌
土井
ツモ切り)
宮城
ツモ切り)
水巻
ツモ切り)
上野
ツモ切り)

自分の目からは3枚見えていて、宮城と上野はを持って無さそう。
親でドラも無いので切りリーチするかと思えたが土井はダマを選択。
その後宮城がと切ったのを見て9巡目にツモ切りリーチ。
この親のリーチに対して他の3人ともが役なしテンパイで粘るが、すぐに土井がツモ。
リーチツモチートイ裏裏で6000オールとなった。

土井は決勝戦の後にこの局を会心の局として挙げていた。
テンパイの時点でも自信はあったが、数巡でさらに信頼度がアップしたのでリーチしたと言う。
実は唯一ピンズの下の情報が無かった水巻が配牌から対子だったのだが…。
2着争いから抜け出した土井、トップ目上野を追う。

東2局にして8局経過、しかも親が2人とも6000オールツモ。
座っているだけで点棒が削られていく展開に、水巻・宮城ともに苦しい。
特に水巻は現在ラス目で残り4500。
『逆風はまだおさまらないのか!』そんな叫びが胸の奥から聞こえてくるようだ。
残り2半荘、早くも精神力との戦いとなった。

東2局5本場 ドラ
土井がをポン。宮城がチーしてさばきにいくと、すぐに土井がツモ。
  ツモ

白發ドラドラ4000は4500オール。ついに上野をまくって6万点のトップ目に!
一方水巻は箱下にまで追い込まれてしまう。
まだ東2局だがこのままはっきりと明暗が分かれてしまうのか。
それともこの後にさらなるドラマが待っているのか。

東3局 ドラ
やっとまわって来た親番、宮城がトイトイドラドラで仕掛けると上野がリーチ。
宮城
 
上野

しかしアガったのは土井!
 ロン

一通ドラ5200を上野から出アガリ。
土井、頂点に向けて一歩ずつ階段を登っていく。

南2局1本場 ドラ
東4局、南1局と自らかわし手をきっちりアガり、万全の態勢で親番を迎えた土井。
前局のピンフ三色のダマテンは空振ったが、この局も4巡目に早々テンパイ。
 打

のシャンポンには受けず、待ちのダマとする。
次巡土井がポンの声。
ここはをポンして切ってドラの振り変わり待ちか。
なるほどトップ目だけにリーチはかけず、味わい深い一手だな。
しかし発声したはずの土井が固まっている…。
なんと土井がポンと発声したのは暗刻のだった!ベテラン土井の信じられないミス。
この後土井はを切った後にをツモり切りでテンパイするが、
宮城・上野と相次いでリーチを受けてあえなく撤退。
結果は宮城から上野に1300横移動と大事には至らなかったが、絶好調土井のまさかのミス。
この半荘は長丁場となり開始からすでに3時間近く経過、集中力が途切れてしまったのか?
このミスが土井の心にどんな影響を及ぼすのか。土井自身も精神力との戦いとなる。

南3局1本場 ドラ
前局に宮城が南ドラドラテンパネの2600オールをツモって3着争いから抜け出すと、
この局は水巻がメンホンイーペイコーをトップ目の土井から直撃し抜き返す。
 ロン

この手牌、手なりで打っていると下の形になっている。

水巻が執念で作り上げた勝負手であった。

南4局 ドラ
土井   64100
上野   38500
水巻・親  9400
宮城    8000
注目は水巻・宮城のラス争い。
水巻は、親だけに点差は離れているが展開次第では更なる加点で上を目指す。
一方宮城は、打倒土井の一番手になるためにも3着が欲しい。
トップ目の土井は、トータルスコア的に宮城ラスの並びのほうが自分に有利か。

宮城が仕掛けて3着を目指すが、土井が上野からピンフ三色3900をアガって終了。
 ロン

実は土井のテンパイ打牌は
普段なら当然の一打だがここは水巻・宮城の並びを変えたくないところ。
を切ってピンフのみにしたほうが良かったのではないか?
この一打は現王者・水巻マークという意味なのか、それともミスの動揺からきたものなのか。
勝負は最終戦へと進んでいく…。

5回戦スコア
土井 +68.0
上野 +14.6
水巻 -30.6
宮城 -52.0

トータル
土井 +84.8
宮城  +8.9
水巻  +1.6
上野 -95.3

6回戦

土井の圧倒的優位は揺るがない。
一つ気になる点があるとすれば5回戦のミスが心にどんな影響を与えたかだが、
百戦錬磨の土井ならば経験でものともしないか。
宮城・水巻は、土井とトップラス&2万点差、トップ3着なら4万点差。
厳しい条件となったが、特にラス親を引いた宮城は最後までチャンスあり。
上野は、優勝はほぼ不可能。3位を狙うか、自分らしい麻雀を貫くか。

起家から、上野・水巻・土井・宮城の順。

東1局 ドラ
土井、水巻と仕掛けたところで上野がリーチ。

ほどなくをツモって裏をのせ、メンピンツモ裏2600オール。
水巻・宮城にすればどうせトップ条件なだけに、
上野が点棒を持つのは並びが作りやすくなるので悪くなしと言ったところか。

東1局2本場 供託1000 ドラ
土井がドラのをポンすると、すぐに宮城がリーチをかぶせる。
土井
  

宮城

すぐに親の上野も追っかけリーチ!宮城が掴んだのは
『ロン』『ロン』重なる二つの声…。頭ハネで親の上野のアガリ。
 ロン

一発に裏も付いて、メンタン一発裏12000は12600。
宮城にしてみれば土井に点棒を与える最悪の事態は免れた。
しかし手痛い放銃となった。

東2局 ドラ
水巻1回目の親番。
トップ目上野との点差を考えると、少しでも点数を稼ぎたいところ。
しかし宮城が仕掛けてさばきにくる。
終盤水巻も形テンを取るが宮城の当たり牌のを掴む。…しかし宮城スルー。
結局すぐに宮城がをツモって1000・2000となるも、
宮城の優勝を諦めないという執念が伝わってくる1局だった。
   ツモ

東3局
土井に大物手を親かぶりさせたい、しかし長引いて親の連荘は避けたい。
水巻・宮城両者の想いが交錯する。
そのようななか、土井がW東4800を宮城からアガり、一歩ずつ自分の城を安泰にしていく。

東4局3本場 供託1000 ドラ
水巻が10巡目に渾身のリーチ。その手牌は、…ツモり四暗刻!!!
ざわざわざわ!

リーチの時点で共に一枚切れ。
この手をツモればトータルで一気に土井に並び、連覇も目の前に見えてくる。
逆転を期待しながら興奮を押し殺す応援のギャラリー達を背に、水巻は淡々と摸打を繰り返す。
…ツモれない。

水巻最後のツモも空振り、ギャラリーの興奮も冷めたかと思えた瞬間。
土井が水巻の打牌をチー、ハイテイが水巻に!!!
ざわざわざわざわざわ!

しかし、親の宮城も同巡にテンパイ。切ったが土井のホンイツにつかまる。
  ロン

結局水巻にハイテイが回ってくることはなく、奇跡の四暗刻は泡とついえた。

南1局 ドラ
上野・親 49800
土井   33900
水巻   26200
宮城   10100
ここまで土井は放銃のリスクは極力回避し、無理せずにアガれる時だけアガっている。
まさにベテランらしい巧みな打ち回しで崩れることは考えにくい。
まずは土井から直撃して点棒を削りたい水巻・宮城だが、なかなか難しい。

水巻が10巡目に下の手牌。

ここからを切ってテンパイ取らず。
そしてを引き入れ念願の高目リャンペイコーテンパイ、ダマテンに構える。
終盤上野からが出てタンピンリャンペイコー8000出アガリ。
土井からがベストだったが致し方なし。

南2局 ドラ
親の水巻がを仕掛けると上野がリーチ。
トータルラスの上野だが、最後まで諦めずに一つでも上の順位を目指す。

宮城からでメンピン三色8000出アガリ。

南3局の土井の親番。
土井は無理せず流局狙い。宮城のリーチも空振り勝負はオーラスへ。

南4局1本場 供託1000 ドラ
上野   48800
水巻   33200
土井   32900
宮城・親  4100
土井は、もちろんアガれば優勝。
水巻は、三倍満以上を土井から直撃と相当厳しい。
宮城は、とりあえず連荘し続けること。

土井が6巡目に仕掛けると、親の宮城がリーチ。

さすがに土井も親のリーチには逆らえずに撤退。
宮城がをツモって裏をのせリーチツモチートイ裏裏6000オール、土井を追撃する。

しかし反撃もここまで。
次局は、倍満ツモで3位となる上野がメンタンピン高目三色のフリテンリーチ。
親の宮城は結局テンパイせず流局。長い闘いは終わりを告げた。

6回戦スコア
上野 +44.7
水巻  +6.1
土井 -14.2 
宮城 -37.6
供託   1.0

最終トータルスコア
土井 +70.6
水巻  +7.7
宮城 -28.7
上野 -50.6
供託   1.0

第18期發王位 土井泰昭(日本プロ麻雀協会)

第18期發王位・土井泰昭
優勝のスピーチ
『8期に続いて、10年ぶりに18期發王位を獲れました。
8期の決勝の時よりもギャラリーが増えていて、麻雀界が発展しているのを感じました』

ベテランらしい手役重視の麻雀で、捨て牌や切り順にも独自のこだわりを感じた。
ポイントを持ってからの安定感も抜群で、受けの麻雀の丁寧さも光った。
実は土井はここ数年、競技麻雀にブランクがあったのだと言う。
今回の發王位の栄冠は、『ベテラン土井ここにあり』と再び麻雀界に知らしめたと言えるだろう。

-今日一日を終えて
『展開が良かったね。水巻が最初調子良かったが、対子手や一色手の変則手が多かった。
3半荘目にメンピンドラドラ裏裏をアガったのを見て、調子は本物だマークだなと。
前半を終えて60P差ぐらいだったから、1半荘に1着順ずつ詰めていけばいいかなと思った。
5回戦が大トップだったから余裕が出来た。』
-印象に残った局
『5回戦の東場の親の単騎のチートイツ。
テンパイした時にいい待ちと思ったが、数巡回して確信に変わったのでリーチした。』
-發王位というタイトル
『9期に負けて以来の決勝だった。
自分の初めて獲ったタイトルだから思い入れもあるし、もう一度獲りたいという念願が叶った。』

第2位 水巻渉(最高位戦日本プロ麻雀協会)

2位・水巻渉
『1回戦の結果は良くなかったが、前半3回戦の出来はすごく良かった。
後半は…。休憩で気が抜けちゃったのかな。』
前半3回戦はまさに完璧とも言える出来で、さすがだなと思わせる場面も度々あった。
後半は手も入らず苦しい展開となったが、堂々と充実した戦いぶりをみせた。

第3位 宮城拓二(一般)

3位・宮城拓二
『ギャラリーが多かったのに情けない麻雀になってしまった。一般予選からずっと勝ってきましたが、みんな強かったです。今日は6半荘の長丁場で疲れました。』
決勝での物怖じしない戦いぶりは、決勝進出がフロックでは無いことを証明した。
これから發王戦に出場しようという一般ファンのかたにも、大きな希望となったのではないか。

第4位 上野龍一(最高位戦日本プロ麻雀協会)

4位・上野龍一
『今日、来る前に下の自販機でペットボトルの水を買ったら、ラッキーなことに当たったんだよ。
だから今日はラッキーな一日となるか、そこで運を使っちゃったのかどっちかなと思ったの。
運を使っちゃたほうだったよ。』
いつものように飄々と語る上野の顔は、清清しいほど晴れ晴れとしていた。
それは最後まで諦めなかった者だけが見せられる顔なのかもしれない。

今年も發王位のタイトルは最高位戦の手から離れていってしまった。
しかし競技麻雀界の大先輩であり、かつて最高位戦でも一時代を築いた土井プロが栄冠に輝いたことは、一つの象徴であり救いであったのかもしれない。
とりあえず最高位戦選手の皆さん、来年は頑張りましょう!
オマエモナー…。

文責 平賀聡彦
  

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