コラム・観戦記

第3期最高位戦classic決勝戦観戦記その①

第3期最高位戦classic決勝戦観戦記       文:鈴木聡一郎

第3期最高位戦classic、決勝戦進出者。

 

佐藤 崇(最高位戦日本プロ麻雀協会)―無名
出本誠司(日本プロ麻雀協会)―無名
下出和洋(麻将連合)―無名
金子正輝(最高位戦日本プロ麻雀協会)―有名

 

すなわち、有名選手1名と無名選手3名という構図である。

さて、この有名と無名の区別、私は「競技麻雀にさほど興味のない麻雀愛好家がその名を知っているかどうか」であると考える。
具体的にいうなら・・・そうだ。例えば、私の父のような一介の麻雀愛好家がその名を知っているかどうかである。
父に尋ねた。
すぐに返答。
「金子正輝は知ってるけど、あとは知らないなあ。」
ここで線引き。

金子のみ有名選手。
ここでは、激励の意味を込めて、あえて金子以外の3名を無名選手と呼ばせていただこう。

有名になることがすべてであるなどとは思わない。
しかし、各競技麻雀団体は、概ね「麻雀の普及・地位向上」を理念などとして掲げている。
そういったものを掲げる以上、外部の人間に名を知られようとする努力が必要なのは言うまでもない。
「タイトルを獲れば人生が変わる」なんて冗談は言う気にもならないが、それでも無名選手にとって有名選手への足がかりになるのは、やはりタイトルの積み重ねであるということは間違いではないだろう。

ほしい。
とにかく目前にあるタイトルがほしい。
無名選手3人の気持ちが痛いほど胸に刺さる。

対するは、1人有名選手の金子。
金子には別のプレッシャー。
有名であるが故、勝つことへの義務。
勝たねばならぬ。
断じて負けるわけにはいかぬのだ。

■1日目

 

1日目の内容に入る前に、ルールを確認しておこう。
ルールは旧最高位戦ルール。
最高位戦は現在、一発ウラドラありを採用しているが、以前は一発ウラドラなしであった。最高位戦クラシックは、その一発ウラなしの旧最高位戦ルールを採用している。

旧最高位戦ルールの変わっているところといえば、第1に、いかなるときも流局時に手牌を公開する必要がないということが挙げられる。

すなわち、ノーテン罰 符がないということである。また、手牌の開示義務がないので、ノーテンリーチが流局してもチョンボにはならない(=戦略的なノーテンリーチが可能)。さら に、テンパイ宣言がないのであるから、オヤの連荘は、アガった場合のみとなる。

 

第2に、リーチ後のアンカンが認められない。

 

第3に、点数の切り上げがない。フリーなどでは子方の30符4翻(例:リーチピンフドラドラ)は8000点である。これは、本来7700点であるところ を、便宜上8000点に切り上げたものであるが、クラシックルールではこの切り上げがないので、30符4翻は子方で7700点(ツモの場合は2000・ 3900)、オヤで11600点(ツモの場合は3900オール)となる。
第4に、食い替え(例えば、をチーしたときの打牌が)が認められる。
なお、30000点持ち30000万点返しで、順位ウマは12000点・4000点である。

1回戦
起家から下出、出本、佐藤、金子の座順。

1回戦は、このルール下での思考などを記しながら進めることとする。少し文章が多くなるが、2回戦以後の闘牌をわかりやすくするためなので辛抱願いたい。

東1局 ドラ
オヤの下出が14巡目にテンパイを果たすと、安目ながら17巡目にツモアガリ。
 ツモ
700オールすなわち2100点の加点である。点差に換算すれば、他の3人と2800点差が開いたことになる。

 

この点差をどう捉えるのかはルール次第。

巷のフリー麻雀ならば、どうということはない点数であり、こんな点数は決め手になりえない。2800点などというアドバンテージは、ノーテン罰符で入れ替 わる3000点差や4000点差よりも小さなものであり、そんな点差ははっきりいってアドバンテージと呼べるものではない。

 

しかし、前述したように、クラシックルールでは、そのノーテン罰符がない。
これは何を意味するのかといえば、「アガらない限り加点できない」ということである。
そういうルール下での2800点差は、決して小さなものではなく、展開次第では十分決め手になりうる点差であるといえる。

これを証明するかのように、この半荘、下出はこの2800点差を守り切る形でトップを取る。

東2局2本場 ドラ
流局を2回挟んだ東2局、北家下出は以下の9巡目テンパイをヤミテンに構え、11巡目に金子から2000は2600の出アガリ。
 ロン

 

これをリーチしないの?と思われた方も多いはず。

下出もフリー麻雀なら当然リーチだろう。
このヤミテンも、やはりルールがそうさせているといえる。
ここでのリーチが与える影響を簡便的に考察してみよう。

 

①リーチをかけた場合には、基本的に全員が受け切るから、このような普通の両面待ちでは、出アガリはほぼ期待できなくなる。

 

②リーチをかけて流局した場合には、ノーテン罰符がないから純粋に1000点(リーチ棒供託)の失点。

 

③全員がしっかりと受け切ることを前提とすれば出アガリは期待できないから、アガれるならばほぼツモアガリということとなる。したがって、およそツモアガ リのみの点数アップを考えればよい。リーチをかけてツモアガった場合には1300・2600。これは、リーチをかけずにツモアガった場合の700・ 1300より2500点高くなっている。
すなわち、リーチのメリットが③であり、デメリットが①・②である。
したがって、③>①+②ならばリーチした方が得である。

 

しかしながら、アガらない限り加点のできないこのルールでは、アガれるときにアガっておかなければ当然厳しい。つまり、よほどのこと(オーラスなどで着を上げられるときなど)がない限り、「点数」よりもまず「アガリ」を優先すべきなのである。

そのように考えれば、①のデメリットは相当に大きいといえる。また、失点を取り返すチャンスが少ないのであるから、②の失点も避けたい。
したがって、これはヤミテンがマジョリティとなるであろう。

 

長くなったが、これが最高位戦クラシックルール下のおおまかな考え方であるといえるだろう。

では、こんなケースはどうだろうか?
南1局 ドラ
東家下出34700点
南家出本29300点
西家佐藤30600点
北家金子25400点
以上の点数状況で迎えた南1局、西家佐藤が10巡目にツモでテンパイを果たす。

 

 ツモ

 

さて、を切れば待ちのテンパイである。
リーチかヤミテンか。
佐藤はリーチを選択。
理由としては、何よりもまず「待ちの広さ」が挙げられるだろう。この3面張ならば、ツモに賭けるだけの価値があるというもの。
次に、打点アップ率。いくら「アガリ優先」とはいえ、決め手となるこの手材料で、ヤミテンの2000点というのではいけない。リーチをすればツモって5200または8000にすることができ、リーチをすることによる打点のアップ率も高く、決め手になりうる。
さらに、点数状況がリーチという選択を後押しする。これをリーチしない場合、ツモかを下出からアガらなければトップに立てないが、リーチをすれば安目ツモでもトップ目に立てる。
これほどの状況が揃えば、リーチという選択も頷ける。逆に言えば、これほどの条件が整わなければリーチという選択をしないのが、このルールにおけるマジョリティといえるだろう。

これに対するは、佐藤のリーチを受けての南家出本13巡目。

 

 ツモ

 

まず、佐藤の現物がないのでテンパイは取るとして、リーチかヤミテンか。
打点とアガリ牌の数という観点から見れば前述した下出の2000点と同じであり、巡目もそれより遅いことを加味すれば、当然のヤミテンだろう。ただし、下出の場合と異なるのは、「先行リーチが入っている」状況である点。
先行リーチ佐藤の河にはがないから、出本がヤミテンを選択したところで、どうせ他の2人からが放たれることはないのである。

 

これが何を意味するのかといえば、前述したリーチによる影響①で掲げた「出アガリが期待できなくなる」というデメリットが、出本のリーチの有無にかかわらず、既に発生しているということである。
そういう状況下であるならば、リーチの是非は、この手牌が先行リーチの佐藤に対して勝負になるかどうかという判断に委ねられる。

 

まず、ドラは1枚も見えて おらず、その所在はわからないものの、出アガリ3900点・ツモアガリ5200点ならば打点としては十分勝負する価値がある。さらに、佐藤の河には極端に ヤオチュー牌が多く、待ちも絞りきれないから、「○○を引いたらオリる」などといった判断も困難である。また、出本においても佐藤と同様に点数状況がリー チを後押ししている。

 

したがって、出本はリーチを選択。
その結果、クラシックルールではあまり見ることのない「2軒リーチ」となるが、今局は流局。

南2局1本場供託2000点 ドラ

 

さて、前局の流局直後の南2局である。
ここでは何を意識するのか。
2点ある。

 

①本場
②供託
である。
これはルールによらず、意識するところではあると思うが、クラシックルールではこの2つ比重が非常に高いところに注目したい。

 

①本場
言わずもがな1本場は300点である。そのような点数、フリー麻雀ではほとんど意識することはないだろう。なぜならば、一発ウラドラ赤ドラなどといった打 点を高める要素が多く入っており、自ずと打点が高くなることにより、打点に対する300点の比重が小さくなっているからである。
ただし、クラシックルールでは、一発もウラドラもなく、前述したようにアガるときはヤミテンが多い(=打点を高めるためのリーチが非常に少ない)から、自ずと打点が低くなる。そのため、打点に対する300点の比重が非常に高くなるのである。
したがって、本場があれば、いつもにも増して、貪欲に「アガリ」を取りにいくこととなる。

 

②供託
300点が大きいということは①で述べたので、1000点はとてつもなく大きく、「アガリ」を取りにいく傾向が①よりも強くなるといえるだろう。

このように、本場と供託は、アガリを取りにいく傾向を強くする要素であるから、その2つのどちらかがある局は、誰しもが先手を取りに走る。
ただし、逆に放銃した場合には相手に打点以上の加点を許すこととなるから、他家に先手を取られた場合には、いつも以上に守備を固める。

今局はその傾向が強く表れる。
まずは西家金子が2巡目、3巡目と連続でポン。
 ポン ポン
ドラがトイツなので、本場等は関係なく仕掛けたであろうが、この遠い仕掛けを後押ししたのはそれら2つの要素であろう。
とにかく金子が先手を取った。

とはいえ、2、3巡目に仕掛けただけであるから、ここでいきなりテンパイしていることは少なそうである。そのため、戦える者はひとまず向かっていく。
金子の仕掛けに向かっていったのはオヤの出本。

 

5巡目、8巡目に2つポンして、金子より先にテンパイを入れる。
 ポン ポン

この2つの仕掛けに対して、下出と佐藤は早々に受け気味に進めていく。

結果は、10巡目にようやくテンパイの入った金子が12巡目にあっさりツモって1000・2000は1100・2100。これに供託2000点を加えて6300点の収入となった。

 

 ポン ポン ツモ

 

金子はこれで4着から2着に浮上し、下出を追いかけ100点差まで迫るものの、2着のまま終了。
結局、700オールと2000は2600の2回しかアガらず、下出が1回戦のトップを死守する結果となった。何といってもこのようなシビアな凌ぎ合いがクラシックの醍醐味であるといえる。

1回戦終了時
下出 15.6
金子   7.5
佐藤△ 3.7
出本△19.4

2回戦
起家から順に金子、佐藤、下出、出本の座順。

2回戦は、金子・佐藤のアガリ合い。これに下出が冷静に対処し、出本が放銃役という半荘となる。

東1局 ドラ
 チー ツモ
出本が終盤にホンイツのテンパイからチンイツのテンパイへ振替えるべく、1枚切れのを打ち出すと、金子がロン。
 ロン
この9600で、出本は早くもラスの可能性が高まった。

東1局1本場 ドラ
オヤの金子が13巡目リーチで、早くもこの半荘を決めにいく。

ドラが入って意気揚々とリーチにいった金子であったが、実はこの3面張がリーチ時点ですでにヤマには1枚も残っていない。いわゆる純カラである。
純カラなので当然アガれず、最後のツモで金子がを置くと、強烈なカウンターパンチ。
 ロン
実は金子より2巡早くテンパイしていた佐藤が、一撃でトップを逆転する5200は5500。

東2局 ドラ
南家下出が手広いイーシャンテンにを引いて11巡目テンパイ。
 ツモ 打
打点的にはリーチでもいいが、冷静にヤミテンを選択。
これが下出の強さである。
いかなるときも、打点効率だけで安易なリーチを選択しない。
だれだけ離されようとも、しっかりとヤミテンでアガリを取りにいく。
しかも、今局においては、金子が早そうな捨て牌。
それに対応するためのヤミテンでもあったのだろう。
結果は、下出が対応するまでもなく、同巡に金子のツモアガリ。
 ツモ
佐藤にオヤカブリをさせての2000・4000。これで再びトップに返り咲き。

東4局2本場 ドラ
ラス目のオヤ出本、15巡目に役アリテンパイが組めるを引く。
 ツモ
ここから1枚切れのを打つと、2巡前にオタ風を仕掛けた金子がロン。
 ポン ロン
ほぼトップを決める5200は5800。
出本は、終盤に打ち出す牌がアタリ牌になるケースが多い。おそらくこれまでも、最後まで打点を作り、最後までアガリにいって決勝に残ったのだと思うが、他3人と比べて終盤の打牌が少々雑な印象を受ける。今局にしても、残り1巡ということを加味すれば、切りでいいようにも見える。

南2局 ドラ
東家佐藤32500
南家下出28200
西家出本12400

北家金子46900
金子のダントツである。南2局を迎えてこの状況ならば、トップはほぼ確定。強いて挙げれば、2着目の佐藤のオヤ番である今局がヤマ場といえるだろうか。
だが、なんと佐藤が6巡目に12000のポンテン。
 ポン
その後単騎を変えているうちに、加カンを経た後、をツモって待ちへ。
 加カン
力強くをツモって4000オール。なんとこれで金子を逆転し、再びトップへ。

残局は、2着が遠のいた下出の冷静なヤミテンと流局で、金子とのシーソーゲームは佐藤に軍配が上がった。

2回戦結果
佐藤 25.7
金子 16.1
下出△ 4.5
出本△37.3

2回戦終了時トータル
金子 23.6
佐藤 22.0
下出 11.1
出本△56.7

3回戦
起家から順に佐藤、下出、出本、金子の座順。

南2局1本場供託1000点 ドラ
下出と佐藤が1回ずつアガリ、佐藤のオヤリーチが流局しての南2局。点数状況は以下の通り。
東家下出35200
南家出本27700
西家金子26100
北家佐藤30000

 

ここで、金子7巡目の打牌が曲がる。

 

えっ??
は佐藤が1巡目に1枚切っており、ドラ表示牌にも1枚。は初牌である。
いや、わかる。点数的にはリーチであることぐらい誰の目にも明白である。リーチをすれば、をツモっても一躍トップ目なのだから。
ただし、1本場と供託1000点があり、これは是非とも取りたい。ならば、で出アガリできる以上、これはヤミテンがよいのではなかろうか。
リーチならばドラまたぎのが打たれることはない。しかし、この巡目のヤミテンならば、の出アガリは十分期待できる。しかも出アガれば8000であり、打点的にも申し分ない。
すなわち、このリーチは、打点意外には、ヤミテンならばアガれるかもしれなかったの出アガリを単に消すリーチであると換言できる。
結果は流局。
明白な答えなど、もちろん用意できないが、このリーチはどうなのだろうか。
このリーチに疑問を抱くのは、後に決定する優勝者がこのようなリーチをせずに勝ち切ったからなのだろうか。

南4局3本場2000点供託 ドラ
1度の流局を挟んで迎えたオーラス。

 

東家金子25100
南家佐藤30000
西家下出35200
北家出本27700
下出以外は、1着上を目指していくのが現実的なところだろうか。しかし、佐藤や出本は、下位の者に先手を取られれば、オリていくことになるだろう。

まずはオヤの金子が10巡目に をポンして打。その後2度のツモ切りを経て以下の捨て牌。
東家金子捨て牌(※↓はツモ切り)

 

対するは13巡目の佐藤。
 ツモ

 

金子は2度のツモ切り。その2巡は佐藤も安全牌を打っていた。佐藤が守備的になるのは当然である。
「下位の者に先手を取られれば」と上記したが、特に佐藤は、金子だけには打ってはならない。放銃の瞬間に2着順落ちてしまうのだから。
その2巡の間に、イーシャンテンの北家出本がと押している。金子に対する安全牌がしかなかった佐藤であったが、これではスジとなり、通る確率は高いだろう。というより、金子がテンパイしている可能性自体がそもそも低いだろう。
佐藤はここで、打を選択する。
しかしこれが最悪。
 ポン ロン

 

金子に打ち上げ、1500は2400で佐藤はラスまで落ちてしまう。
ここは、もうではなかろうか。
もうアガリの可能性は低く、仮にアガれたところで下出を逆転する打点を作るのは難しい。ならばしっかりと受け切る場面であろう。
唯一の救いといえば、放銃したのがオヤであることぐらいであろうか。これでもう1局できる。
佐藤本人に聞いたわけではないが、もうこのときは内心「ドキドキ」だろう。
私ならば少なくともドキドキしている。
「あー、やっちゃった。最悪。もう何やってんだよ、自分。あと1局で少なくとも1着順は上げないと。上げないと。上げないと・・・うわー、最悪だな。ほんと何やってんだか・・・」
負のスパイラル無限地獄。私ならば。

 

南4局4本場 ドラ

東家金子29500
南家佐藤27600
西家下出35200
北家出本27700

 

せっかくなので、引き続き佐藤の心の声を実況。
配牌

「よし!翻牌アンコ!!他はバラバラだけど、なんとかアガれそう!いやっほーーーい♪日頃の行いが良いからねっ!」(注※筆者の想像です)
5巡目
 ツモ
「よし、両面になった!打っと。アガれるかも~、よかった~。」(※あくまで筆者の想像です)
7巡目
下出「ロン」
 ロン

 

「え、えええーーー!そんなー。早くね?あっ、でも打ったの出本さんだー!!ラッキー、ツイてるー♪3着で止まったよ!いやー、日頃の行い~♪」(※再度確認しますが、筆者の想像です)

こうして、佐藤は無事(?)3着になったのだった。
一見、冗談のように描いたが、このようにミスをカバーする「ツイてる場面」が、たまたま決勝で巡ってきてしまうようなときは、優勝しやすいように思う。

 

それも考えてみれば当然で、最善の選択をしたとしてもそれが結果に直結しないのが麻雀の本質であるから、良い結果がたまたま多く出た者が優勝しやすいのは必然であるといえる。
逆に、本決勝の出本のように、悪い結果がたまたま多く出てしまうようなときは、短期戦で優勝するのは難しい。これまた当たり前のようなことなのだが。
何やら「最後は運だのみ」というような話になってしまったが、麻雀の本質は正にこれであり、論じておく必要性を感じたので、卑見を述べさせていただいた。

3回戦結果
下出 19.7
金子  3.5
佐藤△ 6.4
出本△16.8

3回戦終了時トータル
下出 30.8
金子 27.1
佐藤 15.6
出本△73.5

4回戦
起家から順に金子、下出、佐藤、出本の座順。

東1局 ドラ
北家出本に初めてチャンス手らしいチャンス手が舞い降りる。
配牌

ドラがトイツでそこそこ形ができている。4巡目にドラをツモると、あとは真っ直ぐ。15巡目にテンパイを果たす。

は4枚切れながら、ヤマには残っていそうである。現に、15巡目というド終盤に4枚ともヤマに残っていたわけだが、問題はここから。
出本はこれをリーチとした。
えっ??
わからない。
何故リーチ??
確かには優秀な待ちだ。
しかし、イコール「リーチして出る待ち」とはならない。特に普通の両面など、この巡目ならば99.9%出ない。それは出本も理解している。

 

ならば、ツモアガった場合、リーチ時8000、ヤミテン時7900と打点はほぼ変わらないわけであるから、ヤミテンでいいのではないだろうか。100点のために1000点を出すのと同義であるのだから。しかも、リーチをしてしまうと、万が一をツモったときにカンできない。
このようなデメリットを優先し、私ならばリーチをしない。
だが、出本はリーチを選択した。
この理由はおそらく、初決勝でいきなり3連続ラスをひいたことからくる「焦り」。そりゃそうだ。そんな状況、誰しも焦る。
ただし、良く言えば、「決意」とも捉えられる。いわゆる、「腹を括った」というやつである。
結果は、「焦りのリーチが流局」したのではなく、「決意のリーチが実る」。

 

残り2回しかないツモ番のうち、後者で見事にを引き当て2000・4000。
 ツモ

 

この決勝で出本が初めてトップ目に立つ。
すると、ここから出本が大爆発。

南2局3本場 ドラ
東家下出26900
南家佐藤27100
西家出本35900
北家金子30100

 

南1局まで失点を最小限に抑えると、南2局3本場でトップを決定づける1000・2000は1300・2300。
 ポン ツモ

南3局 ドラ
続く南3局では、連荘を狙って仕掛けたオヤ佐藤の打牌を捕えて、ダメ押しの8000。
 ロン
ここへきて、ようやくエンジンがかかり始めた様子の出本。5万点弱の大トップを奪取してマイナスを大きく返済した。

4回戦結果
出本 30.8
金子  2.8
下出△ 9.4
佐藤△24.2

トータル
金子 29.9
下出 21.4
佐藤△ 8.6
出本△42.7

5回戦
起家から順に出本、金子、佐藤、下出の座順。

小場で進んだ5回戦は、オーラスを迎えて大接戦となった。
南4局3本場 ドラ
東家下出30100
南家出本31200
西家金子28700
北家佐藤30000

ここで、今までの不運の分と言わんばかりに出本にイーシャンテンの配牌。

 

3巡目、ダイレクトにを引き入れ、テンパイ。

最後は出本がトップか。
しかし、このに時間がかかる。

 

そうこうしている間に金子が7巡目に追いつく。

2人のめくり合い。
佐藤・下出の2人は静観している。
決着は16巡目。
「おそすぎるよー。」
そんな出本の心の声とともに、が引き寄せられて1日目はゲームセット。
 ツモ

5回戦結果
出本 15.6
佐藤  3.3
下出△ 4.9
金子△14.0

トータル
下出  16.5
金子  15.9
佐藤 △  5.3
出本 △27.1

一時はマイナス80ポイント付近までいき、早くも脱落かと思われた出本が最後の2連勝で、マイナスを27にまで減らし、2日目に望みを繋いだ。
また、微差ではあるものの、首位で折り返しの下出は終始安定感のある麻雀を見せてくれた。
その下出に金子・佐藤が食い下がる。

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