コラム・観戦記

第34期最高位決定戦4日目 その②

【15回戦】

荘家 金子
南家 飯田
西家 石橋
北家 尾崎

完全に復活の狼煙をあげた大魔神は、次から次へと舞い降りる好手を迎え入れ、攻撃の手を緩めることなく他家を圧倒し続けていた。

時折合い重なる勝負手にも正面からぶつかる。不意に訪れる放銃の場面にも、ポーカーフェースを保ったまま一歩も退かない。

実際は背の小さな初老の飯田が、越えるに難い大きな壁となり、他者の栄冠への道を阻み続けてゆく。

【東1局・ドラ

1半荘目はオーラスに美しく捲りあげたが、2半荘目は前に出れる場面も少なく、堪えた挙句にラスを押しつけられた金子。

15回戦は起親の1局目から先手取りに成功する。

《金子・9巡目リーチ》

ここに軽めに押していた石橋、15巡目に追いかけてリーチ。

《石橋》

ドラのが対子なら十分に被せれると意気揚々だった石橋だが、最後のツモで渋とく和了を手にしたのは金子。

をツモると噛み締めるように和了の瞬間を味わっていた。

1本場も4巡目に仕掛けて積極的に前に出るも三者に絞られ、苦しい局面だったが最終ツモ前のようやく聴牌。息を荒立てたあとは胸を撫で下ろし、2本場に繋げるも、尾崎のリーチに飯田が現張りで対抗、4500は5100の横移動で親が終わる。

自分の出番がきたと思うと、思うように和了に繋がらないまま手綱を奪われる今日の金子。

この半荘はリードで始まるも、まだ、先が長すぎる。

【東2局・ドラ

今回も放銃スタートとなった飯田が、またも親番は配牌に恵まれて3巡目に聴牌。

《飯田》

 ツモ

ここで七対子の聴牌取り、単騎に受けた飯田。

しかし飯田、まだ巡目が早いと次巡に尾崎が切った当たり牌のを驚きのスルー。

5巡目の暗刻となるに立ち止まった飯田。暫く悩むもツモ切り、しかし次巡のツモはまたも暗刻となる、8巡目に待ちはのままツモ切りリーチと出た。

さらにをツモと、四暗刻聴牌を逃していた可能性が若干否めない中、石橋からドラのを強打されリーチを被されてしまう。

《石橋・10巡目リーチ》

ツモ

高めのを掴まされた飯田、ここは連続放銃となる8000を吐き出しての親落ち。裏目ならまだしも、和了を見逃しての満貫放銃は、さすがの大魔神にも堪えたかのように見えた。

東3局は飯田がドラポンからのバックで仕掛けるも1人聴牌まで。

東4局は二副露の混一を金子が鮮やかに決めて2000・4000。

金子が、失速してきた飯田を押さえこんで、勢いをつけて南場に突入するのだが、今日の飯田の壁は、この時点では想像し難い、はるかな高さを保っていたのだった。

【南1局・ドラ

順調にツモを伸ばした金子、南場の親でも先制リーチと出る。

《金子・8巡目リーチ》

 ツモリーチ

を両面で仕掛けたのは、南家の大魔神だった。数巡後、ドラのには目もくれずにツモ切りを延々繰り返す飯田。
14巡目の時点で、2人の河が温くなってゆく。

《金子・捨て牌》

《飯田・捨て牌》

仮に飯田のこの聴牌がマンズの混一の満貫なら、自ずと浮かぶ飯田の待ち牌は暗刻の

結局この流局を迎えて、飯田が少し首を傾げた。

《飯田》

飯田は、を仕掛けなかったとすると、の順に引きツモアガリ。

《飯田・仮想牌姿》

ツモ

リーチを打っていたら倍満ツモ。とは言ってもかなりの人が、親リーチを受けての、チーテンの現張り三面張の満貫に受けるだろう。この倍満は、実らないことも多いに違いない。

―流局し、開けた飯田の手牌を覗き込むと、無邪気な感嘆の声をあげた金子。

金子にとって飯田は、ライバルで、盟友で、尊敬できる同志なのだ。勝ち気で、誇り高い金子は多くを語らないが、誰よりも飯田正人を認めているのかもしれなかった。

1本場は、さらに飯田が今度は親を流しにかかる。1000は1300を仕掛けで一蹴すると、飯田の親が回ってきた。

【南2局・

17000点のラス目で迎えた飯田は、配牌をそっと並べるとじっと眺めて、静かに闘牌を始めた。

《飯田・6巡目》

同巡にを叩いて一向聴とすると、先にを鳴けて聴牌。

《飯田・8巡目》

チー

ここは尾崎が蹴りあげるべく、10巡目にリーチで仕掛けに被せる。

《尾崎》

今日は全部押しての捲り合いの場面が多い飯田。勝算こそ高くはないが、打点とラス目の親番という後がない状況が、飯田の背中を後押しする。

尾崎が15巡目に、顔を引きつらせながら河に放った牌は、だった。

乗り切れてない感触を感じるかのように、うんうんと頷きながら12000点を支払った尾崎。

大魔神の逆襲は、まだ続く。

【南2局1本場・ドラ

この局も高打点が狙えそうな飯田の手牌。力を緩めずに前進する。

《飯田・配牌》

 打

《ツモ》

《飯田・8巡目》

8巡目、石橋の打をポン。ツモると三暗刻、の大物手の聴牌である。

このを切った南家の石橋は、ピンズの混一の一向聴、すぐ2巡後にダブをポンすると、勝負手で堂々と聴牌。

《石橋・10巡目》

さすがに2人とも腹を据えての捲り合いになる気配に、ギャラリーが固唾を飲んで見守る雰囲気も、決着は2巡後。

聴牌後にを暗カンしていた大魔神が、次巡のツモで鮮やかにアガリきった。普段より高くからツモ牌を叩き付けた飯田。

6000は6100オール。一気にトップ目の金子を上回る還暦の大魔神に、観衆一同は音のないざわめきで賞讃を浴びせる。

【南2局2本場・ドラ

波に乗って好機をどんどんモノにしていく飯田に一矢報いるチャンスは、終わってみたらもうこの局しかなかったのだった。

《石橋・8巡目》

金子が暫く悩みながらの仕掛けのお陰で、そのチャンスが回ってきたのは石橋。

《金子・9巡目》

ドラのを暗刻にして、石橋が形にするべく必死にツモを続ける。

《石橋・12巡目》

 ツモ

場に2枚切れのカンを先に固定する石橋。2枚、1枚、1枚、3枚、0枚とあるが、受けのメリットはどうだろうか。この時点では2枚切れではドラ。は生牌だが3枚を捨てるリスクとの引き換えである。全体的にはソーズがかなりの安さだ。

15巡目のツモでようやく聴牌とした石橋。当然リーチに出ると、また初日のあのアガリを逃した場面が、再び悪夢のように訪れた。

一発目のツモは、だった。カン受けを残して待ちにできていれば、リーチ即ツモドラ3の跳満。

また2分の1の選択に当選せずの和了逃しである。

初日に逃したでのツモは、和了逃した感がかなりあったが、今回に関しては一向聴の時点でカン受けに固定しているため、少し違う。

だが、単純にアガリ手順があって、それを辿るのがそこまで困難でない感じも否定できない。

12巡目のをツモ切り安いソーズをリャンカンのままに受け、さらに引きの聴牌時にが生牌、単純に枚数でも1枚切れのカンにする人もいるはずである。ドラ暗刻でどうしてもアガリたいこの場面、場に2枚切れのカンを先に固定するのは、やはり手狭いと感じるからであろう。

再び訪れたデジャヴのような場面に、石橋はうなだれながら嘆いた。2枚のは王牌に沈んでアガリには繋がらない。

これで残す2局は、飯田と金子のデッドヒートとなる。

南3局は、4巡目に七対子のみのヤミテンの金子が、飯田から直撃。1600は2500。目まぐるしい展開を繰り広げた15回戦は、いよいよオーラスに突入する。

【南4局・ドラ

東家 尾崎   4800
南家 金子 46000
西家 飯田 44800
北家 石橋 24400

2巡目にオタ風のを一鳴きする金子。

《金子》

 ポン

この直後、急所のを埋めた親の尾崎は、下家にいる金子にソウズを絞りながら手を進める。

《尾崎・4巡目》

 ツモ

さらに飯田も前に出る。生牌のを振りかぶって河に投げる。

《飯田・5巡目》

ツモ

このを金子がポンして聴牌とすると、親の尾崎も聴牌を入れてリーチ。

《金子》

《尾崎》

尾崎は自分の当たり牌でないことだけを確認すると、どうだと言わんばかりに河に捨てて、一心に和了を求めていた。

金子は肩を揺らして大きく呼吸しながらツモ切りで押し続ける、しかしまた金子のところにも和了は訪れなかった。

最終ツモを前に金子がで撤退。1人聴牌で流局を迎えると、尾崎は首を大きく傾けて、茫然とした視線で卓上を見つめた。

【南4局1本場・ドラ

親の尾崎は、ドラのを7巡目に切り離すと、ソウズに寄せ切る。

《尾崎》

ここに金子は生牌のを叩き切って応戦。

《金子》

 ツモ

少し大きめに一息ついた大魔神。6巡目に七対子の聴牌が入っていた。

9巡目の金子の打に合わせうちしていたら、もしくは11巡目にではなくを切っていたら捕まることのなかった、待ちをコロコロと変えていた大魔神の手元に納まったあと、聴牌の入った尾崎から飛び出してしまう。

《尾崎・13巡目》

 ツモ

1600は1900。金子を紙一重で捲り切った飯田は、また1つ大きく一息吐くと、ボードを眺めてもう一息ついた。

風邪気味で何か歯車のようなものが噛み合わない尾崎は、首を頻繁に傾げながらの苦しい闘牌が続く。

これで最高位への道程は残り5半荘となった。

そして、大魔神の起こす荒波を止めるべく、最終日への橋渡しとなる4節目は、最終戦へ突入する。

【15回戦終了】

飯田 46700 +46.7
金子 45000 +15.0
石橋 23400 △16.6
尾崎   4900 △55.1

【15回戦終了時合計】

金子 +  83.6
飯田 +  68.3
尾崎 △  49.8
石橋 △103.1

【16回戦】

荘家 石橋
南家 金子
西家 飯田
北家 尾崎

ここまでは、大魔神が40000点超の2着に2連勝、金子が無理をせずプラスポイントをキープと、ベテランの最高位戦の2枚看板が、展開良く進めていた。

2節目まで大きくリードしていた尾崎の貯金は今日の初戦でなくなり、石橋は未だにプラス圏内が遠く、時間だけが短くなってゆくのに一層焦っているようだった。

0に戻ったポイントを増やすべくの攻撃に徹した尾崎は、16回戦も諦めずに攻め続ける。

【東1局・ドラ

5巡目に早々と聴牌を入れた尾崎。

《尾崎》

役あり聴牌維持したまま、闇に構えて手変わりを待つ。

9巡目のツモで両面になったところで、先制リーチと出た。

親の石橋、この時点で一向聴だったが、危険牌をつかむことなく14巡目、ツモで聴牌。

《石橋》

 ツモ

小考すると、現物の切りののシャンポンには受けずに、山にいそうな単騎に受けて、こちらも現物の切りリーチ。

当然、受けの形も、リーチをするか否かも賛否両論になりそうな場面である。

石橋は、アガれると思えばリーチを打つというのを割と徹底している打ち手である。
決定戦でも何度か、他者が見たら少し疑問が残りそうな場面でも、一貫してリーチを打っていた。

しかし自分へのプラスの結果にはなかなか繋がらないままだった石橋。

そしてこの局も、疑問が残るまま終局する。

リーチを打った3巡後、石橋が怖々ツモ切ったのは、ドラのだった。

これは放銃や仕掛けなどのお咎めはなく済んだのだが、石橋、その次巡にもをツモ切ることになってしまう。

ここで待ちなら即ツモ、リーチさえしていなければ、待ちにしてリーチをしてのキャッチができそうだったとあれば、本人もかなり揺れたのが想像に容易い。

続く1本場も聴牌は取れるも流局。粘った東1局だったが、2本場で金子のリーチに2000は2600を放銃。

残り5半荘の短さを一番気にしていた石橋だったが、この半荘も厳しい立ち上がりとなってしまった。

【東2局・ドラ

手の纏まりこそ良くなってきた石橋。親落ちはしたがまだ攻めたいところ。さらに尾崎も仕上がりは早そうだった。

《石橋・4巡目》

《尾崎・6巡目》

しかし先にリーチに出たのは南家・飯田。

《飯田・7巡目リーチ》

《飯田・捨て牌》

河がかなり強めなのも相成って、尾崎はツモを切りそのまま応戦開始と出るも、飯田、好調の波に乗り切ったまま一発ツモの裏1で2000・4000。

印象のせいか、はたまたリーチの数のせいなのかもわからないが、大魔神はリーチを一発でツモるイメージがある。

今決定戦に於いては、あまり見られなかった飯田の即ツモだったが、そういえば鳴きで一発が流れていたケースがあった。1回戦の2局目だ。

あれから、あまり飯田のターンが少ない。1回戦では3回の聴牌を次巡にツモっているが、すべてリーチはかけていない。

それから2日目、3日目は何とかまとめたものの、苦戦を強いられていた。

ここで完全に飯田らしさを取り戻した4日目。大魔神の城を倒すには、相当苦労しそうな気配が、密かに漂い始めていた。

【東3局・ドラ

相変わらず手が落ちない親・飯田。

《飯田・6巡目》

がここから聴牌がなかなか入らずにいると、今回は石橋から先制リーチ。

《石橋・11巡目リーチ》

《石橋・捨て牌》

飯田は14巡目のツモに不快な様子で牌を見やると、余剰牌のと並べて違和感を感じてかオリに出る。ドラのは金子の河で2枚被って捨てられているが、石橋のリーチは七対子が濃く匂う。

14巡目、現物がなくなった尾崎。結局1枚切れで対子のをパチンと離すと3200の放銃となってしまう。

現在のポイントは△50。この半荘を勝たなければ、最終日が頭からきつくなる。

尾崎は手詰まりの放銃でへこんだりもせず、体制を整えるための攻撃へと更に傾倒して、次局の親番に、最高位載冠への想いを懸けた。

【東4局・ドラ

メンツは揃ってると、第一打からダブを選び捨てた親の尾崎。

《尾崎・配牌》

 打

2巡目、3巡目と連続でドラを引いて、さらに8巡目に4枚目のドラ引き。

《尾崎・8巡目》

 ツモ

しかしなかなか聴牌が入らず、苛々が募る尾崎。紅く染まった頬は血の気が引いたように白くなっていった。

そしてようやくの14巡目、ツモで聴牌。リーチと出た。

《尾崎》

《尾崎・捨て牌》

ここに金子が一発目に無筋のを強打。

《金子》

 ツモ

この様子を見た飯田、メンホンチートイの一向聴だったが、リーチを受けて引き、現物のを切る。

《飯田》

 ツモ

するとこのを石橋がポン。

《石橋》

 ポン

リーチのすぐはやる気だった金子だったが、石橋の仕掛けも入ってオリに回る。

結局、この局は流局を迎える。そして2人のベテランは、尾崎の手牌を見ると息を飲んだ。

麻雀では、どんなに想いを馳せても、実ることは少ない。最高位への切望も、和了への慕情も、明確な理由で実を結ぶわけではない。

運命は誰も知る由はない。ただ、時だけが刻々と過ぎる、そして何かが命運を分けて行く。

【東4局2本場・ドラ

1本場、続くこのあとの3本場と、尾崎の親番は4局続いたが、唯一和了に結び付いたのはこの局。

《尾崎・10巡目》

この一向聴から引きでの聴牌が12巡目。
引きとドラ表カンチャン待ちという悪さも考えてのヤミテンに構えると、15巡目にツモの2000は2200オールでトップ目に立った。

裏ドラがとちょっと後味は悪かったが、和了に辿り着いた感触は悪くない。

今回の決定戦。前半戦は、まさしく尾崎の独壇場と言っても過言ではなかった。徐々に三者の包囲網に辛辣を浴びせられるが、それでも耐え凌いできた。

しかし気付けば200ポイントのマイナスを引かされた尾崎。もう余裕も、後もないが、それでも静かに再度訪れる筈の自分のターンを待ち続ける。

【南1局4本場・ドラ

4本の積み棒で流れて回ってきたこの日最後の南場。最終日に向けての決死の攻防が繰り広げられる。

《尾崎・5巡目》

 チー

北家の尾崎は、高打点を盾に前に出る。親の石橋は上家を制するように自分も仕掛けて前進。

《石橋・10巡目》

 ポン

ソーズが比較的安いことを考慮して、打としてのソーズ引きでの聴牌取りに決め打ち。
次巡のツモ白を加カン、新ドラのを乗せると、一歩も引かない様子を全面に押し出した。

《尾崎・13巡目》

としていたところに石橋のカン。新ドラのを引き入れて満貫の聴牌を果たす。
2巡後にを引き寄せて2000・4000の4本場に供託1本。10000点を上乗せすると、しっかりと点箱に終い込んで、閉じた。

そしてこのまま大きな動きもなく、4日目は急スピードでオーラスを迎える。

【南4局・ドラ

親   尾崎 46900
南家 石橋 26700
西家 金子 18000
北家 飯田 28400

石橋、飯田から5200直撃、満貫出アガリなら3着、跳ツモなら2着の金子が、2巡目にオタ風のをポン。

《金子》

 ポン

ポイントリーダーは飯田に捲られそうだが、この半荘のトップが尾崎なら、少しでも素点で凌ぎたい金子。積極的に仕掛けていく。この次巡にを重ねて高打点が見えた金子。

しかしこの鳴きで好ツモが続いたのは飯田。6巡目に一向聴。

《飯田・6巡目》

尾崎から満貫直撃、跳ツモで変わるが、石橋との点差は僅か1700点。仕掛けている上家の金子の打ですかさずチーテンを入れた。

《飯田》

金子がソーズ一色とあれば、勝算は高そうである。この2軒の仕掛けの中、聴牌を入れた親・尾崎。飯田の仕掛けの値踏みをすると、これでツモアガれるなら本望だとリーチに出る。

《尾崎・9巡目リーチ》

リーチ棒を出すと、飯田の満ツモで捲られてしまうことも踏まえれば、飯田の打点読みが大事になってくる。ドラは河にない。しかし金子の仕掛けはソーズ。ド ラ1枚以上は濃厚で、飯田は混一には見えずらい。となると三色か一通かチャンタ。純チャン三色ドラ1なら仕掛けても満貫はあるのだが。

結局飯田が一牌の危険牌を押すことなく、をあっさりと寄せて300・500。無事に2着で締めくくった。

【16回戦終了】

尾崎 45400 +45.4
飯田 30500 +10.5
石橋 26400 △13.6
金子 17700 △42.3

【16回戦終了時合計】

飯田 +  78.8
金子 +  41.3
尾崎 △    4.4
石橋 △116.7

―ついに先導を握った大魔神。結果120ポイントのプラスを得たのだが、終局して一言、『内容は50点だな』と自分への評価を話していた。

確かに飯田にしてはかなり放銃が目立っていたが、押すからには打点も形も悪くない、リーチ負けの場面もあった。攻撃のバランスが悪いとは言い切れないし、仕方ないと言った表現の打ち手もかなりいるだろう。

しかし飯田の自己評価がここまで低いとあれば、飯田による他家の和了、これは飯田にとってあってはならないマイナスなのだということか。とすれば、大魔神が求める強さは、想定しがたい、きっと遥かに美しく完璧なものであるに違いない。

前節で得た大きなプラスを少し減らした金子は、あまり目立たずに4日目を終えた。2日目の最終半荘に締め直したネクタイを触りながら、また穏やかな空気を纏い席を立った。飯田には捲られたものの、昨年に引き続き今年も、頂が見える位置で最終日を迎える。

前半戦で蓄えた貯金を全て費やし、ゼロから立て直しを図った若き王者は、苦しみながらも最後に帳尻を合わせて望みを繋いだ。まだ終わらせない。尾崎の強い気持ちが、飯田、金子を追い詰めて行く。

今日で何とか最終日に繋ぐ目処を立てたかった石橋は、1人厳しい位置に取り残された。逃した和了を悔やんでも戻ってこない。次節の前半戦に、決定戦への想いを全て注ぎ込む。

時間が過ぎて行くにつれて、段々と募ってゆく逸る想い。観衆ですら気持ちが揺れるのだから、卓に就く4名の心は、今後はもっと計り知れない何かに覆い尽くされていくのだろう。

残りは1節。4半荘を残すのみ。

第34期最高位決定戦。ドラマは筆舌し難い、壮絶な終焉に向かう。

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