コラム・観戦記

最高位戦Classicプロアマリーグ2019決勝観戦記 谷崎舞華

Classicプロアマ2019 観戦記

麻雀のルールは多岐にわたる。それが面白いところでもあり、また難しいところでもある。現在広く採用されているルールは色々な人の手により様々な形で少しずつ変化してきたものだ。

最高位戦のリーグ戦で採用されている所謂最高位戦ルールも今と昔では違う。現在はテンパイ連荘、一発あり、裏ドラカンドラあり、切り上げ満貫あり、など。しかし最高位戦設立当初はアガリ連荘、一発なし、裏ドラカンドラなし、切り上げ満貫なしだった。

そして今回行われたClassicプロアマはこの旧最高位戦ルールで行うプロとアマチュアの混合のリーグ戦であり、普段打つことの少ない旧最高位戦ルールで真剣勝負ができる貴重な場となっている。

今回の決勝には一般の方が三名進出された。プロもたくさん参加するリーグ戦、かつ普段打たないルールで決勝まで残るのは難しい。私はこの三名の打つ麻雀を見るのがとても楽しみだった。

一回戦の並びは起家から奥山(一般)-樫村(一般)-大森(最高位戦)-村上(一般)

東一局0本場 ドラ

プロであっても対局は緊張する。まして後ろに観戦者がいてはなおさらだ。しかし樫村には緊張している様子は見られなかった。

4巡目に以下の形でテンパイ。

役なしだがリャンメンのテンパイ、高めがドラ。この形のままリーチに踏み切る人も多いのではないだろうか。しかし樫村はダマに構える。Classicはテンパイ料が発生しない。リーチが空振りに終われば単純に1000点減るだけで加点されない。この手をリーチしてでアガっても1300点にしかならない。さらにこの時大森がをポンしてソウズのホンイツ気配。リスクにリターンが見合わないとの判断だろう。

その後のとのシャンポンに受け変え、ホンイツに向かっていた大森から余ったを打ち取る。冷静な判断が功を奏した。

東二局0本場 ドラ

樫村と対照的にとても緊張している様子だったのが村上だ。開始からずっと手が震えている。

1牌1牌慎重に摸打する村上から5巡目にリーチが入る。

早くてヒントの少ないリーチ。対応が難しい。切り番を迎えて少考したのは大森。

覚悟を決めた表情で切り出されたのは。萬子が一枚も切られていない河。この時大森の手牌は以下。

ドラが対子でリャンメンが多い。そして安全牌もない。Classicは一発や裏ドラなどで打点が高くなることがないためドラの価値が高い。ここは勝負。大森はこのまま真っ直ぐに手を進めて村上に追いつく。最終形はこうなった。

待ちのピン、ピンが村上の現物になっているがすでに三枚切れ。しかし四枚目のを樫村が掴んでしまい大森への放銃となった。

東四局0本場 ドラ

ここまで手が入らず我慢の時間が続く奥山だが、特に焦っている様子はない。早い仕掛けやリーチに対応し、ここまで放銃もせず原点を守っている。

そんな奥山が7巡目に少考。

ピンズを下に伸ばして123の三色、もしくはで役をつけるイメージだったのだろう。そのままのイメージで進めるのであれば切りになりそうだ。しかし奥山が切ったのは。場をよく見るとソウズの上が場に安い。自分の目からが2枚、が2枚見えていて、が3枚切られている。Classicでは手役が重要ではあるが、あがれないと加点出来ない。結果この判断が正解しを持ってきてテンパイした奥山。のポンやが暗刻になることを考慮してダマを選択。そのままをツモり初アガリとなった。

南二局0本場 ドラ

基本的にClassicではカンはした方が得だと私は思う。カンドラが増えないので他家の打点アップに繋がらないし、自分のツモは一回増えるし、自分の打点はアップすることが多い。

テンパイ後に樫村から切られたをカン。このカン、Classicルールに慣れていないと声が出ない人もいるのではないだろうか。をカンすることにより嶺上牌の抽選が受けられる。そこにアガリ牌がいたら大きい。また、自身でツモった時に40符から50符になる。このカンがすんなりできる大森は流石に打ち慣れているなと感じた。結果は親の樫村からのアガリ。トップ目の村上にあと700点まで迫る大きなアガリとなった。

南三局、親を迎えた大森がアガリを重ねる。1500、5800は6100と順調に点数を増やす大森にさらに大物手が入る。

南三局2本場 ドラ

四暗刻のテンパイ。Classicルールはウマが小さいためトータルのポイントは素点が占める割合が高い。親で役満ともなれば相当優勝に近付く。しかし大森のテンパイと同巡、奥山からリーチが入る。

ドラ単騎でのリーチ。Classicではテンパイ料が発生しないためアガリにならないと点数が増えない。しかしこの手の場合、他家から出てくるとは思えないドラ待ち。かつリーチすればツモった時に跳満になる。1000点を失うかもしれないリスクに十分に見合う。親が四暗刻テンパイだって知っていたらリーチしないかもしれないけど。

親の大森に押されてちょっと嫌だなと思ったものの二巡後にツモアガリ。この跳満がこの半荘の決め手となり、奥山がトップ。

一回戦結果

奥山 +26.6
大森 +10.1
村上 △2.8
樫村 △33.9

二回戦の並びは樫村-大森-村上-奥山

一回戦目ラスだった樫村だが手が入っていたために攻めた結果の放銃が多い印象だった。三人の中で一番攻撃的だなという印象。東二局のこのリーチもしない人の方が多いイメージ。


単騎でのリーチ。この時奥山が明らかなホンイツ模様ではション牌。を持ってくるまでダマにしていた樫村だったが、このは切れない。切らないならいっそということだろう。奥山から余るかもしれない。降りてくれるかもしれない。そして山に残るを引きあてた樫村。満貫のツモアガリとなった。

この後静かに局が進行。しかし南二局に変化が起きる。この局も流局になるかと思いかけた終盤にロンの声。ホンイツチートイをテンパイしていた村上だ。放銃したのは奥山。暗刻になった中を切ってしまい8000点の放銃。単騎にしか当たらないが村上がホンイツの可能性は考えていたはずだ。これが手痛いミスとなり一回戦目トップだった奥山がラスになる。

二回戦目結果

樫村 +20.4
村上 +11.7
大森 △7.9
奥山 △24.2

三回戦目の並びは村上-奥山-大森-樫村

東二局二本場 ドラ

最初にテンパイを入れたのは奥山。

高目なら三色の平和テンパイ。しかしリーチ宣言で切り出されたのはドラの。これを大森がポン。

奥山のピンか大森のソウか。結果奥山がを掴んで放銃。奥山は二半荘目以降噛み合わない。

そしてこの半荘を決定付けたのは南三局。


親の仕掛けに誰も戦えず大森がでツモ。4000オールは非常に大きい。

南四局二本場供託1 ドラ

Classicルールはウマが+12、+4、△4、△12だ。着順間の差が8P。つまり8000点。素点で8000点増えれば着順アップと同等の加点となる。

大森 46900点
村上 32900点(14000点)
樫村 25400点(7500点)
奥山 13600点(11800点)

カッコの数字は一つ上の着順までの差だ。親の樫村はアガリ連荘を目指すとして、村上・奥山の二人は着順アップが厳しい点差と言える。配牌によっては着順アップよりも純粋な加点を目指す方がトータルで得になることも多いだろう。

そんな状況で奥山が9巡目に二枚目のをポンしてこの形。

現状では3900点しかない。が重なるか一気通貫になれば満貫まで見えるがはすでに一枚切れている。奥山がホンイツなのは全員の目に明らかだ。そんな中親の樫村から13巡目にピンが放たれた。着順アップ対象の樫村からの出アガリだが着順アップにはならない。それでもアガる方が得と判断した奥山からロンの声。満貫への変化を期待するには巡目が遅過ぎた。

三回戦目結果

大森 +28.9
村上 +6.9
樫村 △12.9
奥山 △22.9

最終戦開始前のトータルスコア

大森 +31.1
村上 +15.8(15.3)
奥山 △20.5(51.6)
樫村 △26.4(57.5)

大まかな条件は、村上は大森と二着順つければ優勝。奥山・樫村は自分がトップで大森ラス、村上三着の並びをつける必要がある。

東一局、東二局と流局し、局面が動いたのは東三局。この局が優勝を決めた、と言ってもいいのではないだろうか。

東三局二本場 ドラ

親の大森の配牌にが対子。これをポンしてトイトイへ向かう。すんなりとテンパイしたが、打ち出す牌がドラの。とはいえ親の満貫テンパイ。切らない理由がない。しかしこのを村上がポン。


村上はここからタンヤオへ向かう。事件が起きたのはこの後。トイトイでテンパイしていた大森がを持ってきてリャンメンに待ち替え。しかし大森はを切っているためフリテンになってしまう。

この後村上が待ちのテンパイ。そしてなんと大森がフリテンを解消するを持ってきてしまい、打ち出される

大森から村上へ7700は8300の放銃。大きな大きなアガリとなった。

この後大きな点数移動もなくオーラスに。

親の樫村は連荘、奥山はほぼ役満条件、大森は7700を村上からアガるか2000-3900をツモアガるか。しかしそう簡単に条件を満たす手は入らない。そしてアガリ連荘のClassicルールではアガリ続けるのは難しい。

この対局は流局で終わった。全員の手が伏せられて終了。なんともClassicルールらしい終わり方となった。

優勝は村上義幸さん。

2月15日に行われるグランドチャンピオン大会の関東本部代表となった村上さん。グランドチャンピオン大会は配信される。配信はさらに緊張感が高まるが、この日同様、落ち着いて楽しんで対局に臨んでほしい。私も今から配信が楽しみだ。この観戦記を読んでくださったみなさまにもぜひ配信をご覧いただきたい。配信ページはこちら

 

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