全5日間20回戦

第1日(坂本大志)

第2日(平賀聡彦)

第3日(風祭学)

第4日(須山いづみ)

最終日(佐藤崇)


〜最終日〜(佐藤崇)


11月15日、長く険しい戦いもこの日で最後。
第31期最高位が決定する。
4日目を終えた時点でのトータルポイントは以下の通り。

4日目(16回戦)終了時スコア
張   +14.4
古久根 +12.8
村上  +8.6
尾崎 △39.8

各選手の紹介は2日目の観戦記等でされているので、そちらをご覧頂きたい。
古久根2度目の連覇なるか。村上、張が悲願の初タイトルとなるか。
一方、一人でマイナスを背負う形となってしまった尾崎だが差はわずか。
4日目までの劣勢を跳ね返し、逆転で2度目の最高位獲得となるか。

いずれにしても、この4名なら、間違いなく歴史と記憶に残るような名勝負をしてくれるはず。
それだけは確信を持って言える。
開始の正午前にはすでに数十人のギャラリーが観戦に訪れていた。
多くの人々の目が見守る中、戦いの火蓋は切って落とされた・・・・!!



〜17回戦〜


起家から古久根、尾崎、張、村上の順でスタート。
私は古久根、村上の間の位置に陣取っての観戦となった。

東1局 ドラ
東家 古久根 6巡目


首尾よくまとまり、ここで分岐点。
ドラはないが、親だけに最短で先手を取りたい所。
「序盤戦は特に、手役はあまり考えず、場況に合わせた形と待ちに焦点を合わせる。それとメンゼンで打つことに比重を置く。」
とかねてから言うように、古久根の選択は打
としておけばタンヤオになるパターンが増やせるので、一般的にはそう打つ方が自然かも知れないが。

同巡、村上が先制リーチ。


初巡に早くも1シャンテンとなっていた。

古久根、狙い通りのを引き入れて追っかけリーチ。



東1局からリーチ合戦となるが、ここは村上の勝ち。

古久根→村上 2000(+1000)

だがこれは、これから始まる壮絶な打撃戦の序章に過ぎなかった。


東2局 ドラ

東家・尾崎が7巡目に先制リーチ。


これを受けて古久根の11巡目
 ツモ

のみが現物。
無難に行けばだが打としてチンイツに向かう。次巡、ツモでメンチン聴牌。更に次巡ツモ



の選択。もあるが(待ち)かなり危険。
ピンズ、ソウズ共、ほとんどの筋が通り、尾崎のリーチはマンズ濃厚。
少考の後、打。待ちは変わらず
更に次巡、ツモと来て、これでどうだと言わんばかりにを切って追っかけリーチ!!


からまでの7面待ち。14巡目とかなり深いが高めで3倍満。

しかし勝ったのは尾崎。を手元に引き寄せる。
古久根のワンズのメンチンを悟っていたはずで、その手はわずかに震えていた。

 ツモ ドラ ウラ


東2局1本場 ドラ

西家・村上10巡目にリーチ。


高目一通の勝負手。

ここに三度、古久根が追いつき、追っかけリーチ。


2軒リーチに挟まれ、安牌に窮した張。
自身もテンパイではあったが、出て行くドラのはさすがに切りきれず、唯一中筋になったを中抜き。
古久根に5200の放銃となってしまう。

古久根
 ロン(一発) ドラ ウラ


東3局 ドラ

村上が会心のチートイツを引き和了る。

 ツモ ドラ ウラ

捨て牌はいかにもチートイツ。

          (↓) (↓)

(↓)
  * (↓)はツモ切り。

自らの捨て牌に躊躇うのが普通だろうが臆する事無くノータイムでリーチ宣言。
実に村上らしい力技で3000・6000トップ目に立つ。

東4局 ドラ

見事なチートイツをツモアガり、迎えた村上の親番。
10巡目に先制リーチ。
同巡、尾崎が追っかけリーチも6巡目にピンフテンパイを入れていた古久根が尾崎から出和了り。

 ロン



南1局 ドラ

初めての流局となったが、この局も張、古久根の2軒リーチに、村上もチーテンと激しいものだった。
平日の昼下がりであるにも関わらず、この熱戦に吸い寄せられるように集まったギャラリーの数も40人は超している。
会場の室温が少し上昇したような気がした。


南1局1本場 ドラ

ここまでの点棒状況は

北家・村上 41200
東家・古久根 31700
南家・尾崎 28400
北家・張 16700

張はいまだノーホーラ。手になっていないわけではないが苦しい戦いを強いられている。

最初のテンパイは親の古久根。 16巡目とかなり深かったがここにドンピシャで尾崎が飛び込んでしまう。

 ロン

自らが直前に通している牌とは言え、放銃した尾崎の手牌は1シャンテン。
16巡目の古久根の手出しは
下家の尾崎にはが裏筋になっていて、場には5枚目。ドラは場に1枚も見えていない。
古久根ほどの打ち手が、この巡目に非テンパイから、そんな牌を下ろすとは考えにくく、やはりテンパイと見るべきではないか。
手変わりを見落としたのかもしれないが・・・。
いずれにしても尾崎にしては珍しい放銃である。
一方、古久根は望外の和了で6100点に供託のリーチ棒2000点も加点。
トップ目の村上に肉薄する。


南1局 2本場 ドラ

一気に攻め立てたい古久根、この局もツモが噛み合い、5巡目で早くもテンパイ。



が、ここはテンパイ取らずの打
一通をにらみつつ別のところで好形を求める一打だが、ポイントは打ではなく打である点。
正直やや違和感がないだろうか。

      (↓)
尾崎
          (↓)
張 
            (↓)  
村上


は表示牌も含めて3枚見え。
普通の感覚なら筋牌のは早めに処理したいところだ。
ポイントになるのは張の打か。

「張がを持っている可能性は極めて低く、尚且つドラがである事からも
待ちより待ちが優位と考えていたからから切った。」

後でこの局のことをきいてみたところ、この様な答えが返ってきた。

この巡目では守備を考えるより和了やすさに比重を置いたほうが良く、また、カンとカンも大差なのだ。
ドラがなのと、張のを考えれば差は既にある。
これは想像だが、打とした後の次巡、ならカンで即リーチを打っていたのではないだろうか。
しかし打とした後のツモのカンでは、おそらくリーチには行かないだろう。
非常に細かなところではあるが、こういうところも、やはり見て欲しい。
古久根の地力を感じる一局だと私は思う。


実際は、次巡ツモ、打、ツモ、打でリーチ。
15巡目にをツモって1300オール。

 ツモ ドラ ウラ

村上をまくってトップ目に立つ。


南1局3本場

ここも3軒リーチで激しくぶつかるが、この局は流局。次局も尾崎が先制リーチするも全員にきっちり抑えきられて流局。


南2局5本場 供託4000点 ドラ

供託と積み棒が膨らみ、四者とも、何が何でもアガりたいところだが、決着はあっけなくついた。

親の尾崎が5巡目にリーチ。 を一発でツモ。

 一発ツモ ドラ ウラ

手牌を倒す尾崎の手が小刻みに震えていた。そのくらい大きなアガリとなった。
この4000オールで村上をまくり、トップ目古久根にも肉薄する。


南2局6本場 ドラ

4巡目、古久根がをポン。打で1シャンテンとせずに打でホンイツへ。

 ポン

微差ながらトップ目、6本場とあれば、ここはひとまず打としておいたほうが良いのでは?と感じたが
この手を決め手にしたかったのかもしれない。

ここに村上が追いついてリーチ。



同巡、古久根もを引いてこのテンパイ。

 ポン

次巡、を引く。
村上のリーチには宣言牌ののみ。
は3枚切れ。ツモればハネ満なので、このままツモ切るか、を勝負しての6400にするか。
を切る手もある。これなら安全だがアガリには遠くなる。
が、トップ目であるのも考えれば、この選択が無難にも思えてくる。
極めて難しい選択だが、古久根はほとんど間をとらずにをツモ切った。

 ロン ドラ ウラ

南3局 ドラ

尚も攻めの姿勢を崩さない村上、15巡目にこの手をリーチ。



後がなくなった親の張から一発でを討ち取り8000。決定打か。


南4局 ドラ カンドラ

オーラスも、この半荘を象徴するかのような3軒リーチでぶつかり合う。

村上 
尾崎 
張    


最後まで攻撃の手を緩めずにトップ目ながら先制リーチを打つ村上。
少しでも失点を挽回しておきたい張も充分な形で追いかける、
2人のリーチ棒で満貫出アガリでトップになる尾崎も逆転のテンパイが入り追っかけリーチ。

村上がをつかんで、張に1600の放銃となり、トップのまま終了となった。
この半荘、出されたリーチ棒は実に23本!!
正に至高の殴り合い。
四者とも、行き着くプロセスが素晴らしく、毎局のように手がぶつかる。
”勝ちたい” ”勝つんだ” という執念がぶつかり合った凄まじい半荘であった。

17回戦終了時スコア
村上  +52.6
古久根 +7.2
尾崎   +23.5
張   △40.3



〜18回戦〜

起親から村上、張、尾崎、古久根の順でスタート。
初っ端から物凄い半荘を見せられ、私もこんな相手とリーグ戦を戦わなければならないかと思うと
うれしくなる反面、正直気が滅入る。そんな複雑な心境でこの戦いを眺めていた。

東1局 ドラ

いきなり尾崎が、さすがと言えるアガリを見せつける。
この局、先制リーチは起親の村上。



11巡目、 は4枚見えと苦しいが、親権維持も含めてリーチと出た。
一方9巡目にドラのを打ち出し、受け入れ万全の1シャンテンに構えた尾崎、村上のリーチと同巡にテンパイが入る。

 ツモ

相手3人の捨て牌はこうなっている。

東家 村上      (↓)

(↓)   (↓)(↓)  

南家 張

  (↓)(↓)(↓)



北家 古久根

        (↓)


それぞれ意見がありそう。
親リーチが相手だけにとりあえず現物のか、テンパイ取りなら打だが・・・。
長考の後、尾崎が選んだのはテンパイ取らずの打
あくまで、最終形で勝負になりそうなのはが残ったときだけと判断しての1シャンテン戻しだろう。
この選択が見事にはまる。

次巡を引いて打の追っかけリーチ!



一発でを引きあがり2000・4000。会心のアガリを物にする。


続く東2局も先制のフリテンリーチを引きあがり、1000・2000。
リーチ棒も含めて45000点にリードを広げた尾崎だが、ここから3人の逆襲が始まった。


東3局 ドラ

まずは北家、張が先制リーチ。



これに尾崎が追っかけリーチと行くが宣言牌が。3200のアガり。



南1局 ドラ

古久根が12巡目にこのテンパイ。



直前にドラのを引き入れ、ヤミテン。
ここに待った無しの手牌になっていた親の村上からがこぼれて5200。


南2局1本場 ドラ

村上→張に2900(+1000)移動となり、迎えたこの局、点棒状況はこうなっている。

南家 尾崎   41500
東家 張    31800
西家 古久根 31700
北家 村上   15000

この局、先制リーチはトップ目の尾崎から。



6巡目、が役無しとあれば、これは必然のリーチ。
捨て牌は9巡目までで以下の通り。




これに対し、村上が9巡目。



ここでソウズを払わずに、無筋の打
ラス目だからと、打としていれば、ここで尾崎に次巡、ツモで打。5200放銃となっていた。
が現物になるが、押してきている親の張の現物であるを残しから切る。
ここでもう一度を切る手もありそうだが、いずれドラを含めたワンズの2筋を勝負しなければならず、やや無理に映る。
さらに次巡、を引いて打



1巡ツモ切りの後、尾崎のロン牌であるを引き入れカンの追っかけリーチ。
絶妙のバランスで手牌を追いつかせる。

流局かと思われたが、尾崎の放った河底牌は、無情にも
村上、願ってもないマンガン直撃。
これで勝負の行方は全くわからなくなった。

 ロン  ドラ ウラ


南3局 ドラ

この局、まず先制したのは南家・古久根。



6巡目と早く、捨て牌はこうなっている。



これに対し、北家・張の9巡目、を引いて



ここからアンコのを勝負。
古久根はリーチ後とツモ切り。
、打もしくは現物の打としてもおかしくはない所だが、ここが勝負所と考えたか。
次巡、古久根のロン牌である中を重ねて、更に無筋の打単騎テンパイ。
さらに次巡、ツモと引いたところで、意を決したようにツモ切りで追っかけリーチ。
リーチ後、ひたすらワンズだけを引き続けていた古久根。
張のリーチに一発でつかんだ牌は


 ロン(一発) ドラ ウラ

張の絶好の勝負勘と、いい意味での開き直りが、値千金のハネマンを生み出した。
いかにこの局が重要であるとは言え、なかなかこの様に打てるものではないだろう。

強いてあげるならこの局、古久根の4巡目。



ここから上家の尾崎が直前にを切っているのだが、三暗刻含みの打とした。
最終形はを引くので変わらないが、捨て牌相が変わってくる。

(A)   実戦譜
(B) 

こうなると、東家・尾崎の選択が微妙。



実戦では上の手牌から(A)の捨て牌を受けて打と2シャンテン戻しにするが、
これが仮に(B)の捨て牌を受けていたとすると、どう選択していただろうか?

(A)に比べるとのトイツに手をかけにくくなり、ならばとをツモ切ったかもしれない。
次巡、ツモと来るが、この時点では4枚切れる。
ここで打にせよ、ストレートで打にせよ、次に引くのはテンパイとなる。

尾崎のフォームから考えても、ここは追っかけリーチとなりそうである。
そうなると、 を一発でつかんでしまう張のアガリはほぼ無い。
全ては推測の域を出ないのだが・・・。
さして高打点を必要とする局面ではなさそうなので、やはり、古久根の4巡目は、打が正着ではなかっただろうか・・・。
興味のある方は、ぜひ牌譜を取り寄せて検討してみていただきたい。

オーラスは張が300・500を引きあがり18回戦が終了した。


18回戦終了時スコア
村上  +36.6
張    +6.6
尾崎   △11.6
古久根 △35.6





〜19回戦〜


起親から古久根、尾崎、張、村上の順でスタート。

この半荘、村上が2着以上なら、かなり有利。
張と尾崎はなんとか村上にラスを押し付けてトップを取りたいところだろう。
一方、古久根は、この19回戦でトップがとれなければかなり厳しく、3着以下なら絶望的な位置となる。


東2局 ドラ

古久根→村上1300で迎えた東2局。北家・古久根。



こんな苦しい配牌から一部の隙も無く三色をアガリきる。

 ロン

放銃したのは張。先制リーチの村上の現物だが、直前の古久根の濃い切り出しも頭に入っていただろうが、
切り順から見ても、(と手出し)自身がチートイツの1シャンテンであるところからも止めるのは難しいだろう。


東4局 ドラ

前局1300・2600でトップ目に立った尾崎だが、ここで東家・村上に痛恨の親満放銃。

 ロン ドラ ウラ

西家・尾崎の手牌。

 ポン

手牌全てが無筋で万事休す。どう打つかが難しいががワンチャンス。
ならば打とすべきではなかったか。
これならもう1巡凌げる。
ところがを切ってしまいたくなる理由が村上の捨て牌にある。




をツモ切った時点では場に2枚切れ。
が放銃になる形はほぼに限定される上にをなぜ引っ張らないのか?
というのを考えると、との比較とシャンテン数から見てもどちらが正着なのかは難しく、判断が分かれるところだろう。
このアガリで村上が頭一つ抜け出した。


東4局1本場 ドラ

前局親満をアガった村上が凄い配牌をもらう。



次巡にはを引き、早くも高目三色と一通もある1シャンテン。
が、8巡目に引いたで長考。

 ツモ

一通か高目三色かの分岐点。
3者の捨て牌を穴が開くほど見つめて村上が選んだのは打
場況を見ても非常に微妙。ならば1牌で満貫リーチを打てるほうを選択したのだろう。

11巡目、西家・尾崎からリーチがかかるが、14巡目、待望のを引き入れる。
直前に尾崎がをツモ切るがテンパイ打牌であるは尾崎に無筋。
ヤミテンにしても古久根、張が簡単に切るはずも無くノータイムで追っかけリーチ。

この宣言牌のを南家・古久根が「ポン」。
おそらくこれは、一発消しではなく喰いずらしだろう。
「村上に引かれる」と感じたか。

だが、この鳴きで尾崎が咆哮を上げる。

 ツモ ドラ ウラ

尾崎のリーチ宣言牌は、場にはとも1枚ずつ切れていたにも関わらず、ツモり三暗刻の形に受けた。
この半荘、村上にトップを取られるようだと、かなり厳しい。トータルポイントを見据えた上で、この形に賭けたのだ。
尾崎の大胆且つ冷静な判断力が最高の結果をもたらした。

この後も尾崎は古久根から満貫、張から5800とたて続けにアガリを重ね、47300持ちのトップ目にたつ。


南2局1本場 ドラ

ここまでなりを潜めていた張が反撃に転じる。
2巡目のを叩き、早々に1シャンテンにこぎつけていた尾崎からをチー、もチーして、このテンパイ。

 チー チー  ポン

すぐに尾崎からが出て3900。
いかにトップ目とは言えソーズ2フーロの手出し牌がでは、
この受けを想像するのは難しく尾崎にしてみれば仕方の無いところだろう。

迎えた南3局の張の親番でも1500をアガり、1本場では2着目の村上の先制のリーチを掻い潜り、親満を直撃。
トータルトップ目の村上を僅かながらラス目に叩き落す会心のアガりとなる。

 ポン ロン

南3局2本場 ドラ

ここまでの点数状況を見てみよう。

東家 張    33300
南家 村上   21600
西家 古久根 22000
北家 尾崎   43100

仮にこのまま終わったとすると最終戦を残してトータルポイントは以下の通り。

尾崎 +31.5
張 +19.9
村上 △1.8
古久根 △53.6

最高位戦ルールでは、1着順につき20ポイントの差が均等につくので、尾崎、張は着順勝負。
一方村上も古久根にラスを押し付けることさえ出来ればそれに加わることが出来る。その差わずかに400点。

古久根に至ってはこのまま終わってしまうと最終戦は並びを作った上に、大トップが必要となってしまい、かなり厳しい。
二転三転する勝負の行方にプレイヤーもギャラリーも、ポイントが書かれたボードに必死に目をやる。
このとき、ギャラリーの数は有に100人を超えていた。
そんな中、苦境に立たされていた古久根が奇跡的なアガりを物にする!!

 チー ポン ロン ドラ

アガったのはツモ番の残されていない18巡目。そして放銃したのは何と尾崎!!
本来なら事細かにこの局の経緯を記すべきなのかもしれないが、あまりに長くなりそうなので多少省かせて頂く。
ぜひ全体牌譜をとりよせて見ていただきたい。

この局、東家の張は、古久根のドラポンに対応しておりノーテン濃厚。次局がオーラスになる可能性が殆ど。
尾崎も役ありテンパイから役無しテンパイ。
17巡目に古久根に無筋のを引かされ下の形。



しかし、この手牌、全てが古久根に通っておらず、苦肉の策で打
古久根が最終ツモでをツモ切るのだが、尾崎は直前にを通しており、
このを鳴いて中筋の打とすれば、三度テンパイ復活となる。
そうするとノーテン罰符を得てオーラスを迎えることができ、張はオーラス満貫ツモでも尾崎に届かない。
古久根に打つのはもちろん痛いのだが仮に打ったとしても、微差ながらトップ目でオーラス。
そんな複雑な状況が交錯した中で起きたアガリなのだが、これで息を吹き返したかのようにオーラスは古久根が張から満貫をあがる。

 ロン ドラ ウラ

ウラが乗らなければ尾崎と同点トップ(順位点を+20ずつ分ける)だが、乗れば古久根の単独トップ。
この日の麻雀の神様は、古久根にウラドラを与えた。
いや、「流れ」が与えたのか。
古久根、奇跡の逆転トップ!!

たった2局で地獄の淵から不死鳥の如く甦った。

この結果、第31期最高位決定戦は最終20回戦の着順が、そのまま最終順位になるという
空前絶後の大混戦となったのだった。

19回戦終了時スコア
古久根  +3.0
尾崎   +2.9
村上   △1.8
張    △8.1




〜20回戦〜


起親から尾崎、古久根、張、村上の順でスタート。


東1局 ドラ

局面が動いたのは8巡目。村上の切ったドラを古久根がポン。
両面2つの1シャンテンとなるが村上がすぐに手を開ける。

 ツモ ドラ

まずは400・700で先制。
が既に4枚、が1枚見えと、絶好のカンだが、宣言牌がでは心許なかったか。
三暗刻の変化も少しあるが村上にはあまり見られない応手でもある。


東2局 ドラ

東家・古久根、6巡目で手が止まる。


捨て牌

南家 張


西家 村上  (↓)


北家 尾崎     (↓)


、辺りが候補になりそうだが789の三色目を見て捻れば打
又、が3枚見えなので、スピードを最優先してドラを打つ打ち手がいてもおかしくはないだろう。
いずれにしても難しいところだ。古久根はここから打
と引いて11巡目に打でリーチ。




が3枚、が2枚飛んでおり、微妙なところだが、ドラを打たないカンの方を選択した。
これに追いついたのが西家・村上。14巡目ながら、ドラを暗刻にしての追いリーチ。



2人のそれぞれのアガリ牌は全て張と尾崎の手牌に収まり流局。
しかし、古久根の最終打牌は。これに双方アガりを逃したことになってしまう。

村上の9巡目。



ここから2枚切れのを残してドラ固定の打とする。
が2枚飛びでは無理も無く、適度なバランスだと思われるが、
と切ってしまっているだけに目一杯打としておけば、古久根のリーチの後、
ソウズのを拾えない(ターツ選択ができない)ので、必然が残り古久根から満貫の出アガリとなっていた。
この日の村上、決め手になる手牌を何度も作り上げぶつけたが、あと一牌が遠い。
そんな印象が強く残った。



南2局 ドラ


この後、大きなアガリもなく、一進一退の攻防が続いたが、張が700・1300、500・1000とアガりを重ねて迎えた南2局。
5巡目、尾崎のに、張から「ロン」の声。

 ロン

大きな5200.親番の無い尾崎。ここで力尽きた感。
一方の張、点棒を4万点に乗せて大きく最高位に近づく。

南3局 ドラ

東家 張    41200
南家 村上  27000
西家 尾崎  20800
北家 古久根 31000

ここで、トップ目の張が5巡目にリーチ。
この手で決めてやるといった気迫が伝わってきた。
張がリーチした時点で、わずか3トイツしか無かった尾崎。
ここから執念の七対子ドラ単騎で追いつくが、宣言牌のに張が手牌を倒す。

 ロン ドラ ウラ

これが決定打となった。



南4局 ドラ

親番が残っている村上が1000・2000をアガって迎えたオーラス。
最後まで攻めきる姿勢を崩さずに張が七対子をアガりきる。

 ロン

第31期最高位は張敏賢。
決定戦初出場にして初タイトル。
この3人を相手にしても全く臆する事無く、実に堂々とした戦いぶりだった。
私と期を同じくして入会したが同期として誇りに思える、素晴らしい戦いを見せてくれたと思う。

私も今期、ようやく挑戦できる立場となれたが、
これからは最高位戦の若手を代表する新たな一人として益々活躍してもらいたいと思う。


張君、本当におめでとう!!



文責・佐藤崇(Aリーグ所属・第31期新人王)